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にゃんじろうの一日




とある日。


千尋はにゃんじろうと共に居た。


「にゃんじろう、最近みさととはどうなの?」


「にゃあのぉ!」


「そう、もう少しで恋人になれるかもしれないんだね。うふふ、楽しみだねにゃんじろう」


「にゃあのぉ!」


「にゃんじろう、にゃんじろうはみさとのどこに惚れたの?」


「にゃあのぉ、にゃあのぉ!」


「え、手の動きと声? 手の動きは私の手に入ってた時の事だよね? 声っていうのは、にゃんじろうは手に憑依した時以外にみさとと会ってたって事?」


「にゃあのぉ! にゃあのぉ」


「みさとは覚えてなかったけど一度食堂で会ってるって? そうなんだー。それにしても声か、確かにみさとは可愛い声してるよね。私より高い声だし。やっぱり可愛い人は動作も何もかもが可愛いんだなぁ、うふふ、誘い受け……うふふ」


「にゃあのぉ?」


「あ、なんでもないよにゃんじろう。気にしないで」


「にゃあのぉ。にゃあのぉ」


「そう、信治の処に行く時間か。いってらっしゃいにゃんじろう、頑張ってね」


「にゃあのぉ」


そうしてにゃんじろうは信治の元へ瞬間移動するのであった。



「にゃあ──」


信治の元へと着いたにゃんじろうは瞬時に人体化し、信治の上に乗っていた人物へと蹴りを繰り出す。


シュッドゴッ


「ぐふぅ!」


蹴られた人物は信治の上から数メートル吹っ飛び壁へと激突する。


「はぁ……またか? 信治」


「あ、ああ藤次郎……。ありがとう、助かったよ。うん、またなんだ。もういい加減にして欲しいよ」


「ああ、そうだな。まぁ信治は俺から見ても美形だからな、襲われるのも仕方ないかもしれねぇが……毎回男ってのもなぁ」


「そうなんだよね……。俺、そんなに男の人にモテるのかな」


「まぁ毎回襲ってくる男は受けっぽい奴らばかりだからな、信治に優しく手ほどきしてもらいてぇんじゃねぇの?」


「て、手ほどきが何の手ほどきかは聞かないけど……。日本の最高神じゃなくなったら少しは減るかな」


「さぁなぁ。信治は優しいからな、無闇に愛想を振りまかない事だな」


「気をつけるよ……。じゃあ藤次郎、これから雅泉(かせん)様の処に行くから、着いてきてくれる?」


「ああ、良いぞ。それじゃ行くか」


「うん」


そうして二人は雅泉──信治の師匠の所へと瞬間移動した。

余談であるが、藤次郎は千尋に造って貰った人体化した時に瞬時に着れるように固定保存した着物を身につけている為、裸では無い。



ピンポーン


「はーい……。やぁ、信治君。それに……君はにゃんじろう君かな? ようこそ、我が屋敷へ」


「雅泉様、こちらはにゃんじろう……人体化した時は藤次郎。今日は宜しくお願いします」


「宜しく」


「ああ、良いよ。藤次郎殿、私は雅泉。さぁさ、入っておくれ。美味しいお菓子を用意したんだ。お茶も点てるからね、ゆっくりして行くと良い」


「ありがとうございます」


「世話になる」


三人は玄関から廊下を進み、左手に豪勢な庭園を見ながらやがて右手に見えてきた襖を開ける。


「さぁ、此処が茶室だよ。あ、作法は気にしなくていいから、気兼ねなく入っておくれ」


「はい」


そうして部屋に入り、雅泉は茶器の前に座り、その横に信治と藤次郎が雅泉を見つめるように並んで座る。


「確か藤次郎殿は信治君の守護者だから基本的にはいつも側に居るんだよね?」


「ああ。これまでも何度も信治は襲われてるからな。俺が側に付く」


「そうかい。建築の勉強は基本的には私の家で行うから、滅多な事では襲われないとは思うけれど……。一応晴明様にも頼んでこの屋敷に結界を張ってもらったから、大丈夫だと思うよ」


「だがこんなに広い屋敷なんだ。使用人とかも居るだろう?」


「ああ、それは居ないよ。基本的に私が庭の手入れから掃除までこなしているからね。私の屋敷には私しか居ないよ」


「そうなのか? なら……少しは警戒を緩めても良いかもしれねぇな」


「そうだよ、常に気を張るのは疲れるだろう? 此処にいる時くらい、ゆっくり休んでおくれ。信治君も、安心して勉強してね」


「ありがとうございます!」


「じゃあ俺は猫化する。あとは二人で話してくれ」


藤次郎は猫化し、にゃんじろうになる。


「……っ!」


「雅泉様? どうされ──」


「だ、抱きしめて良いかなにゃんじろう君……!」


「にゃあのぉ」


「し、信治君、なんて言ってるんだい?」


「突然どうしたんだ? だそうです」


「あ、ああ……私は猫が大好きでね、見かけるとモフモフせずには居られないんだ……!」


「にゃあのぉ」


「仕方ないな、だそうです」


「っ! にゃんじろう君!」


抱き! モフモフ……モフモフ……


「はぁぁあ……幸せだ……」


「にゃあのぉ」


「良かったですね、雅泉様」


「これからほぼ毎日私の視界ににゃんじろう君がいるなんて……ああ、ありがとう信治君! 私の弟子になってくれて!」


「い、いえ……喜んで頂けてなによりです」


「あああ、モフモフ……肉球〜」


雅泉が満足するまで弄られるにゃんじろうなのであった。



その日の夜。


「うちで夕飯食べて行かないのかい? 信治君」


「はい、彼女と食堂で一緒に食べる約束をしていますので……。今日はどうもありがとうございました。来週から宜しくお願い致します」


「そうかい、残念だね……。今度は彼女さんも呼んで一緒にご飯食べようね。じゃあ信治君、にゃんじろう君、気をつけて帰るんだよ」


「はい!」


「にゃあのぉ」


「じゃあにゃんじろう、一旦俺の家に行こうか」


「にゃあのぉ」


そうして信治とにゃんじろうは信治の家に瞬間移動した。



「じゃあにゃんじろう、今日はありがとう。また明日も宜しくね」


「にゃあのぉ、にゃあのぉ」


「え? 危ないから食堂まで送る? 大丈夫だよにゃんじろう、ここから食堂まで瞬間移動で一秒なんだから」


「にゃあのぉ!」


「嫌な予感がする? そう……じゃあ送って──」


「信治様〜! 僕をだい──」


ガンッズザザザッべしゃあ!


信治に後ろから襲いかかろうとした男は瞬時に人体化した藤次郎に殴られ、地面を滑り倒れる。


「ほらな。信治、行くぞ」


「あ、ああうん……ありがとう……」


今日もにゃんじろうは信治が家に帰るまで気が抜けないのだった。






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