第三の目
「晴明様、やめて下さい」
「嫌なのだ」
「やーめーてーくーだーさーい!」
「いーやーだ! お主の第三の目が見たいのだ!」
「第三の目に霊力つけられるととっても嫌な感じがするのですよ⁉︎」
「それは分かるがなぁ……。お主の第三の目は綺麗な青色なのだ。見たいのだ」
「ううう〜! いやだぁ」
千尋は眉間のところに晴明の霊力をつけられ悶絶していた。
「大体なんで霊力つけなきゃ第三の目が見えないんですか⁉︎ 霊視すれば良いのではないですか」
「第三の目は何故か霊視しても見えぬのだ。霊力越しでないとなぁ」
「うう……もうどけて下さい」
「もう少しだけ見ていたいなぁ」
「うう……。こうなったら晴明様の第三の目にも霊力つけてやる。行け! うにょうにょさん!」
千尋は自分の霊力を練って伸ばすイメージをする。そして晴明の眉間にくっつけた。
「ぐぁ! な、何をするのだ千尋! あああ、嫌な感じだ……ああ……」
「ふふふ、仕返しです。ほれ、グリグリー!」
「うああ! や、やめて欲しいのだ千尋! 千尋ぉ!」
「さぁ、私の眉間から霊力をどけて下さい晴明様! ほら早く!」
「どける、どけるからな! ……どけたぞ千尋!」
「良いです、晴明様。もう二度と霊力つけちゃ駄目ですよ」
「ううむ……。分かったのだ、千尋。すまなかった」
「仕方ありませんね。反省してるなら良いですよ」
「反省しておる……」
こうして千尋に怒られた晴明なのだった。
数日後。
千尋は仕事をしていた。
「!」
(眉間に霊力⁉︎ 晴明様かな……晴明様、やめて下さい!)
「千尋ー、呼んだか? どうしたのだ?」
(あれ、晴明様じゃない……? 誰ですか⁉︎)
「我だが……」
(! 龍王様⁉︎ 何故第三の目に霊力をつけるのです?)
「お主の第三の目が欲しいのだ。青くて美しい……。くれぬか?」
(えええ、抉り取るって事ですか⁉︎ なんか嫌です!)
「龍王……千尋の第三の目はやらぬ。帰るが良い!」
「なに、痛くはない。大丈夫だ」
(い、嫌です!)
「駄目なものは駄目なのだ! 第一千尋の第三の目を抉り取ったら千尋は霊視出来なくなるかもしれぬではないか」
(晴明様もっと言ってー!)
「ふむ……。そうかもしれぬがなぁ。だが我は欲しいものは何でも手に入れたいのだ。千尋だって本当は欲しいのだぞ」
「千尋はやらぬ。諦めるが良い!」
「いーやーだ。欲しいのだ。そうだ、我の妻にすればいつでも第三の目が見れるなぁ。千尋よ、我の妻にならぬか?」
(嫌ですー!)
「嫌か……。日本の救世主になどならなければ我が妻になっていたものを。千尋よ……我はお主が小さい時からずっと見てきたのだ。諦めぬからな!」
「な、待つのだ龍王! 龍王! ……行ってしまった。千尋、大丈夫か?」
(だ、大丈夫です……。ありがとうございました、晴明様)
「いや、良い。ではまたな、千尋」
(はいー! ……それにしても龍王様、小さい時から私を見てきたって……どういう事だろう?)
そう疑問に思いながら千尋は仕事に戻るのだった。
その日の夜。
「千尋、龍王だが……」
「! 龍王様! また来たんですか⁉︎ 第三の目はあげませんよ!」
「うむ、その話は置いておいてだな……。千尋は覚えておらぬのか? 我の事を」
「覚えて……? なんのことです?」
「うむ。実はな、千尋が幼き頃、霊体となって霊界に来ていた時に我と会っておるのだ。森で迷っていたお主を我が保護してな。幼きお主はそれはもう可愛かった。我は一目惚れだったのだぞ」
「えっ……。ロリコン……?」
「ロリコンとはなんだ?」
「あ、いえ。それで私が小さい時から私を見ていたのですか?」
「うむ。まさか日本の救世主になるとは思わなかったがな。なぁ千尋……。今からでも遅くはない。我が妻とならぬか?」
「え……。いえ、私は晴明様を愛していますから」
「そうか……。ではたまにでいいのだ。お主の第三の目を見せてくれぬか?」
「それは……。少しだけなら……」
「良い。ありがとうなぁ千尋」
「それにしても、下界の人間が霊体になって霊界に行く事ってよくあるんですか?」
「うむ、よくあるな。皆霊界に来た時の生活や魂の段階の引き上げの為の勉強をしに寝ている間ちょくちょく来るのだ。千尋は霊界に来たら晴明や信治達の元に行っているようだな」
「そうなんですね。成仏したら霊界へ行っていた時の記憶が戻るという事ですよね?」
「そうなのだ。成仏すれば我との出会いも思い出すであろう」
「そうですか……。あ、まだお礼を伝えていませんでしたね。その節は助けて頂きましてありがとうございました」
「良い良い。その分、第三の目を見せてくれればなぁ」
「あはは……。あ、龍王様には第三の目はあるんですか?」
「いや、我にはないなぁ。龍族には第三の目はないのだ。お主が羨ましい」
「そうなのですか……。あ、龍族ってーー」
「龍王様ー、龍王様ー!」
「うん? どうしたのだシロ」
「龍王様、大変です! 黒龍のやつらが奇襲をかけてきました!」
「なんだと! あやつらめ……我がいない隙に……! ではな、千尋!」
「あ、ええ……」
そうして龍王とシロは霊界へと戻った。
(黒龍のやつらって言ってたけど……そういえば龍王様は白龍なんだよね。対立してるんだ……大丈夫なのかな……? 明日晴明様に聞いてみよう)
翌日。
「千尋ー、来たのだぞー」
「あ、晴明様。おはようございます。あの……昨日龍王様達に黒龍が奇襲をかけたようなのですが、大丈夫だったのですか?」
「なんだ、誰から聞いたのだ? その通りだが……結論から言うと、今は冷戦状態だなぁ。まぁよくある事なのだ、心配せんでも大丈夫なのだ」
「そうなのですか……。龍王様はすべての竜族の長ではないのですか?」
「うむ、一応長なのだが……再生を司る白龍と、破壊を司る黒龍は同格であるとなっていてな。黒龍は長の座を常に狙っておる。黒龍の中でも黒曜という者が特に長になりたがっておってなぁ。まぁ黒龍の長という感じだな。再生と破壊は切っても切れないものなのだ、仲良くすればよいのだがな、黒龍が白龍を敵対視するせいで……なぁ」
「そ、そうですか……」
(黒曜様、か……どんな方なんだろう)
「む……千尋、にゃんじろうが来るようだぞ」
「えっ、そうなのですか。何か用なのでしょうか?」
「何、すぐ来る。直接聞けば良い」
「にゃあのぉ!」
「あ、にゃんじろう! いらっしゃい。どうしたの?」
「にゃあのぉ!」
「え、みさとが黒龍に攫われた!? えええ、なんでー!?」
「にゃあのぉ、にゃあのぉ、にゃあのぉ!」
「真偽の目で黒龍と白龍どちらが正しいのか見定めて貰う為だろうって? そう……それは分かったけど何故私のところに来たの? あ、晴明様に協力を仰ぎに来たの?」
「にゃあのぉ! にゃあのぉ!」
「えっ、私に白龍と黒龍の争いをやめさせて欲しい、日本の救世主の仕事だって!? えぇー、そんな事言われても! 晴明様、どうしましょう〜」
「ううむ……確かに数百年前に日本の救世主が現れた時はその時の日本の救世主が白龍と黒龍の争いを止めたらしいが……」
「そ、その人は今!?」
「その者は今──龍王の妻だ」




