日中の出来事
カタカタカタカタ……
パソコンを打つ音が響く。
千尋は仕事をしながら、今朝の出来事を思い出していた。
(秋殿、あんなにアプローチしてるのに全然報われないな……。いっそのこと私が仲介して……。いやでも、春殿も秋殿を結構気にしてるっぽいんだよな〜。余計な口出しは無用……か)
「桜井さん、これはどうすればいいですか?」
「ああ、これは……」
(とりあえず仕事に集中しないと晴明様に叱られちゃうよ。集中集中!)
秋達の事を気にしながらも仕事を進める千尋なのだった。
その頃霊界では──
「晴明様、この書類なんですけど……」
「うむ、ここが間違えておるな。訂正しておこう」
「晴明様、こちらの書類も訂正して良いですか?」
「……うむ、良い良い」
「晴明様ー、世界樹様の処の湖に落ちた人がいるらしくて、俺行ってきますね。怪我は無いみたいですけど一応診てきます」
「そうか、宜しく頼む。る魔、一緒に行って世界樹様にお詫び申し上げてきてくれ」
「承知致しました」
「お詫び?」
「うむ、湖を汚してしまったからな、後で浄化せねばならぬ」
「そうですかー、じゃある魔殿、宜しくお願い致します」
「はい」
そうして二人は湖の処へ瞬間移動した。
「っはー、ここはいつ来ても清浄な空気ですねぇ。息する必要無いけど深呼吸したくなりますね。えーと落ちた人は……」
「あれではないか?」
「お、本当だ! おーい、大丈夫かー?」
「は、はいぃ!すみませんすみません、湖を汚してしまってすみませんーー!」
「ああ、元気そうだな。どっか痛いとこないか?」
「なななないです! 平気元気無敵です!」
「おーそりゃ良かったなぁ。じゃあ家まで送るからおぶされよー」
「えっ⁉︎ いっいえ、大丈夫ですよ!」
「いいや、気が動転してるやつほっとけねぇよ。ほら」
「我は世界樹様にお詫びしてくる。ではな」
「おーではなー。ほら」
「ううぇ⁉︎ はっはい……」
──10分後──
「でっ、ではここで……」
「ああ、今度は落ちるなよー。てかなんで落ちたんだ?」
「その……世界樹様にどのくらい紐が結びつけられてるのか気になって……」
「ああ、子供か」
「ええ……。世界樹様が植えられた事によって男同士でも女同士でも子供が授かるようになって、僕嬉しかったんです。僕の周りには同性愛者が結構多くて……」
「そうか、そうだよな。でもすげーよな、同性同士の場合本当に心の底から愛し合ってる二人が紅い紐を世界樹様に結ぶと、二人がちゃんと子供を育てられるか世界樹様が判断して子供を授けて下さるんだもんなぁ。子供を授かったら紐が切れるんだろ?」
「ええ……。子供を授かった親は直感的に分かるそうですよ」
「すげーなぁ。でも産むのもすげーよな、お腹から浮かせて大きくして大きさ固定してって……。下界とは全然ちげーよな」
「下界では十月十日お腹に入れておくらしいですものね、霊界では妊娠したら30分以内に産まないといけないんですよね」
「大変だなぁ」
「大変ですねぇ。そういえば晴明様のお子様は下界の方とのお子様なんでしたっけ」
「ん、ああ。霊界と下界の時差があったから、母君はまだ25歳だったか」
「信治様、立派になられましたもんね……!晴明様の跡を継ぐのに信治様ほどの適任者はいらっしゃいませんよ」
「そうだなぁ、でもまだ18歳だから……可愛い盛りだよ」
「あははっ!間近で信治様を見られるなんて羨ましいです……!」
「そうなぁ、俺も子供欲しいわー」
その後30分間話し続けた二人だった。
「晴明様、只今戻りました」
「ん……ああ、る魔。昭隆はまだ戻らぬのか?」
「あれ、もう戻っているものと思いましたが……。でもまぁ、おそらく雑談でもしてるんでしょう」
「そうか……一応仕事中なのだがなぁ」
「あ、晴明様、そろそろお昼ですよ」
「おおそうか!では千尋の様子でも見てくるなぁ」
「はい、いってらっしゃいませ」
「お供致しましょう」
「千尋ー、待っているのだぞー!」
霊界でのお昼は11時から13時まで。