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そらたん

千尋は部屋で一人妄想をしていた。


(幸太郎さん×りょうたろうさん……いやいや、弟×兄もいいな……。って事は敬語攻め! 壁ドンからの「幸太郎……もう離しませんよ」 「りょうたろう……オレには凛が……!」 「ふふふ、そんなの関係ないですよ……。凛さんよりすっごく良い事、してあげますよ……?」 とか……きゃー!)


パチパチパチ


(ん? 今勝手に瞬きしたような……)


パチパチパチ


(……。首に続いて今度は勝手に瞼が動くのかい? 君は誰だい?)


パチパチパチパチ


(……何故だかなんとなく言ってる事分かるな。言えない、か……じゃあ空って呼んで良い?)


パチパチパチ


(良いよ、か……。にしても目だけ入ってるとか? 晴明様来たら視て貰おう。さて、次は最近知り合った呉服屋さん×呉服屋さんでも妄想するか)


そうして晴明が来るまで妄想する千尋なのだった。


「千尋ー、来たのだぞー」


「あ、晴明様。ちょっと私を霊視して欲しいのですが……」


「霊視? 何でなのだ?」


「何故だか私の目が勝手に瞬きするのです。誰がどんな風に入ってるのか知りたくて……」


「瞬きか。良いぞー……。ふむ、男が入っておるな。全身だ。海達がおるから霊は入れないはずなのだが……どうやって入ったのだ?」


パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ


「千尋ちゃんの頭から入ったよ、だそうです」


「ふむ……出るが良い」


パチパチパチ


「嫌だ、だそうです」


「嫌ではない。ずっとそのまま千尋の中におるつもりなのか? 食事も出来ぬのだぞ」


パチパチパチ


「じゃあ出る、だそうです」


「うむ、良い良い。千尋、そ奴が出やすいように座ったままでおるのだぞ」


「ええ」


スッ


「あっ……出ましたか?」


「うむ、出たぞ。お主、もう千尋に入るでないぞ。良いか?」


「……うん」


「良い。では霊界に帰るのだ。ではな」


「うん」


そうして空は霊界へと帰っていった。



次の日。


千尋は仕事をしていた。


パチパチパチ


(え? 空だよ? また入ったの?)


パチパチパチ


(うんそうそうって……こら、入っちゃ駄目でしょ)


パチパチパチパチパチパチ


(千尋ちゃんの仕事が見たいって? じゃあ少し見たら帰るんだよ)


パチパチパチ


(うんそうそう、ね……)


そうしてそのまま仕事を続ける千尋なのだった。


空が仕事中千尋に入るのはこの一回に留まらず、毎日のように入っては千尋と目で会話していた。


パチパチパチ


(今日も来たのね、空。……そらたんって呼んで良い?)


『うんそうそう』


(そらたん。そらたんは何才なの?)


『百二十八だよ』


(えっ、かなり年上……私より下かと思った)


『うんそうそう』


(そらたん、パッチリお目目なの?)


『うんそうそう』


(パッチリお目目が可愛いの〜、そーらーたん!)


バチコン!


千尋は密かにウィンクをする。


『なぁにそれ』


(そらたんがやると可愛いであろうウィンクだよ。ほら、もう一回やるよ〜。パッチリお目目が可愛いの〜、そーらーたん!)


パチッ


(きゃー、可愛いそらたん!)


『うんそうそう』


こうして空と千尋の仲は深まっていくのであった。



とある休日。


千尋は部屋で読書をしていた。


『千尋ちゃん』


「えっ、そらたん? どうしたの、休みの日に来るなんて珍しいね」


『僕、もうすぐ消えるんだ。だからお別れにきた』


「えっ、消えるって……どうして⁉︎」


『魂の寿命だよ。魂は生きてるうちに少しずつ消えていく。僕にも寿命が来たんだ』


「そ、そんな……。じゃあ晴明様達もいつかは消えちゃうの?」


『神様は平気。永遠に生きられる』


「そう……。うっ、嫌だよぉそらたん、消えないで!」


『仕方ないんだ』


「ううっ……。……嫌だね。そらたんは消えさせない! そらたんの魂を永遠保存してやる!」


『えっ』


スリッぱん! スリッぱん! ぱん!


「桜井千尋の名において、そらたんの魂を永遠保存と……した!」


すると空はビクッと震え、千尋の中から出る。


「……消えない」


「そらたん〜! 消えてない⁉︎ いる⁉︎ 永遠保存にしたからもう消えないはずだよー‼︎」


「……千尋ちゃん、僕──」


「やぁやぁ、守人だよ、千尋ちゃん。よくぞ出来たね、永遠保存。うん、合格合格」


「えっ……。合格って……?」


「ふふ、君達仲がいいようだから、千尋ちゃんに永遠保存かけて貰おうと思ってね。普通神様になる人は神様に魂を永遠保存して貰うんだけど、さすが日本の救世主だね、千尋ちゃん。よく出来ました」


「えっ……っと、それじゃあそらたんは神様になったって事ですか?」


「うん、そういう事。そらたんは今まで徳を積んで来たからね〜。いやぁ、そらたん消えなくて良かったね」


「僕……神様になったの?」


「そうそう。何の神様になったかはお楽しみ〜」


「うっ……。そらたぁぁん! 良かったねぇぇ」


「千尋ちゃん……ありがとう」



こうして空は神様になったのだった。



「ねぇあっきー」


「なんだよ」


「守護霊様もいつかは消えちゃうの?」


「いや……。何かの役職についてる奴は消えない。消えるのは一般人だ」


「そう……じゃああっきーは守護霊様である限り消えないんだね」


「そうだなぁ。守護神になれば永遠に消えないけどな」


「あっきー……私が成仏しても消えないように守護神様になってよ」


「そんな簡単にはなれねぇよ。ま、頑張るけどな」


「いざとなったら私が永遠保存かけて神様にするから」


「そりゃ楽しみだな。そういやそらたんはその後来ないのか?」


「うん……来ない」


「そうか。まぁ忙しいんだろ」


「でも寂しいなー……。あーそらたんそらたんそらたん〜」


『なぁに千尋ちゃん』


「えっ……そらたん?」


『うん。パッチリお目目が可愛いの〜、そーらーたん!』


パチッ


「なんだ、そらたん。いつの間に入ったんだ」


『今の間に』


「そらたぁぁん! 可愛いよーそらたぁぁん」


「おい……そらたんって結構ガタイ良い男だぞ……?」


「えっ」


『うんそうそう』


「……そらたん×あっきー……萌え……!」


「いきなりどうした」


『うんそうそう』


こうして今日も千尋の妄想は止まらないのだった。






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