じゃねーよ君
「晴明様ー、いますかー?」
「じゃねーよ」
「……晴明様、いないんですかー?」
「じゃねーよ」
「……誰?」
「じゃねーよ」
「だから一体誰って言ってるんです」
「じゃねーよ」
「……。じゃねーよ君、晴明様呼んできて」
「じゃねーよ君じゃねーよ」
「じゃあ誰なんですか」
「……喜助」
「喜助さん。さっきから何なんです?」
「喜助って呼ぶんじゃねーよ」
「……じゃねーよ君。暇なの?」
「暇。付き合って」
「えっ……そんな、私達まだ出会ったばかりなのに……」
「じゃねーよ」
「……。じゃねーよ君は私の事知ってるの?」
「知ってる。日本の救世主だろ」
「そう。晴明様の妻って事は?」
「知らない。お前人妻なの?」
「そうだよ、人妻。子供もいるんだから」
「ふーん。何歳?」
「一番上が十八で、二番目が十七、三番目が十六だよ」
「じゃねーよ」
「えっ、私の年齢? 二十五だよ」
「へぇ。老けてみえんな」
カッチーン
「……じゃねーよ君はいくつなのさ」
「俺? 俺は百三十五歳かな」
「やーい、じじい」
「じゃねーよ。見かけ的には二十三くらいだし」
「そう、じゃあ年下なのね。じゃねーよ君彼女いるの?」
「いる」
「じゃねーよ君のくせに……」
「じゃねーよ」
「というか晴明様来ないのかなー。じゃねーよ君呼んできて」
「じゃねーよ。俺が呼べる訳ないだろ。念じれば届くんじゃねーの」
「あ、その手があったか。ありがとうじゃねーよ君」
「ああ」
(晴明様、お暇なら来てください!)
バンッ
「母さん!」
「な、なぁに信治」
「父さん今日は来れないって。俺から伝えてくれって」
「そう……。分かった、ありがとう信治」
「うん。じゃあね」
「じゃあねー。……じゃねーよ君」
「なんだよ」
「晴明様に振られちゃった……」
「……俺がいるだろ」
「じゃねーよ君……! 不覚にもキュンときちゃったよじゃねーよ君!」
「じゃねーよ。……お前友達いねぇの?」
「ギクッ……い、いるもん! 地元には……」
「地元には、ね。……俺がなってやろうか? 友達」
「えっ、いいの? じゃねーよ君」
「ああ。その代わり相談に乗ってくれ」
「相談? いいよ、私でよければ」
「実は──」
次の日。
「うーん……着物かぁ」
『実は彼女の誕生日に着物を贈りたいんだがな。なかなか可愛い着物が見つからないんだ。どうしたら良いか教えてくれ』
(って言われて、じゃあ私が創るよーって軽くオーケーしたものの……)
「とりあえず可愛いといえば花柄だよね。花柄を検索して……あ、これとか可愛いなぁ。あとはイメージして創るだけだけど……。えーと、マネキン欲しいな……あ!」
バンッ(霊界と下界を繋ぐ扉)
「愛香ー!」
「なぁに母様、私仕事中よ」
「あーそうなんだ……。頼みたい事があったんだけど、仕事なら仕方ないね。じゃあまたねー」
「ええ」
バタン
「んー……。あ、女物だけど……」
バンッ
「選ー!」
「なぁに母さん」
「選、今暇?」
「うん、暇だよ」
「じゃあさ、ちょっとマネキンになってくんない?」
「マネキンって何?」
「服とか飾る道具。私着物をイメージして創るからさ」
「わかった。よいしょ……。ここに立ってれば良いの?」
「うん。じっとしててねー」
「うん」
(まず下地の色はー。ピンクが好きって言ってたよね……ピンクにして、あとは袖と裾の方に花柄を貼り付けて……グラデーションにしよう。帯はシンプルに白で……)
「固定保存! っと……。選、どう思う? その着物」
「可愛いけど……なんで女物なの? 僕男だよ」
「あはは、ごめんごめん。でも似合ってるよー」
「嬉しくないよ」
「ごめんね〜。あ、それ脱いでもらえる? 友達の彼女にあげるんだ」
「友達? 男の人?」
「うん、そうだよ」
「男の人の友達とあんまり仲良くしたら父さん嫉妬するんじゃない?」
「えーそうかなぁ。友達だよ? 大丈夫だと思うけど」
「うーん、嫉妬すると思うなぁ」
「そう? 選がそう言うなら気をつけるよ」
「うん。あ、脱いだよ」
「ありがとう。じゃあこれ友達に見せるから、選帰っていいよ〜」
「うん、分かった。じゃあね」
「ありがとね〜」
バタン
(えーと……じゃねーよ君、着物が出来ましたよー! 来てね!)
「来たぞ。着物出来たのか」
「うん、そこに置いてあるよ」
「これか。……可愛いな」
「でっしょー。これで大丈夫?」
「ああ、大丈夫。いくらだ?」
「えっ、良いよ〜友達だもん、タダであげるよ」
「そうか、悪いな。……ありがとう」
「どういたしまして〜」
「そうだ、あと──」
ズベッ
「あ?」
「え?」
ちゅっ
「……⁉︎ なんでこんなとこにコロコロがあんだよ!」
「そ、掃除してそのまま……てか今キス──」
「ちっひっろーー‼︎ 我のいぬ間に浮気などとっ、我許さん! 我許さん!」
「せ、晴明様⁉︎ 違うのです、浮気じゃなくて──」
「接吻しておいて浮気ではないと申すか⁉︎」
「だからコロコロですべったんですって! ねっ、じゃねーよ君!」
「あ、ああ……。そうですよ、晴明様。コロコロで足を滑らせて接吻してしまっただけです」
「……証拠はあるのか」
「証拠……。真偽の目で見定めてもらっても構いません」
「そうか。みさとー!」
バンッ
「何ですか、晴明様」
「このじゃねーよ君とやらが嘘をついてないか視て欲しいのだ」
「良いですよ、晴明様」
「ではじゃねーよ君。千尋と接吻したのは本意ではないのだな?」
「はい、本意ではありません。事故です」
じーっ
「……嘘はついてないようです」
「そうか……ならば良い。これからは気をつけるのだぞ、じゃねーよ君」
「はい」
「ありがとうなぁ、みさと」
「いえいえ。では」
「うむ」
「み、みさとが居て良かった……。すみませんでした、晴明様」
「うむ、千尋も気をつけるのだぞ。あんまり他の男と仲良うするでない」
「でも……じゃねーよ君は友達なんです」
「では男と二人きりになるでない。我と共にいる時に話すのだ」
「そんな……。時には相談したい時もあるのですよ?」
「相談? 我にすれば良い」
「晴明様について相談するのです。誕生日プレゼントは何が良いかとか……」
「ふぅむ……。……では海、千尋の事を見張るのだ。良からぬ事をしていたら知らせるのだぞ」
ウンウン
「良からぬ事なんてしませんけど……良いですよ。海、宜しくね」
ウンウン
こうして千尋は晴明の束縛ぶりを知るのだった。




