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過去編10

悪魔襲撃事件があった次の日。


千尋は晴明と共にいた。


「千尋、この世には魑魅魍魎がおるが悪魔は特にタチが悪い。何しろ人に近しい知能を持っておるからな。そこでだ。昨日したようにあやつらを良魔にして欲しいのだ。良いか?」


「それは良いですけれど……一体何体いるんです?」


「うむ、それは分からぬ。あやつらは邪気から生まれ出るからな。沢山いるだろう」


「そうですか……。それにしても、一体一体良魔にしていたら時間がかかりすぎますよね。浄化みたいに一気に出来るでしょうか」


「うむ、千尋ならば出来るかもしれぬ。やってみてくれ」


「分かりました」


「承知致しました、だ。我は良いが、他の神々に対してはそう受け答えするのだぞ」


「しょ、承知致しました。では……」


千尋は手を合わせると地球をイメージする。すると黒い人影が各国に散らばっているのが視えた。


「良魔になぁれ‼︎」


千尋は昨日したように黒い人影を白くするイメージをする。段々と黒い人影達が白くなっていき、ついに──


「……っ、で、きた……かな?」


「……うむ、良い良い! 出来ておるぞ千尋! 良くやったなぁ」


「良かった、ありがとうございます。……晴明様、悪魔は邪気から生まれ出るのですよね? では、邪気そのものが無くなれば悪魔は生まれないのではないですか?」


「うむ、確かにそうだが……邪気をなくす、か……。邪気の存在を別なものに変換すれば良いかもしれぬな」


「別なもの、か……。……じゃあ清浄な空気にでもしてみますか? 邪気が生まれた瞬間、清浄な空気になるんです」


「ふむ……。では千尋、昨日我がした三回の柏手を覚えておるか?」


「あ、はい……右手からずらして打つやつですよね」


「うむ。あれは一拍目は時を意味し、二拍目は世界を意味する。三拍目は確定を意味していてな、術を使う時と世界を確定させておるのだ。ここの時、ここの世界、というようにな。あれを使えば良い」


「そうなんですか……。私に出来るでしょうか?」


「我も手伝う。同時に術を使うのだ。良いか、言われた通りに言うのだぞ。『桜井千尋の名において、邪気を清浄な空気とした!』だ」


「し、承知致しました」


「ではゆくぞ。せーのっ」


スリッぱん! スリッぱん! ぱん!


「安倍晴明の名において」


「桜井千尋の名において」


『邪気を清浄な空気とした!』


「……出来たのでしょうか」


「うむ、暫し様子を見よう。千尋、とりあえず今ある邪気を浄化するのだ」


「は、はい。浄化ーー!」


「……うむ、良い良い。では邪気が増えるかどうか、暫し待とう」


「はい」


──数時間後──


「千尋! お前、何かしたか⁉︎」


「あ、幸太郎さん……」


「……どうやら邪気が生まれた瞬間から清浄な空気になっているようなんだ。何かしたのか?」


「はい、晴明様と邪気が生まれた瞬間から清浄な空気になるように術をかけました」


「そうなのか……! 良くやった、千尋!」


「いえ……晴明様のお陰でもありましたから」


「我は少し手伝っただけだ。千尋、良かったなぁ」


「はい!」


「……千尋。話がある」


「話って……?」


「……晴明殿は少し席を外して貰って宜しいですか」


「うむ……良い良い」


「……千尋。オレ……お前が……好きなんだ!」


「えっ……ええ! で、でも幸太郎さんはまいさんのことが好きなんじゃ……」


「まいには振られたし……それに、千尋の事が気になって仕方ないんだ。だから……オレと付き合ってくれないか」


(ええー! 嘘……幸太郎さんが私を……? でも──)


「幸太郎さん……。私の寿命がいつかは分かりませんが、もし長生きしたら私おばあちゃんになっちゃうんですよ? それでも良いんですか?」


「良い! オレはお前と一緒にいられるだけで良い。ずっと見守る。だから……」


「幸太郎さん……。……わ、私も……好き、です」


「本当か⁉︎ じゃあ付き合ってくれるのか⁉︎」


「はい……宜しくお願い致します」


「良いっ、良いっ!」


幸太郎は千尋をぎゅっと抱きしめる。

こうして千尋と幸太郎は恋仲になったのだった。



その日の夜。

幸太郎は仕事へと戻り、千尋はまだ晴明といた。


「千尋、歩の事だがな……。千尋が生気を分けたお陰で高熱を出すだけで済んだようだ」


「そうなんですか、それは良かった……! これに懲りてもう手出ししてこないと良いんですけれど」


「なに、大丈夫だ。我がキツくお仕置きするからな」


「え、晴明様が? 何故晴明様がするんです?」


「うむ……一応、我は歩の師匠だったのだ。数百年の眠りから覚めたら我の目覚めに気づいたらしい歩に捕らえられてな。術を教えるよう言われておったのだ。無論、千尋にかけた呪詛などは教えてないがな」


「えっ、じゃありょうたろうさん達が助けた方って晴明様だったんですか!」


「うむ。お主が歩と連絡を取っておらんかったら我はまだ歩に捕らえられておったろう。ありがとうなぁ」


「いえ……。それにしても数百年の眠りって、何で眠ってたんですか?」


「……内緒、だ」


「そうですか……。あ、そういえば晴明様が私の部屋に来てくださったのはどうしてなのですか?」


「うむ、日本の救世主が現れたと聞いたからな。どんな人物か気になって訪ねたのだ」


「そうだったのですか……。でも本当に晴明様が来て下さらねばどうなっていたことか。ありがとうございました」


「良い良い。では我はそろそろ歩にお仕置きしてくる。ではな、千尋」


「はい、お気をつけて」


そうして晴明は歩の所へ向かった。



それから三日後の夜。


(あれから晴明様来ないな……大丈夫かな? まさかまた捕らえられてないよね……)


「千尋」


「! ……ビックリしました、晴明様! 丁度心配していたところだったのですよ」


「それはすまぬな。大丈夫なのだ。して、千尋よ。歩がお主に謝りたいと言っていてな。今大丈夫か?」


「あ、はい……大丈夫ですけれど」


「そうか。では暫し待て」


「はい」


待つこと数分。千尋の右手が動き出した。


『千尋ちゃん、ごめんなさい。ぼくは日本のきゅうせいしゅじゃなかったみたいだ。だからあきらめる。命をねらったりしてごめんなさい』


『もう二度と人の命を狙うなんてことしなければ良いですよ』


『うん。しない。ぼくはもう霊能力を使わないことにする。……あくまをよしまにしてくれてありがとう』


『どういたしまして』


『じゃあね。君にもらった生気のおかげで生きてる。大事にするよ、この命』


『大切にして下さいね。じゃあね』


これにて本当に呪詛事件は終わりを迎えたのだった。




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