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時越え 弐

「明心、どうだ?」

 障子の向こう側から声をかける人物がいる。

 玲は茫然自失とした状態でなんとか視線だけをそちらに向ける。

 明心も呼び掛けに反応し後ろを振り返った。そして、ゆっくり立ち上がると、

「ええ、和尚。先ほど気が付かれたようです」と返事をかえしながら部屋の隅まで行き障子を開いた。

 すると、そこに姿を現したのは、玲の父と同年代かそれ以下の、お袈裟けさを纏い茶色を基調とした法衣を着た、どこか柔らかい奥行きさと貫禄のある、割とがっしりした体格の壮年の男性。

「どうだね気分は?」

 その僧は、年を重ね渋さを感じさせる面に優しい微笑みを浮かべながら、玲のいる布団の傍へと歩み寄り鎮座した。


 この人が明心さんの師で、私を助けてくれた人? と、玲は整理のつかないままの頭でなんとなしに思う。

「私は、東叡山寛永寺の坊主だ、義観という。これは、私の弟子の明心だ。――おぬしの名はなんという?」

 話し掛けられて、ようやくボーっとしていた頭が回転し始める。

 玲は茫然としていた自分を諫め、丁寧に辞儀をしながら恐縮そうに口上をのべた。

「助けていただいたのに失礼致しました。

私は、柳崎りゅうざき れいと申します。この度は、ご迷惑をお掛けしまして申し訳ありませんでした」

「いいのだよ――しかし、何があったのだ? その衣は異人のものか?」

 刹那、瞳に影が差したような悲しげな微笑みを玲は浮かべる。


(未来から時を越えてきたなんて言っても信じてもらえる訳ないよ。頭のおかしい娘と思われるにきまってる。

でも、真実を伝えないにしても、どう誤魔化すわけ? 私の着てるこの制服だってあやしい物として目に写ってるのよね? 記憶喪失? ……あっ! 自己紹介しちゃったよ…いまさら無理ね……やっぱり、おかしいと思われても真実を話すしかないか……)


「あの……これは私の通っている学校の制服です。――と、言っても意味がわかりませんよね?」

 右手でスカートの裾を少し引っ張るように摘まみながら、先程と同じ悲しげな微笑みを浮かべながら二人の反応を窺う。

 義観と明心は互いに顔を見合わせる。しかし、それも一瞬のことで。

 義観は腕を組みながら話を促すように軽く頷き、玲を見た。

「……信じられないと思いますが、私未来から時を越えて此処に……私からしたら過去のこの時代に来てしまったようです」

 言葉に出すことでどういう訳か無性に泣きたくなる。

 鼻の奥がつんとして、じわりと目頭が熱くなり慌てて指で払う。

「私にも、なぜこんな事になってしまったのか分かりません。――たまたま立ち寄った寺社にいたら、いきなり酷い眩暈と耳鳴りに襲われて、気を失って……目を覚ましたら此処にいました」

「……うむ。……確かに、おぬしの姿は初見であるが故に驚きはしたが、時を越えたとは……いささか、信じようにも信じがたい夢物語のような話だなぁ……」

 やはりと言うべきか、その返ってきた反応は、信じられないといった非常に困惑した様子。

 しかし玲は、その反応と義観の言葉からある種、解決の糸口をみつける。

 義観の言った『初見である姿』これを逆手に使えば、この姿こそが未来から来たという証明になるという事。

 玲は、はっとしたように目を瞬き「ちょっと待ってください」と急いで、傍にあったバックの中身を確認する。

(未来の物を見せれば、きっと分かってくれるはず。でも何を見せたらいい? 携帯とかは刺激強そうだし止めたほうがいいかな? 無難に、生徒手帳とか? うん、写真ついてるし良いかも)

「あのっこれ生徒手帳といって、未来での私の身分を証明するものなんです」

 出し抜けにそう言って、手帳を義観に手渡す。

 少し驚いたような表情で、手帳を受け取る義観。明心が、義観の斜め後ろから上半身を寄せるようにして義観の手元にある手帳を覗き込む。


 一般には珍しいシステム手帳型の生徒手帳。

 ワインレッドカラーの合皮素材の表紙に校章と学校名が刻印されており、表紙裏がセル付き窓になっていてそこに写真と共に名前や生年月日等が記載されている。

 中身はバインダー方式で、学校の理念や学則が書かれているページに加えて、時間割、メモ帳、スケジュールやアドレスの管理機能を合わせ持ち、かなり充実した内容の使いやすい手帳だ。

「あっそのページ、じゃなかった、片面に私の名や生年月日等が記載されています」

 そして、写真を指差して「これ私です」と軽く微笑んだ。

「「……………………」」

 二人は、目を見開き身体を硬直させた。

 大きなリアクションはないが、初めて見る物に心底驚いているようだ。

 義観も明心も手帳を見て暫らく黙ってしまっていたが、

「和尚、これはまたえらい影像ですね。――この方の言う後世から来たと言うのが事実なら、後世にはずいぶん腕の長けた絵師がいるのですね」

 ご本人そのままです。驚きましたね。と感心するように、うんうんと頷く明心。

「おい、明心は知らんのか? 私も此度が初見だがこれがホトガラというやつだろ?――尾張の慶勝公が熱心にホトガラの勉学をしておると聞いたことがあるのう」

「ホトガラ? そうなのですか? 私はよく存じ上げませんがこれを見る限り凄いもののようですね」などと、二人は手帳から目を離さず会話をしている。

「一九××年、これがお主の生まれ年になるのか?」

 明心の軽い口ぶりに落ち着きを取り戻したのだろう、義観は顔を上げると玲に言葉を向けた。

「はい。それで、こっちに記載されているのが私がいた時代の年です」

「うむ。――後世では皆、お主のような格好をしているのか?」

 信じてくれたのだろうか? それとも、ただ探っているだけなのだろうか?

 しかし、どちらにせよ効果はあったようで、義観が矢継ぎ早に次々と質問をしてくる。

「私は、学生で学校……、今の時代で言う寺子屋、藩校、私塾のような所に勉学をしに通っていて、その学校に通う者の装いなんです」

「そうか。――その装いもだが、この手帖にしても何でできてるのか、こんな立派な面も、中の上質な紙も見たことも触ったこともない」

 義観は、半ば関心したように言う。

「これは何でしょうか?」

 明心が興味深げにある物を見ている。

 何を指しているのかと玲も手帳に視線を向ける。するとそれは、ペンホルダーに収まったボールペンだった。

 玲は困ったように眉を下げ曖昧に微笑む。

「え〜と……それは筆記用具です。これで文字を書くんですよ」

 そして、口で説明するより実演を行った方が理解しやすいだろうと、ペンを取り出しメモ紙に【柳崎 玲】と自分の名前をスラスラと書いた。

 それを見た義観と明心が、再び目を見張って驚く。

「なんと! 墨も付けずに書けるとは!」と義観が、ボールペンをしげしげと見ながら言う。

「ええ。中にインクといって筆記に用いられる液体が入ってるんです」

「なるほどな。こりゃ便利だな」

「ええ、そうですね和尚。矢立やたてより持ち運びやすいし、すぐ書けますし」

 義観も明心も、初めて知るボールペンに素直に感動しているようだった。

(これで、未来から来たって証明できたかな?)

「……あの、私が未来から来たというのは、信じて頂けたんでしょうか?」

 義観は、手にしていた手帳を玲に返し腕を組んだ。

 明心は事の成り行きを見守るように様子を伺っている。

「その前に、聞きたい事が一つある……お主が後世から来たと言うなら、こちらの世に来る前の、お主の世での季節がいつだったのかが知りたい」

 なぜそんな事を聞くのだろうか? と不思議に思いながら玲が答える。

「春、でしたけど……」

 義観は小さく「なるほどな」と呟くと、法衣の袷から小さな白い包みを取り出し、包みを開いた。

 なんだろうと? と意味が分からず見ていると、その包みから出てきたのは、一輪の桜の花。

「これは、倒れたお主の髪に付いていた桜の花だ」

義観は更に言葉を続ける。

「それに此処はな、寺格高く、宮門跡寺院であり徳川家の菩提寺でもあるんだ。境内におったたみの者々は、毎夕見回りの者に門外へ追い出される。それが此処の決まりだ。

そして、黒門は翌朝まで固く閉ざす。夜番が厳重で内の者なら兎も角、外の者は夜間に境内へ立ち入ることなど、まず無理だろうな。特にお主のような目立つ格好の女子が、ここへ入ろうものなら忽ち捕まってしまう。そのお主が黒門が開く前に境内にいた」

 義観の言葉に、なるほど得心が行く、といった態で明心も頷く。


(……私、入れるはずのない時間帯に境内に倒れていたんだ……)


「この寺にお主が居ったこと、お主の装いに所持品、それにこの桜の花。

後世から来たなど、到底信じられん事ではあるが、信じないとなると、これらの説明ができん」

 みなまで言わずとも、この意味がお分かりかな? と義観が優しく玲に微笑みかける。

 その微笑みを見て、今度は玲が驚いて声を発した。

「えっ!? ……あの、信じてくれたんですか!?」

「ははっ、信じないほうがよいのかな?」

「いっいえ! そ、その何て言うか……あ、有難うございます」と目元を軽くほてらせながら頭を垂れお礼を述べる。

 ひとまず信じて貰えた事で、ほっと胸をなでおろす玲。しかし、それも束の間のことで。

「……和尚。でも、この方これからどうするのですか? 後世から来たとなると、身を寄せるところもないのでしょう?」

明心の言葉を聞いて改めて時を越えるということ、それはどういう事なのか、を自覚する。


(……そうか。私には、もう身寄りがないんだ。家族も友達も、もう誰もいない……。

 これからは、どんなに辛い事があっても自分でやっていかなきゃいけないんだ。

 ……でも、ここで生きていくっていう事はそういうことなんだね……)


 知人もなく頼る人もなく、それでもこれからは一人で生きていかなくてはいけない、という厳しい現実に気付く。


(……安政六年。っことは……幕末。

 どうしてまたそんな思想やら世の変動の激しい、荒れ狂ってる動乱期に。

 こんな格好して出歩いたりしたら、侍にバッサリメタメタにやられちゃうんじゃないの私?

 とりあえず、着物はすぐに手に入れた方がいいわね。その後は…、

 考えても仕方ない。どうなるかなんてわからない、こんな未知の世界じゃ)


 これから身をもって知っていくだろう動乱という世の中の秩序の乱れに不安を抱えながらも言葉を紡いだ。

「あの、大丈夫です。……ただ、一つだけお願いがあるんです。着物を……ボロボロでも、女物が無ければ男物でも、どんな物でも構わないのでどうしても着物が欲しいんです。お願いできませんか?」

 気丈に言ったつもりだったが、最後までは続かず語尾が震えてしまった。

 気持ちを強くと、気丈に振舞ったが、やはりダメージが大きいようだ。

 玲は滲んだ涙を見られないように俯き、嗚咽しそうになる吐息を堪える。

 奇しくも時を越え、これまで生きてきた世が突如として一変し自分の知らない世へ来たのだ。

 そればかりか身内とも離れ、頼れる者も誰ひとりと居なく身寄りがない。

 探せば祖先はいるだろうが、それでもこの世では他人も同然だろう。

 玲は、天涯孤独になってしまったのだ。辛くないわけがない。

 両手を膝の上でギュッと握り、細くて小さな肩を震わせながら、玲は声を殺して泣いていた。

 きつく閉じた瞼から零れ落ちた雫は、頬を伝うことなくぽたりぽたりと落ちてスカートに小さな染みを作りあげていた。

 そんな様子の玲を見て、義観と明心も玲の気持ちを汲み取るが如く黙り込んでしまう。

 今の玲の辛く悲しい立場は、想像に容易い。

 義観も明心も、静かに穏やかに、見守るような優しい瞳で玲を心配そうに見ている。

 しばらく経ち、玲の息も整ったころ、口火を切ったのは義観だった。

「不思議なものだ、長い時を越えてこうして私達が出会う。これまで教えを説き説かれ仏の道を歩んできた。

これもなにか、仏のお導きなのかもしれん。大乗の精神、すべてのものを救おうとする利他の慈悲心は不可欠なものだ。そう思わんか明心?」

 義観は、微笑みを浮かべながら視線を明心に移し、説くように言う。

「はい。私もそう思います。世のため人のため助け合い信頼しうる世の中とすることに、利己な心を忘れて尽くすことこそ、慈悲のきわみ。ですね」

「うむ、そうだ。径寸けんすん十枚是れ国宝に非ず 一隅いちぐうを照らすすなわち国宝なり」

 話しながら、満足そうに深く頷く義観。それを聞いていた明心も同様に深く頷いた。

 そして、明心は義観に視線を戻すと、

「ですが、どうするのですか?居所はこの離れで問題はないでしょうが……」

 と話しながら、二人の会話を聞いて呆然としている玲に視線を向ける。

「えっ? えっ!?」

 二人の会話は半分位しか理解できなかった玲だが、自分の今後が左右する会話だったことだけはわかった。

 玲は、我知らず勢い良く身を乗り出して義観に問う。

「あ、あのっ、もしかして私をこのお寺に置いてくれるのですか!?」

 そんな玲の勢いに少し驚き眉をあげた義観であったが、玲を安心させるように、ふわりと目尻にしわを寄せ穏やかに微笑んだ。

「そうだな。ずっと寺にという訳にはいかないが、身を寄せる所が見つかるまでは、当分ここへ居ればよい。身を寄せる所も追々私が探してあげよう」

 見る見る玲の黒目がちの大きな瞳に涙が浮かんでくる。

 これから自分はどうなってしまうのか、衣食住すべてにおいて何の確立も無く、ただただ真っ暗で一寸先も見えないほどに玲の前途は予測できないものであった。

 正直なところ、今の玲がこの時代で生きてゆく事は、落ちるとわかっている綱渡りをするようなものである。

 しかし義観により救いの手を差し伸べられ一筋の光が差した。

 今の玲がこの世で生きるためには、その義観の優しさにすがりつくしか方法はない。

 言うなれば、義観は玲の命の恩人という事になる。


(こんな過去の世界になんて来てしまって、正直独りでどうしようかと思ったけど助けてくれたのが義観さんでよかった。

 今は義観さんの言葉に甘えるしか出来ないけれども、まずは助けてくれた義観さんに迷惑掛けないよう私も私なりにこの時代に馴染めるように頑張ろう。)


 滲んだ視界の先には、義観と明心の微笑がぼやけて見えた。

 玲は、浮かしていた身体を元に戻し両手で三角形を作るように膝前につき、きれいな所作で深く頭を下げ丁寧にお辞儀をした。

「ありがとうございます。お言葉に甘えて、これから宜しくお願い致します」

 少しの間の後、ゆっくりと頭が上がる。

 するとそこには、大輪の花が咲くように優美で凛とした玲の微笑が。

 微笑みを目の辺りにし、明心は慌てふためいて空中に目線を泳がす。

 義観は、そんな明心に軽く苦笑する。

 洗練された立ち振る舞いに、端正な顔立ち、まだ幼さの残る柔らかい表情だが同時にその意志の強そうな漆黒の瞳に危うさを秘めた少女。人を惹きつけてしまうのも仕方がない。明心の反応も無理もないな、といった風に。



「それで、これからここで過ごすのに二、三言っておきたい事がある」

「はい、なんでしょうか?」

 玲は、なぜ明心がそのような反応をしているのかなど露ほども気にせず、涙を拭う手を止めて口を開く。

「うむ、まず、此処に居る間は勤めとして家政を、それと私の庶務についてもらう。これは、明心に教わればよい」

(家政って、炊事や洗濯ね。大丈夫、伊達に料理教室に通ってないもの)

 玲の祖父は、病院長と会社経営との二束の草鞋だった。

 といっても、会社を興したのは祖父であるが実際、会社の切り盛りをしていたのは祖母、その祖母も今は亡くなり父が会社を引き継いだ。

 年の離れた一番上の兄は父の秘書を、二番目の兄は大学を卒業し研修医。という、玲の一族は世間でいう上流階級の家柄であった。

 そのため玲自身も物心ついた頃から厳しく育てられて教養はもちろん身を守る為の総合護身術、中等部からは料理や華道・茶道と、その他にも細々と色んな習い事をさせられてきていた。

「はい、わかりました」

「それとだ、お主は私の遠縁の者とする。私が後ろ盾になれる。その方が此処で過ごしやすいだろう」

 いくら此処が寺とはいえ、この美貌だ。よからぬ事を考える者が居ないとも限らないだろう。

 仏の道を行く者としてはあっては成らぬ事だが、なかには邪まな輩もいる。

 そんな考えでの義観の配慮である。

「はい。では、僧侶のことはなんと呼べば?」

「ははは、そう畏まらんでよい。そうだな、身内のように呼んでも構わんが…弟子ではないが和尚でもよい。どちらにしてもお主の好むように呼んだらいい」

「では…、おじ上と呼ばさせて頂いてよろしいでしょうか?」

 ちょっと照れてしまいますね。と微笑みながら続けて言う玲に、義観も目を細めて微笑む。

 僧である義観には、勿論子供など存在しないが、その微笑みは、まるで自分の娘に向けているかのように温かな微笑み。

「うむ。では、最後にこれが一番大切なことだ。

 無闇に時を越えたと他言しないこと。いいか、それが知れ渡れば何があるかわからん」

(そうだね、この先の歴史を知っているんだもの、私が未来から来たとなれば抹殺されるか利用されるだけ。

 義観さんは、それが言いたいのかな? とにかく気をつけなくちゃ)

「はい、そうします」

 と、玲は神妙な面持ちで深く頷きながら返答をした。

 それを見届けた義観も頷き返し、一拍後、衣擦れの音をさせ立ち上がった。

「明心、玲に朝餉を出したら、おぬしは『いとう松坂屋』に行って着物何着かと必要な物一式揃えてきてくれ」

 明心は目線の高い義観の顔を見上げて、心得た、とばかりに「はい」と頷く。

「此処は、寺な上に大所帯の大寺院だ、慣れぬ事もあり難儀することもあろうが、何か困ったことがあれば私かこの明心に言えばいい」

 私はこれから勤めがあるから、また後で様子を見に来る。と義観は言い置いて部屋を出て行った。

 衣擦れと足音が遠ざかり、やがて静かになる。

「あの、明心さん? これから宜しくお願いします」

 微笑み軽く頭を下げる。

「はい。しかし、良かったですね」

 見つけたのが和尚じゃなかったら無事ではいられなった。と、だから良かった。と安心したような表情をして呟く。

「それでですね、当分はこの舎で過ごしてもらうことになると思います。

ここは墓地の近くなんですが、以前墓地を荒らす者がいたらしく、その見張りのためにこの舎を使っていたそうなんです」

 だが今は墓地荒らしも無く使っていない空き家だから遠慮は要らない。と続けざまに言った。

「何から何まで、ありがとうございます」

 玲は、恐縮しながら頭を下げた。

「生活に必要な物は、だいたい揃っていると思いますが何か不都合がありましたら言って下さい」

 では、朝餉を持ってきます。と障子を開け明心は部屋を後にした。











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