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9話 オーク戦後

オークを倒した俺は馬車の所に戻るとミツキを介抱する御者の姿がありミツキはかろうじて意識が残っていたが、

俺がオークを倒したと言って取っておいた牙を見せると驚いた後に安心したのか、眠ってしまった。



ミツキは18歳くらいだから同年代の俺ならセーフだよな?

そんな事を考えながらミツキを馬車の中に運び、馬が落ち着くのを待ってから発車した。


ミツキが寝ている間に何度も御者に感謝され、馬車の運賃まで返されてしまった。

その後暫く御者と会話していると、

俺の膝の上で寝かせていたミツキが目を覚ました。

膝の上という点には俺の趣味が入っているので深くは話さない。

目を覚ましたミツキはなんだかまだ少しだけ眠そうに話しかけてくる。


「あれ?ここは?」

「馬車だよ。今魔術都市に向かってる」

「え、どうして?」

「勉強しに」


少し的外れな答えをしてみる。


「あれ、オークは?」

「倒したよ」

「誰が?」

「俺が」


ミツキは少し呆けたまま質問していた。

馬車に揺られつつ窓から森の木漏れ日を浴びてなんだか俺まで眠くなってくる。


「嘘でしょ?」


今度は少し微笑みながら。

そこで俺は先ほどのオークの牙を見せる。


「ほんとに?あなたが倒したの?」

「そうだよ」

「どうやって?」

「魔法で」


俺はあえて泡ではなく水玉を魔法で作って浮かせる。

それをミツキはぼんやりと眺めながら質問する。


「オークを?」

「オークを」

「じゃあなんで護衛なんか雇ったの?」

「不安だったからね」

「オークも倒せるのに?」

「倒せちゃったね」


そこで話が途切れ二人ともふわふわと浮いている水玉を見ていた。

そして少ししてミツキが水玉を見ながら話しだした。


「私ね、女の子の仲間がいたんだ」

「ああ」

「こないだね、オークとの戦いで私がヘマしてその子が死んじゃったの」

「私ね、悔しくて悔しくて毎日泣いたんだ」

「うん」

「それである時ふと自殺してやろうと考えたの」

「けどそれがダメでね、どんなに死のうとしてもその子の顔が頭に浮かぶの」

「うん」

「その子は頭の中で私にいつものように微笑んでるだけなんだ。

けどその子の前で自殺なんかできなかった」

「うん」

「だからそんな地獄から出ようと思ってまた働き始めたの」

「そんな時に貴方の依頼を見て環境を変えられると思った」

「けどそこでオークと遭ってご覧の有様。

当たり前だよね、仲間を奪われてからただ泣いてただけなんだもん」

「そうだな」

「あれ、慰めてくれないんだ」


そこでミツキの視線が水玉から俺に移った。

ミツキと目が合う。


その時の彼女は触ったら砕けてしまいそうな、

見てるこっちまで哀しくさせる目をしていた。


「慰めてほしかったの?」

「てっきり慰めるのかと思った」

「俺は最初オークに殺されそうになった君を見て放っておいて逃げようと思った男だぞ?」

「最低なんだね」

「だろ?

けどさ、君の助けてって声が聞こえたんだ。

俺って弱いからさ、君を見捨てて逃げたら生き延びたとしてもきっと自分の罪悪感に絞め殺されると思うんだ」

「意外だね」

「折角死ぬならカッコつけて死にたいだろ?」

「バカなんだ?」

「そうかもね」

「私あなたみたいな人に助けてほしかったな」

「もう助けたじゃないか」

「…そうだったね」


そこで彼女との会話は終わり二人は揺れる馬車の中で眠りについた。





「お客さん、着きました」

御者に起こされ窓から外を見るとそこは人通りのある街並みだった。


着いたのか。

……ミツキを起こさなくては。


「ああ、護衛さんならもう出ていきましたよ」

「え、伝言とかも無しですか?」

「はい」


そっか。

まだ護衛料払ってないんだけどな…。

まぁ…いいか。


「えっと、学園ってどこにあるかわかりますか?」

「それならその道から大通りに出れば看板が出てると思いますよ」

「ありがとうございます」


そう言って馬車から荷物を持って降り、大通りへと出る。


そこは商人などの馬車がひっきりなしに通り続けていてそれを一目見るだけでこの町の規模が大きい事が分かる。


とりあえず看板…あ、あった。

学園は右か。


その後しばらく看板の案内通りに学園に向かうと大きな門と塀が見えてきた。


あれか…。

ちょっと緊張するな。


開いている大きな門を通り門のすぐ近くの受付に話しにいく。


「どういったご用件ですか?」

「えっと入学したいんですけど。推薦状も貰っています」

「はい、では学長室までご案内いたします」


すると受付から一人の男性が出てきて学長室まで案内を始めてくれた。


学園内はかなり広く、ここだけで小さな町ができそうなほどだった。

学長室に行く途中に何人かの生徒が魔法を使っている所を見てこっそりワクワクしていた。


学長室に着くと案内の人がノックだけして俺に扉を開けてくれた。


「失礼します。入学させて頂きたく、こちらにお邪魔させていただきました」


そこで前を見ると白髭をかなり蓄えた三角帽子を被ったローブ姿で杖を持った老人がいた。

想定外な程イメージ通りな魔法使いで一瞬自分の目を疑ってしまった。


「誰かの推薦を貰っとるのか?」

「は、はい。ガエタナさんの推薦状を持ってきました」

「ガエタナというと『空中歩行スカイウォーク』のか?」

「はい。そうです」


俺は推薦状を学長に渡すと、

学長は髭を触りながらそれを読み終え、こちらを見る。


「ではとりあえず編入試験を受けてもらう。

入学できるかは結果次第じゃ」

「え、あ、はい!」


推薦状だけじゃ入学できないのかよォ!


「では別室で試験を受けてこい」

「はい!」


俺は流されるままに部屋から出るとさっきの案内の人が立っていてまたしても案内してくれた。


試験の部屋に入ると男性が一人いた。


「君が新しい子だね?

机の上に紙を置いといたからそれ解き終わったら教えて」


それだけ言うと男性は教卓で本を読み始めた。

なんというか、小慣れてんなぁ。


試験はこの世界での歴史と地理、あと数学と魔法学についての問題だった。

結果は言うまでもなくズタボロで数学だけがまともな点数だと思う。


書いた紙を男性に渡すと、


「じゃあ次は体力検査と魔法実技の試験だからそこの案内の人についてって」


と言われてまたしても案内についていき今度は生徒達が授業をしているグラウンドに出ていき隅の方で案内の人に試験監督を教えてもらい、その人の元に向かう。


「はい、では体力検査を行います」


試験内容は短距離走や垂直跳びだったり元の世界でもやるような基礎的なものを測った。

ここで俺自身発見があり、異世界に来てから身体能力が軒並み上がっていた。

じゃなかったらきっとオークからも逃げられなかっただろうな。

もしかすると神様が俺の体を改造してくれたのかもしれないぞ。


「では続いて魔法実技です。

この魔法結晶にあなたの魔力を注ぎ込めるだけ注ぎ込んでください」


するといつのまにか試験監督は手にバスケットボール程の魔力結晶を持っている。

オークの結晶が卵くらいの大きさだったのでいかにそれが大きいか俺でもわかる。

なるほど、これで魔力量を調べるわけか。


俺はその大きな魔力結晶に手を当てて全身の魔力をまるで雑巾を絞るように思いっきり注いだ。


「それで全部ですか?」

「もうスッカラカンです」


俺がそう答えると試験監督は怪訝そうな顔をしてこちらをジトっと見た。


「……はい。わかりました」


え、ひょっとして少なかった?

俺って才能ないタイプなの?


「じゃあもう魔力戻していいですよ」

「はい?」

「魔力結晶から魔力取ってもらっていいですよ」

「あ、はい」


魔力の戻し方なんかわからんがこれ以上心象を悪くする訳にもいかないので勘を頼りに魔力結晶からスポイトで水を取るイメージで指先を結晶につけて魔力を抜き取ってみる。


おお、なんか入ってくるのがわかるぞ。

今度は手のひらをつけてそこから水が流れ出てくるイメージで。


うわ、かなりの勢いだ。

なんか体に異物が入ってくる様で気持ちが悪くなってくる。

ヤバイ、吐きそうだ。

手のひら全体からじゃなくて出てくる範囲を絞って蛇口の様にしよう。


まぁ、これくらいが丁度いいんじゃないかな 。


俺が一通り魔力を体に戻すと試験監督が口を開いた。


「次の試験はなんでもいいから魔法を見せて下さい。

的なら今作るから」


俺の少し前に土のサンドバッグのようなものが出てくる。


なるほど、これに魔法を撃つ訳か。

さて、どうしたものか。

テンプレならここでドカンとやってエリートコースだよな。

よし、ここは先人達に倣って俺も一発やるか!

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