4話 魔法講座開講
彼らとは町まで色々な話をしながら向かった。
この班唯一の女性の助手さんからはこの辺りの町での最低限のマナーだったり通貨についても教えてもらい、
メガネの優しげな学者さんとは国の事や上司の愚痴なんかを話され、少し仲良くなった。
ガイド兼護衛の無口なマッチョさんからはキャンプの仕方だったり森の歩き方や動物の血抜きの仕方なんかを教えてくれた。
魔法に関しては途中何度か狩りなんかで使っていて、その度に俺の心を奪い、是非指南を受けようと道中で思い切って魔法について訊いてみた。
「あの、魔法について教えて欲しいんですけど」俺は期待を胸いっぱいに訊いてみた。
「そっか、魔法についてもしらないのね。スライムに殺されかけたって聞いて常識ないんだって思ってたけど」と助手さんが答える
「はい、恐縮です。是非使い方を教えて下さい!」
「いいよ。魔法が使えないと生活に困るでしょ」
そうして助手さん先生による魔法講座が始まった。
「まず、魔法っていうのはね、体内の魔力や大気中の魔力を変化させたり活性化することなの」
「地面を盛り上げて動物を抑え込むみたいなことですよね?」
この辺りは事前に見ている。
「ええ。で、魔法でもっとも重要なのはイメージよ。
イメージだけなら誰でもできるのだけれど、難しいのはそのイメージを形造ること。
妄想ならいくらでもできるけど絵を描きだすと急に描けなくなるみたいなことよ」
なるほど。まぁ絵を描く事は苦手ではないな。
「魔法はイメージでどんな形か決まって、その後のコントロールは魔力の操作力がモノを言うわ。
例えば土の模型なんか作るのはイメージ力。
その後にそれが物理的に崩れない形だったら魔力操作は必要ないけど崩れる形を崩さないようにするのは魔力操作が必要よ」
「ほうほう」
「じゃあ実際にやってみましょうか」
「え!もうですか!?」
先生!流石に無茶じゃないですか!?
「ずっと口頭で教えるよりも体験した方が上達するわよ。
じゃあとりあえず手のひらに何か適当なものを作ってみて」
「は、はい!」
そう言って俺は手のひらになんとなく力を込める。小学校の頃にかめはめ波を撃つ練習をするように。
「あの、魔力がちっとも動いてないんだけど」
なに!?
「動いてないんですか!?結構頑張ってますよ!?」
「うーん、本当に魔力操作もできないんだ。
えっと…どうしようか。どうやって教えればいいのかわからないわ」
「しょうがないなぁ。手伝ってあげるよ」
と学者さんが新たな先生となって助け舟をだす。
「魔力操作ができないんでしょ?じゃあこっちから強引に魔力を動かして感覚をつかんでもらえばいいんだよ」
学者先生が俺の両手を握る。
すると体内に若干違和感が出てくる。
「どう?なんか変な感じある?」
「……はい。体の中の何かが勝手に動いているような、
なんか水たまりの水がかき回されてるみたいです」
「そうそれ。今度はそれを自分で動かしてみて」
そう言って学者先生は手を離した。
すると体内の違和感の動きはだんだんと静かになってきている。
早いうちに動かさないとまた分かんなくなっちゃうな。
俺は違和感のする辺りにあれこれ力を込めてみる。
「違う違う。筋肉に力を入れるんじゃない。
魔力は身体で動かすものじゃないんだよ。意識で動かすんだ」
そうか、考えてみればそうだよな。
今度は違和感の動きが強くなっていく様子を頭の中で描き出す。
すると本当に強くなってくる。
「おお!これか!これが魔力なのか!」
「お!できたみたいだね。じゃあ今度はそれを手のひらの上に出してごらん。
けど魔力はそれだけでは見えないからなにか物をイメージするんだ」
イメージか、なんだろう。何を出そう。この魔力が手の平から出るイメージ。まぁ、あれかな。
「おお!スゲェ!」
俺の手からは水が垂れ出ている。
「おお!すごい!それが魔法さ!」
「遂に俺にも魔法が!やっぱりこの世は素晴らしいな!」
異世界バンザイ!先生バンザイ!
「よし、いいね!じゃあ基礎ができた所で実用編だ!
その垂れ出ている水を浮かせてみるんだ。」
「え、どうやって?」
「その水も魔力と同じように動かすんだ」
「わかりました!やってみせます!」
すると重力に従っていた水が途端に空中に浮かび始めた。
「すごい!流石だね!」
「いやぁ、やっぱり俺って才能あるのかな」
「普通はここまでできるようになるのは7歳児くらいだから魔力操作を始めてすぐにここまでできるのはかなり上達が早いんじゃないかな」
そう言われている間にも俺は手のひらから出続ける水を玉にして手の周りに回している。
「いやぁ、きみ器用だねぇ!」
「あっはっは!」
俺は笑いながら手の平から出てくる魔力を水から今度はドライヤーのように風を出したりライターのように火を出したりして遊んでみた。
「どうです!?凄くないですか!?」
「いよぉ〜し。そんなに魔法で喜ばれると僕も魔法のすごい所を見せたくなっちゃうじゃないか。じゃあ一発いくよ、『超跳躍』」
学者先生はまるで母親に自慢する子どものような純粋な笑顔でそういうと彼の周りに空気が集まっていき先生は空にぶっ飛んだ。
「ええ!?」
んなバカな!
「あれ凄いでしょ?あれであの人は博士号を貰ったのよ。」と助手先生まで自慢気に言う。
「え、でもあれ落ちたら死ぬんじゃ…」
そう言っていると学者先生は上昇を終えた。が、落ち始めない。
先生は空中に少し留まるとまるですべり台を降りるような姿勢と軌道で落ちてきた。
そして俺の少し前で止まった。
そして仰向けの馬鹿みたいな姿勢から立ち上がる。
彼は立っているのだ。空中に。
「え、ええ?な、何もないよなぁ」と言いながら俺は彼と地面の間を手で確認するが何もない。
しかし彼の足の下に何かがあった。
「それは板だよ。僕はそれを作って立っているんだよ」
「ほぉほぉ」
そんなチープな発想なのか…。俺にも案外できるんじゃないか?
早速俺はジャンプして足元に透明な板をイメージする。
しかし板は現れず草の上に降りる。
ただジャンプしただけじゃないか。
「あの、これできそうな感覚がまるで無いんですけど」
「そんな簡単にできたら僕が困るよ。これの研究で何度も死にかけたんだからさ」と先生は笑う。
「失敗したら死んでもおかしくないですもんね。
あ、それとなんで飛ぶ前に技名みたいなの言ったんですか?
ひょっとしてカッコつけたんですか?」
と俺はからかうように言った。
「あれは誰でも言うよ。言った方がイメージしやすくて技が成功しやすくなるんだよね。
ちなみに空に立ったりするのは『空中歩行』って名前なんだ。
まぁ、カッコつけたのは否定しないけどね」と先生はおどけてみせた。
あんなの見せられたら嫌でも先生がかっこよく見えるじゃないか。くっそ、憧れるなコンチクショー。
「よっしゃ!俺も先生達にカッコいい所見せてみせますよ!」
「お、いいねぇ!そういう上昇志向は僕大好きだよ!」と学者先生はノリノリだ。
「男子って本当バカよねぇ」と助手先生も案外楽しそうだ。
「ふぅ…。いきますよ」
俺は誰もいない方に体を向けると右手に拳を作る。そして右拳にありったけの魔力を集中させる。
「『ジャジャン拳』」
このお話はプロットもクソもない行き当たりバッタリで書いてるので1話書くにも時間がかかってしまいますね笑
というかパロディってどこまで許されるんですかね。
今までの細かい所を変更しました。話の本筋にはとくに支障はないです。
改稿が多くて本当にすいません。