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1話 ある日の公園

それはある日の気まぐれが原因だった。





朝。目覚ましを止め、ぬくぬくとしたベッドの中で伸びをする。


……あ、足つった。


ふくらはぎの違和感を感じながらリビングへの階段を降りていく。

テーブルの上の菓子パン類からメロンパンを選んでソファに座り食べ始める。


今日の体育ってなんだっけ…

バスケのシュートのテストだわ。

はぁ、かったるいな…


鉄腕アトムのように飛び出た寝癖を直し、歯を磨き、制服の長袖に腕を通し、玄関で自転車の鍵を取って家を出る。


制服の内ポケットに入れてある携帯から伸びたイヤホンでサンボマスターの青春狂騒曲を聴きながらペダルを漕いで都心の住宅街を抜け、学校へと向かう。


校門に立っている生徒指導の先生に挨拶をして学校の敷地内に入っていく。

自転車を駐輪場の2年生のエリアの空いてる所へ置いて教室へ向かう。


203の掛け札のついている教室に入り、荷物を置くと先に教室にいた友達がいつものように声をかけてきた。


「おはよう」

「おはよう」

「昨日のゴッドタンみた?」

「あぁ、見た見た。あのそっくりさん奴だろ?」

「そうそう、似すぎてて企画趣旨変わってたよな」


そうやって友達と他愛ない話をしているとやがてSTが始まり、すぐに授業が始まった。


昼放課では今朝会話した友達と飯を食べながら廊下で他クラスの男子のバカな行動を見て他人の青春を感じた。


放課後になると特に部活もしていない俺は今朝話した友達と一緒に帰る。


その友達とも分かれ道で別れ、家に帰ってyoutubeで水溜りボンドでも見ようかなと思ってペダルを漕いでいると近くの公園から甲高い声が聞こえてきた。


興味本位で自転車に乗りながらその公園を見てみると幼稚園児くらいの子供が三人いた。どうやら砂場で男の子と女の子が口喧嘩しているようだ。

親がいないな…。

トイレか?

放っとこうかな。

いや、流石にそれはマズイんじゃないか…?


俺が迷っている間にも口喧嘩はヒートアップしていき、遂に男の子が女の子の肩を押した。


こりゃいかん。


俺は自転車を降りてその子たちの所へできる限り怖がらせないように膝を曲げて視線を低くして声をかけた。


「ねぇ、どうしたの?」とおれはなるべくやさしく声をかける。

「ぼく悪くないもん!」男の子が突然言う。

「違うよ!たっくんが悪いんだよ!」と女の子が男の子を咎めるように俺に言う。

「悪くないって言ってんだろ!」


そう言って男の子がもう一度女の子の肩を押した。


「ねぇ、なにがあったの?」もう一度訊く。


そう言うと女の子が彼を裁いて!とばかりに口早に話してきた。


「あのね、たっくんとおままごとしてたらね、たっくんがつまんないって言ってやめちゃったの!

それでね、じゃあなにするの?って聞いたら決めてないって言うんだよ!

だったらおままごとしようよって言ってもね、嫌!って言って私をぶったんだよ!」

「ぶってないもん!押しただけだもん!」男の子が釈明する。


なるほど、これが子供の喧嘩か。

一体どうやってこれを丸くおさめるんだ?


「ねぇ、おままごとじゃない遊びだったらいいんでしょ?

だったらさ、砂に絵を描いてさ、絵しりとりしたら?」

「いいね!」


と女の子が言う。

そして俺は男の子に話をふる。


「たっくんは?絵しりとりでいい?」

「それでいいよ!」


思いのほか上から目線だな。

しかしたっくんよ、お前にはまだすることがある!


「ねぇたっくん、この子になにか言うことあるんじゃないの?」と女の子を指して男の子に訊ねる。

「ちーちゃん、ごめんなさい」

「いいよ」


そう言って男の子は女の子に幼児特有の間の抜けた定型文で謝り、女の子もまた定型文で返す。


「じゃあお兄ちゃんも絵描いていい?」

「「いいよ」」


そうして三人で遊んでいると、女性が一人こっちにきて一緒に遊んでくれてありがとうございますと言って二人を連れて帰っていった。


「お兄ちゃんじゃあね!」「また遊ぼうねー!」子供達が手を振りながら俺に大声で言う

「おうよ!じゃあな!」


そうして割とあっけなく二人と別れ、久々にちょっといい事をした達成感のまま置きっ放しの自転車で帰ろうとして、あるものが目に入った。

ブランコに座った中性的な子供だった。

そうだ、この公園を最初にのぞいた時は子供はたしか三人だった。

ずっと一人であそこにいたのか?

この子の親はどこいったんだろうか。

しょうがない、親がくるまで遊んでやるか。


子供達と遊んだテンション冷めやらぬまま俺はその子供に話しかけた。


「ねぇ、君はどうして一人で遊んでいるの?」と俺は視線を低くしながら笑顔で訊く。

「特にこれといった理由はないね」子供は大人びた様子で答える。


あら、意外にもしっかりした回答。

子供にもいろいろいるものだなぁ。


「よかったらお兄ちゃんと一緒に遊ばない?」

「いいよ」


「なにして遊ぶ?」

「うーん、そうだなぁお兄ちゃんはおままごと嫌い?」

「いや、嫌いじゃないよ」


「じゃあ冒険とかは?」

「好きではないなぁ。怪我したら危ないし。」


「魔法なんかは嫌い?」

「いや、好きだよ。これでも漫画なんかはよく読むんだよ?」


「おお!お兄ちゃんやるねぇ。じゃあさ、異世界なんかどう?」

「そこそこ好きだよ〜?

じゃあお兄ちゃんと異世界冒険ごっこなんかしちゃう?」


そこでその子供の目が変わった気がした。だが、あくまでも気がしただけで実際には何一つかわっていない。


「いや、僕は見てるだけでいいかな」その子はとても冷たくそう答えたように聞こえた。


「え」


その子は冷たい調子のまま続ける。


「ねぇ、お兄ちゃんってさ、ぶっちゃけ普段の生活楽しくないでしょ。今がたまたま非日常で、いい事をしようとして、それがたまたま成功したから、今だけ楽しいんでしょ?」

「え、いや、そんな事はないと思うよ?」


なんでこの子はこんなにも上から目線なんだ。


「僕ね、こうみえて神様の子供なんだよ。それでね、神様の仕事ってその担当する世界によってかなり変わるんだけどさ、基本は傍観するのが仕事なのさ。まるで映画を観にきた客のようにね」


「………うーんと…」


これは俗にいう会話のドッジボールだな?

こういう痛い子供ってどう対処すべきなんだろうか。些か俺の手に余るんだが。


「けど見ることしかできないんなら観測者って名前の方がしっくりくるでしょ?神様はね、みんなの思っている通りなんでもできるんだよ。なんでもできるけれど何もしないのが神様なんだ」


「わーすごーい」痛い子の話は終わるまで相槌をうちながら聞き流すのが得策だろう。


「残念。その扱いは不正解だよ。だって今のちょっとイラッとしたからさ」と子供は微塵も態度に見せずそう言った。


そう言われると視界の端で黒い影が動いた。そちらに視線を動かした。影だった。文字通りの影。俺の影が一人でに動き出して公園から出ていってしまった。その影はまるで楽しそうに遊びにいく子供のように軽やかな足取りだった。


「もう一度言うよ、神様はね、なんでもできるんだよ」


え、いま、なにがおこったんだ。

俺の、影が、どっか行った。


「え?なんだよあれ。ドラえもんのひみつ道具かよ」と俺は若干投げやりにつっこんでみる。

「いやぁ、いい反応だね。ドラえもんか。やっぱりただ見てるよりも実際に人と話した方が楽しいじゃないか」とその子は初めて子供らしく笑った。


少し、不気味だった。


「え、本当に神様なん、ですか?」

「性格には神様の子供だけど広義的にはそうだよ」

「なんで神様がこんなところに?」


まだ半信半疑だが、質問せずにはいられない。


「この世界でのこの国の娯楽文化が他と比べてかなり僕の好みだったからさ、見てるだけじゃなくて体験したくなってさ」

「じゃあどうしてわざわざ俺に声かけたんですか?」


それを聴いてそいつは軽く笑って言った。


「先に声をかけたのはきみじゃないか。いやぁ、神様って基本見てるだけだからさ、君達に声をかけるって発想が思いつかなかったんだよね」

「じゃあさっきの子達は声をかけなかったんですか?」

「そういえばかけてこなかったなぁ。ブランコに座ってただ見てるだけの子供が不気味だったんじゃないかな」


なるほど、確かに不気味だ。

俺もあの子達の相手をした後でテンションがあがっていなかったら声をかけていなかっただろう。


「ねぇ、もう一度言うよ?君さ、日常を楽しんでないでしょ」

「え、うーん、どうなんでしょうね。別段学校でいじめられてるわけでもないし」


普通に学校に行って普通に友達もいるし、特に不満もない。


「じゃあ質問を変えるよ。二次元のような異世界で暮らして楽しんでみたいと思わないかい?」

「え!そんな、いいんですか!?」


なんてこった。とんでもねぇ事態だ。


「このまま高校を卒業してどっかの会社に入って仕事三昧とは全く違う世界に、

文字通り異世界に行けるチャンスだよ」

「おお!楽しそうですね!

あ、でもこっちに残した親とか友達はどうなるんですか?」


ここら辺は実際どうなるんだろうか。


「うーん、そこらへんは決めてないんだよね」

「あ!じゃあ向こうで死んだらこっちの世界のこの時間からってのはどうですか!?」

「いや、それだとこの世界を見てる神様がすぐに飽きて僕が怒られちゃうじゃんか」


そうか、いくら神様でも無理なものはあるのか。


「あぁ、じゃあどうしましょうね」

「まぁ、それは向こうについてからでもいくらでも決められるよ。なんせ僕神様だからね」


「ですね!行っちゃいましょう異世界!やっちゃいましょう異世界ライフ!」


こうして俺は異世界に転移した。

皆さん初めまして。納豆カレーと申します。この度は感情に任せて書き始めたのでプロットなんかはないですしこの先の展開もこれといって決めてないんですよね笑

ちなみに異世界ものにしてみたのは単に書いてみたかったからです笑

それとこの1話ではなんとしても主人公に自主的に異世界に行きたいと言わせたかったんです。

何かと改稿が多くなってしまい申し訳ないです。

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