72話 おまけ
白い道から出てきたら、行方不明だった女の人たちが目覚めていた。
1週間くらいお祭り騒ぎだった。
あれから5年。
クロマは見た目通りの年になり、少しだけ大きくなった。
私も立派なレディになってユヌカスと籍を入れたのが2年前。
子どもをたくさん作ることが、ザンダイへの復讐になっていたと知った王が、身寄りの無い女性を囲うことに決め、今では立派な子沢山だ。
いや、前からか?
「おお、嬢、久しぶりじゃわん」
向こうからやって来たのはシェーキだ。懐かし〜い。
私達が今日来ているのは泉。お母さんの泉なの。
「そ、それにしても、すごい主人を連れて来たな。嬢の気配がしなかったら、近づけなかったじゃ」
クロマは羽があるのに泳ぎも上手。で、何故だか海の主らしい。
「私の子なんだよ。シェーキ、クロマをよろしくね」
言うとシェーキが引きつった。
「やはりお主の子も規格外になったか」
「そんな言い方されると、私が規格外みたいじゃん」
「……気づいておらんのか」
なんかひどくない?
お母さんにクロマを会わせたいな、って思って来ただけなんだけどな。
今日はお母さんに会える気がするのだ。
クロマが入れなかったので水鏡の中には入らず、虹色の空間を泳いで待っている。
と、水鏡のある方が薄っすらと発光した。
来たかも!
「あ〜、楽しかった!」
出て来たのは前の人魚母さんとは違う、セクシー系のマダムだ。
でも左手にあの痣があるから間違いないよね。
「お母さん!」
「海?」
やっぱりお母さんだった。
「あれ?アレスは?」
一緒に連れて来るもんだとばかり思ってたよ。
「アレスは森にサバイバル訓練に行って、1週間くらい帰ってこないわよ。だから、1度こっちに来たの」
そうなんだ。
……ってか、サバイバル訓練ってなんだ。
「もう少ししたら、アレスも1人立ちできるようになるし、私も1回帰らないとね。海はどうする?」
お母さんの帰らないといけない場所ってどこだろう。
と、クロマが私の手をぎゅっと握った。
不安にさせちゃったかな?
「私はここに残るよ。お母さん、この子クロマっていうの。私の子」
クロマが私の後ろに隠れて、恥ずかしそうにしている。
「クロマ、この人ママのお母さんだよ」
抱き上げてよろしくしようとしたら、慌てたのはお母さんだった。
「ちょっと、海!そういうことはもっと早く言ってよね!クロマちゃん、ちょっと待ってて!」
ぷよぷよの水鏡部屋に入ったお母さん、人魚になって帰ってきた。
「よろしく、クロマちゃん」
いや、なんの説明もないから、クロマの表情が能面になったし。
もう、いいか。
泉の水面に向かって光の合図を送ると、彼が降りてきた。
お母さんはまだ気がつかない。
お母さんも、ちょっとはラブラブするといいよ。
私からのプレゼントだ。
泉の中を砂煙が充満するほど、仲良く追いかけっこしている2人を見ていたら、なんだか私もユヌカスに逢いたくなった。
「パパのとこ行く?」
クロマに言うと満面の笑みだ。
かわゆい。
アレスの修行が終わったら、一緒に会いに行こうね。




