7話 お風呂に入れない
なんか最近ユヌカスが毎日来る。
「俺に惚れさせてから振ってやる」
とか言ってる。
マリン可哀想。あんなにユヌカスに尽くしてるのにね。
「どうだ、かっこいいだろ?最新のファッションだ」
って見せてくるけど、どう見てもレオタード。
「お、おステキですわ」
とか、マリン顔真っ赤にしてるけど、共感できん。
柱の陰から父様が
「今の流行りなのか? 今度アンフルに見せねば」
って言ってるから思わず応えちゃったよ。
「こんなキモい格好してたら、離婚されちゃうよ」
ってね。
ユヌカス、白目になって水に浮いてるけど大丈夫かな?
「覚えておきなさい〜〜、キーっ」
捨て台詞みたいのはいて、マリンまた担いで行っちゃった。
騒がしいなあ。
さて、今日も外でお宝探ししようかな。
こっちのゴミ事情は雑らしく、水路の端にいろんな物が捨ててあるの。
それが原因で水質も悪くなっている気がするし、お掃除しながらお宝ゲットするんだ!
この間、町の工房にテッチャン玉を持って行ったら5カーネもらえたの。
帰りに塩焼きのお魚棒買って食べたらおいしかった~。
あ、あれは割れた盾だね。
分解、分解っと。
チカン玉3個とアルカンミーネ玉2個になったよ。
……チカン玉は早く売り払おう。なんかヤダ。
ん? ミスリル、だって。高く売れそう!
んっしょ、んっしょ。岸に上がって工房を探す。
あった、あった。『モノクリツ工房』
「おじさ~ん、金属玉拾ってきたよ。買ってください」
工房の奥から、ガタイのいいひげもじゃさんが出てきた。
「この間の嬢ちゃんか。今度はどんなのだ?」
手のひらにチカン玉3個出す。
「ん、これはチカンだな」
30カーネもらっちゃった。
「この間持ってきたテッチャンの質が思いの外よかったからな」
ってことは、普通より高く買い取ってくれたのかな。むふふ。
「じゃあ、これはいくらになりますか?」
ミスリル玉1個出してみる。
「どれどれ」
クルクル回して見ていたおじさん、なんか目が血走ってきた。
「どどど」
ドリルのまねかな。
「ドドド」
音階かな。
「レレレ?」
「ドウシタンタ!」
な〜んだ、国名だったみたい。
「コレはドウシタンダイ?」
違ったみたい。
「拾ったんだよ」
落ちてたんだもん。間違いないよね。
「か、換金できるお金がないのですが、キープさせてください」
おお、やっぱり高いんだ~。
「いいよ~。っていうか、そのお金分で作ってほしいものがあります」
「なんだい?」
「ん~とね、このくらいの大きさのお湯を溜めるやつ。お風呂!」
プールみたいな感じで生活してるけど、お風呂に入りたい。
「お父さん用かい?」
「ん~ん。私の」
だから小さくてもいいんだよ。
「やめといた方がいいんじゃないかな」
なして?
「まだ嬢ちゃんは洗礼石をもらってないだろ?」
うんうん。
「なのに40ドシのお湯に浸かったら、煮えてしまうぞ」
が~ん。
40ドシで煮えてしまう私……え、お魚的な?
私、お魚科なの? 人科じゃないの?
「じょ、嬢ちゃん他になにか好きな物とかないのか?」
「くだもの……」
目を見開いてボーゼンとしてたら、おじちゃんがたくさんの果物を持たせてくれた。
「嬢ちゃん、来年になったらまたおいで。その時作ってあげるからな」
ってか、んま。これ、んま。メロンじゃん!
手のひらサイズの種を空間に入れておく。
後で庭に植えようっと。
へえ、この果物の名前、ロマンっていうんだ。へえ。