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57話 隠し扉

黒人間達がやっと完治した。

もう2ヶ月も感染者が出てないから、完治でいいと思う。1年以上もかかるとは思っていなかったね。


完治した黒人間達は、街の防犯に積極的に取り組んでくれている。

「もう、俺達のような夫婦は出したくありませんからね」

なんか泣ける。



おかしいな、と気がついたのはいつだろうか。


お城や神殿、大通りの時はそれが普通だったからわからなかった。

でも、こうして他の場所に設置してみると、やっぱりあの場所はおかしかったよね、と思う。


ここは兵士達の詰所で、日に何人かやってくる。

そして常駐する看護の先生が1人。

電灯を設置すると1分程で薄く光り、点滅をはじめ、またそれからしばらくして点灯する。


こうして何ヶ所も設置していると、常駐している人がいないのに、あの場所の電気がすぐについたことに違和感が拭えないのだ。


でも、国の重要な施設だから、2人の協力なしに勝手に行く事すらできない。

「ユヌカス、私、もう1度姫君の剣が見たいんだけど」

行きたいな、アピールだ。

「父上なら子どもの遊びだと思ってくれそうだけどな」

「問題はジジイ達だよな」

前回私達が第3宝物庫に入ったことを、あとからネチネチ言われたらしい。王様からは許可を得ていたんだよね?


結局、ジジイこと、ザンダイ宰相が付いてくることで許可を得た。

ザンダイはこの国には珍しい年相応に老けた人だ。

つまり還暦が過ぎて時間が経っているってことだよね。

「王子様方もそろそろ国の仕事に従事され、このように遊び歩くのは控えて欲しいですな」

私とクロマは下から上まで舐めるように見られて居心地が悪い。

まあ、確かに私のワガママなので我慢はするが、この眉毛め。


「ママ、あの人、嘘たくさんね」

私に抱っこされているクロマが耳元で囁く。

「嘘?」

「うん。真っ黒」

クロマにはそう見えるらしい。

けどまあ、国の重要な位置にいる人が清廉潔白でいい人過ぎて騙されやすいとか、そっちの方が困るんだろうね。

国が豊かで、問題なく回っているのならば、悪い人も必要だとは思うんだよ。人として絶対ダメなことさえしなければさ。


ギギッと扉があき、電気をつける。

あの時と同じように、姫君の剣が輝いている。

さて、気になる場所はそこではないのだけど、どうやっていじろうか。

眉毛じいさんが邪魔だなあ。


「ママ!」

クロマが私の手を離れ走り出した。滅多に見ないクロマのはしゃいだ笑顔。と、ガチャンとぶつかって転んだ。

「クロマ!大丈夫?」

私はすぐに走り寄る。けど、私より早くクロマを抱き上げるとか、イツクィンの思い入れようは相当だ。

気持ち悪い。


「これだから子どもは困るのです。ここがどれほど重要な場所かわかっていない」

わざとらしく大きなため息をついた眉毛が、クロマを部屋から追い出そうと歩み寄った。


でも、見つけてしまった。


クロマがワケもなく、はしゃいだフリなどするわけがないのだから。

クロマが転んで倒した模擬刀の下。扉がある。一見、扉には見えない飾りのような扉。


放り出された模擬刀を払いよけ、隠し扉に私が手をかけると、ザンダイが私の手を抑えつけた。

女の子にそんなことする?っていう強さで手が痺れる。


と同時に背中に激しく緊張が走った。

この人は魔力持ちだ。

……この国で?


いや、今はそれじゃない。

私はザンダイの力を分散させると、一気に扉を開いた。

後ろからハッとした驚きの声がする。


こんなところにいた。

みんなの奥さん。

床の扉の下。階段を降りたところにたくさんの女の人達がいる。

誰も動かないけど生きているのだろうか。

けど、1年以上経っても白骨化していない。キレイなまま眠ったように全員が仰向けに並べられている。


呆然と座り混んでいる私を押し退けて、後ろに控えていた黒人間達が下に降りていく。

自分の奥さんを見つけた人が抱き上げて、声もなく泣いている。

「姫様、姫様、生きています。妻が、まだ」


ああ、よかった。

身体中の力が抜けて起き上がれない。長かったね。よく頑張ったよ、黒人間きみたち


「さすが姫様とザンダイ様です。2人して扉に気がつかれたのですね」

黒人間の1人が膝をついてお礼を述べた。

「あ、ああ」

ザンダイはスッと立ち上がると、中の人達を外に運び出すように指示を出し始めた。



あの人の嘘ってなんだろうか。



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