表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/73

50話 金の種

もう!こんなことしても終わらないよ!

かれこれ3ヶ月は経ったと思う。

次から次へと湧く黒人間ゾンビ。魔法陣を消したって、しばらくしたらまた魔法陣が現れる。


「こんなに探しても見つからないということは、もう死んでいるのではないかと思うことがあります」

ダシトルは、この治療を受けるのが今回で12回目だ。1回の治療でおよそ5日〜10日もつ感じかな。


「俺達は結婚して15年になりますが、子宝に恵まれませんで。お互いだけが大切な家族なのです。このままあいつが帰ってこないのなら、もういっそのこと、と……」

表情が死んでしまった。

え、てかダシトル、何歳なの?

ユヌカスより少し上かな、って思ってたんだけど……。

新婚さんではなかったか、むむ。


それにしても、生きる活力のなくなったダシトルは、魔方陣の出現速度が早まっているようだし、黒色の気配も濃くなっている。

このままではいけないよね。


つまるところ、魔方陣の解明も必要だけど、行方不明者の捜索が一番解決として有効そうだ、と思っている。


そんなことを感じながらダシトルをジーと見つめていると、胸の真ん中あたり、主張する何かがあるのに気がついた。

なんだろ。う〜ん。

身体の中だから見えなくてわからない。けど、何かある。

気になる。


魔方陣を丁寧に消していきながら、ダシトルの体内をくまなく探る。

魔方陣は全身に広がっているけど、主張してるのは胸のところだけみたい。


よし、やっぱり気になるわ!気になるもんは気になるわ!

ズボッと手を差し込んだ。体内をサワサワ、と。

ないなあ〜。


「何やってるんすか!」

兵士の1人がギョッとして、思わず叫んでしまったとばかりに口元を手で押さえた。


「ダシトルさんの胸に手を突っ込んで心臓を握っているようにしか見えませんから、別に貴方の反応は間違っていませんよ」

リズが慰める。

「いくらダシトルさんが生きることに絶望を感じていたとしても、姫様。それはあんまりですわ」

ん?

私は手元を見た。


確かに私の右手が人の身体を突き抜けてる。

……ホラーだ。


ってか、違うの!違うのよ!

そういうつもりではなくて、何かあると思って気になっただけなの!

おおう。一言何か言ってからやるべきだったか。

後悔とは後から悔いるもの、か。昔の人はうまいこと言うな。ふふふ。

心の闇を隠して振り向く。


「これも治療の一環ですのよ、ホホホ」

なるべく優しい巫女様風に見えるように微笑みながら右手を引き抜く。

ズボッとな。


兵士とリズが引いた。

なぜだ。美少女の天使の笑みを付けたのに。


と、ガーディアが何かに気がついた。

「姫様、その手にしているものは何ですか?」

おお、右手に何か触ったと思ったら、すっごく綺麗な金の種だ。

禍々しい黒靄が僅かに出ていなかったら、何が生えてくるんだろうと、わくわくしそうな金の種だ。


「美しいですね。何の種でしょうか」

他の人達には、このちょっと気持ち悪いモヤっとさんは感じられないらしい。

「何の種でしょうね」

私は言うと空間にポイッとした。

だってなんか気持ち悪いんだもん。


でも、アレがモヤっとを生み出して魔方陣を構築しているとしたら、他の人にもあるかも?


ちょっと思いついたら、すぐに実行したくなる。

本当はちゃんと知ってるんだよ、ホウレンソウ。

報告して、練習して、早期治療、だもんね!

でも、報告も練習もしてる暇ないし、いきなりだが早期治療を頑張らねば!


しかし種を取り出しただけでは、魔方陣は消えないんだね。

う〜む。

時間がかかってしまうが、魔方陣を放置もできぬ、むむむ。

地道に消していくか。と、ダシトルに魔力を流した途端、空間内がゾワッとした。


何かいる。


恐る恐る手を突っ込むと、手の上にちょこんと何かが座った。

そのまま引き抜く。


「姫様、その丸い物体は何ですか?」

ガーディアは興味津々だ。

「なんでしょうね」

取り出した時は薄い肌色だったけど、私の魔力を吸って黒いもので覆われていく。


あ!

私の身体の一部だ。ふにょふにょ黒い丸になってるけど見覚えある。

つつくと転がった。そして、私の行くところにぴょこぴょこついてくる。うほ、なんかかわいい。


まあいいか。

ダシトルの魔方陣を消すべく手を翳すと、黒丸がぴょこんと乗って、瞬間魔方陣が消えた。

ぐ、偶然かな?


並べられている、次の黒人間の胸にズボッと手を突っ込んで種を取り出す。やっぱり種があったね。

と、黒丸が口?をパカーンと開けて、種を食べた。

で、黒人間の上に乗ると魔方陣が消える。

偶然じゃなかったみたい。


一気に作業が楽になった。

ズボッとやってパクッとすると、ぴょこんと乗ってサッと消える。

無ッ茶、早!


私は調子に乗ってズボズボするし、黒丸ちゃんはパクパクする。

10個目の種を食べた時だった。

黒丸ちゃんから羽が生えた。コウモリみたいな黒い羽が1枚。


「なんかびっくりすること起きたんですけど」

私が呟くと「気にするところ、そこですか?」とリズが突っ込んだ。


あれ?他にも何かあったっけ?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ