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48話 魔力を纏うには

クブダールとの朝練にユヌカスが参加している。

この間のぶっ飛び気功が、魔力によるものだと判明したからだ。


というのも「いつの間にか、ユヌカスがお前の色に染まってるな」とクブダールが気がついたのだ。

普通なら女の人が「貴方の色に染まりたいわ」っていうイメージでいたけど、私が染めちゃったっぽい。ムフ。


まあ、原因はお砂糖代わりの魔石粉に違いない。私の魔力たっぷりだったもんね。

それをおよそ2年に渡って飲み続けていたのだ。そりゃ染まる。


魔石粉が血液と共に体内を巡り、洗礼石にたどり着いてペタリとくっつき時間をかけて同化した結果、魔力を溜められるようになったのではないか。

とは風間君の予想だ。

風間君も飲み始めている。風間君が魔力持ちになったら、説実証だ。

早くても2年後だね。


が、魔力持ちになったからすぐに使えるってことでもないらしい。

「この間みたいに外に押し出すだけだろ」

クブダールの熱血指導でユヌカスはボロボロだ。

後で治してあげるんだ〜。


「それがわかれば、お前に教えを請うたりしない」

泥だらけになって起き上がれなくなったユヌカスを放って、クブダールがこっちにくる。

スピードをつけて剣が飛んできた。

わわっ、いつもより力が強いよ。受け止められない。

両手に剣を持っている私は地面に手をつくこともできないから、クブダールの剣に流れる力と共に脇に流して横に跳ぶ。


「なんで最初から本気モードなの!?」

いつもは、もう少しなんというかいちゃいちゃモードなのだ。親子のふれあいの場なのだ。

双剣に魔力を纏い、足に力を入れる。

なんかよくわからないけどクブダールが本気なら、こちらも死ぬ覚悟で向き合わないと、本当に死ぬ。


腰を低く構えたクブダールが2重に見えると視界から消えた。

後ろ!

剣の降りてくる場所はわかったけど、両手で受け止められなかった私の剣が高い音を出して飛んだ。

手が痺れている。

なんて馬鹿力なの!

足払いをかけてもう片方の剣を叩きこんだけど、その時にはもういない。


ハードだ。


そうして5分は逃げられただろうか。

いや、もっと短いかもしれない。息も切れて、これ以上は走れないよ、って気持ちが切れたのがまずかった。

クブダールの小手が脇に入り身体が叩きつけられた。

息、できない!

防御用の魔力も纏ってないのに、クブダールの本気の剣が振り下ろされる。

絶対死んだ。


来るであろう衝撃に身を構え……衝撃が来ない。


恐る恐る目を開ける。

前にもこんなことあったね。

ボロボロなのに、もう立てないくらいだったのに、ユヌカスの剣がクブダールの剣を受け止めて、金色に輝いている。

「本気になればできるのな」

クブダールが面白くなさそうに剣をしまう。そのまま「今日の訓練は終わりだ」と去って行ってしまった。


「ねえ、ラメル。まさか毎日こんな練習してるわけじゃないよね」

うっ、なんかユヌカスが怒ってる。

「いつもはもっと基礎訓練だよ。素振りとかの」

「ならいいけど」

ふう、とため息をつくと私の横に寝転んだ。

「いつでもできるようにならないといけないな」

金色に輝く剣を翳す。


私はユヌカスと手を繋ぐと、ユヌカスの身体に治癒用の魔力をゆっくりと通してみる。魔力を溜められるようになった今なら、感じることができるだろうか。

「これが、魔力の流れ」

まずは、それを感じることができるようにならないと次には進めないのだ。


剣を降ろしたユヌカスが目を閉じた。

どのくらいそうしていただろうか。繋いでいる手を通して、私のではない魔力が流れ込んできた。

う、変な感じがする。背中が落ち着かない感じのだ。

ぎゅっと目を閉じると、口に何かが触れた。

「お返し」

目を開けると、上半身だけ私の上に被さって、イタズラが成功した嬉しそうなユヌカスがドアップだ。


なんか照れる。今日のユヌカスはカッコよくてなんか照れる。

ユヌカスが起き上がると、私を引っ張りあげる。ついでに私の剣を拾ってきてくれた。

「汚れちゃったな」

私の髪の泥を払ってくれたけど、ユヌカスの方がドロドロだ。


「どのみち帰り道で綺麗になるよ」

水路を泳いで帰るんだもん。と、ユヌカスが固まった。

「帰ってきても衣装に乱れがなかったから気がつかなかったけど、本当にいつもは基礎練なんだよね?」

「本当だよ。いつもはこんなに危険な練習じゃないんだけど」

ユヌカスを見上げると、頭に手を置かれた。

「明日からは俺も参加する。ラメルの相手にマリンを呼ぶから」

でもまあ、心配してもらえるのは嬉しい。

私たちは顔を見合わせて笑った。


ただ、私は知らなかった。

クブダールよりも、マリンの方が鬼教官だったなんて。


この後、私の戦闘レベルがグンと上がったのは、そんな理由からなのだ。



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