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40話 お部屋にお呼ばれ

最近、図書館以外での風間君との交流が増えた気がする。


今日はお城のお部屋にお誘いされた。

生活圏にまで足を踏み入れることになるとは思ってなかったね。

私、男の子の部屋って初めてだから緊張する〜。


けど、え〜と、思ってたよりもひらひらしている。

「オクスィピトって少女趣味だったんだね」

いや、うん。そういう男の子だっているよね。かわいいものとか甘いものが好きな男子。

私、今ものすごく優しい顔してると思う。ムフフ。


と、頭のてっぺんにチョップされた。

「痛いんですけど!」

「その気持ち悪い顔をやめろ。ここは母上の部屋だ」

な〜んだ。

「お母様がいらっしゃるの?」

ご挨拶しないと、かな?


って、え?え?

「なんでそんなに鬱ってるの?!」

風間君が地面にめり込みそうな凹み顔をしている。

誰かヘルプミー!

部屋を見渡しランディンさんに視線を合わせると、私の気持ちを受け止めてくれたのかやってきた。

風間君を椅子に座らせながら説明してくれる。


「オクスィピト様の母君はずっとご病気でして」

「えっと、それではどうしてお母様のお部屋にお誘いいただいたのかしら。あ、男性の部屋に入るなんてはしたないですもんね」

お母さんの部屋しか空いてなかったのかも。

「いえ、はしたなくありません」

はしたなくないのかよ!

未だにこっちの基準がわからないわ。


「ではなくて、私の独断で姫様をお呼びしました。姫様なら、ラトゥイ様の病状を打破する術をご存知なのではないかと思いまして」

病気のことなんてさっぱりわからないよ、困った。

首を傾げて唸る。


「姫様は神殿の活動の一環として、病気やケガを治してらっしゃいますよね」

「え、ええまあ」

というか、折れてる骨をくっつけたり、ダラダラ流れている血液を戻したりしてるだけなんだけども。


どんな病気かを知る術は持ってない。

ヤバイ、ハリボテの巫女様だとバレてしまう。

内心で変な汗を流していたら救いの神がいた。


「あらゆる知識を駆使して、病名はわかったんだ。呪いによる血液の欠乏が原因だ」

原因はわかってるんだ、よかった。ではなくて、

「の、呪いですか?」

鬱々顔の風間君が言うとコワイ。


「僕を産んだ後の産後の肥立ちが悪かったらしい。たくさんの血が流れて、その上新しい血液を作ることができない。今生きているのも不思議なくらいだ」

それだけ?

「別に呪いじゃなくない?」

お産はそういうものだよ。

「僕が異質だから、こんなことも起こる」

おお、風間君がさらに鬱々してきた。


「あのね!無事に出産できることが奇跡なの。みんな命かけてるんだから、うまくいかなかったことが生まれてくる子のせいなわけないでしょ!」

産んだことはないけど、こんな時にはこう返せってドラマか漫画にあったはず。むん。


が、気になるのはそこではない。

「そんなこと誰かに言われたの?もしかしてお父様とかお母様?だったら作るようなことするなって話じゃん」

風間君がこんなに凹むなんて、身近な人に言われたに違いない。

なんか腹が立ってきた。

風間君に詰め寄って胸元の服を引っ張り上げてガタガタ揺らす。

この風間君が、偉そうな風間君が凹むようなこと言うなんて!


「い、いや父上も母上もそんなことは言わない、か、ら」

あ、そう?手を止める。

風間君のお母さんとお父さんじゃないんだ。

よかった。

「城の中の奴らが言うだけで」

ほほ〜ん?手に力が入る。

「焼き尽くしてあげましょうか?」

「いいですね」

私のつぶやきに風間君ではなくて、ランディンさんが応えた。


「あの、そろそろ手を離して差し上げた方が」

リズに言われて気がついた。

風間君が真っ白だ。

ちょっとだけ締めすぎちゃったっぽい。

落ちる前でよかった、よかった。


「う、うん。じゃあお母様に面会しましょうか」

気をとりなおして、風間君に活を入れる。鳩尾の辺りをちょっと軽く拳をめり込ませるだけだ。

クブダールが教えてくれたことを上手にできたと思う。

と、風間君が息を吹き返した。


「ゴ、ゴホッ。母上に会わせたらいけない気がする」

なぜだ。

今まさに風間君の息を吹き返させる治療に、成功したところではないか。

失礼な!










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