38話 感応式
出来上がった貯魔素電池付き電球を、神殿から図書館へ行く道に、順番に設置している。
風間君と風間君の指示で動くお仕事人の人が、いろいろ相談しながら等間隔につけていく。
風間君にいちいち意見を聞きにきていて、風間君って意外と権力ある人なのかも。
私はガーディアとリズを連れて、自分の制作した物が無事に機能するか確認しに来たのだ。
もし不備があれば、すぐに対処しなくてはいけないし。
そしてこの電気、人の出入りの多い所はすぐにつくんだけど、人のあまり寄り付かない所はつかない。
「姫様、この辺りの電気は面白いですね」
あれ?ガーディアが興奮気味だ。
「何か面白いことでもあったかしら」
首をかしげると風間君と目があった。
「お前のかしこまった話し方が面白いな」
なんだと、失礼な!
無言でにっこり笑って風間君の足を踏みつけておく。
えい、ゲシゲシ。
蹲っている風間君を無視してガーディアの近くに行くと、
「見てください。近づくと電気がついて、離れると電気が消えますよ!」
うん。人感センサー付きの電気になったっぽい。
はしゃいでいるガーディアが年相応の子どもらしくてかわいいです。
「貯魔素電池は感応式になるのか。これはいい発見だな」
人の悪い笑顔になった風間君が、私の肩をたたいた。
「また私ばっかり何かさせる気になってる!」
「イヤイヤ、僕も改良するの大変なのよ」
む〜。ウソばっかり〜。
「ラメル、何やってるの?」
廊下の向こうから来たのはユヌカス達だ。
「私の作った物を設置してるの。電気っていって光るのよ」
ほら、って指さしてみたけど、ユヌカスがご機嫌ナナメだ。
どうしたんだろ。
「なんでオクスィピトと一緒なの?ってことなんだけど?」
ユヌカスが電気に反応してくれない。
「オクスィピトと一緒に作ったからだけど」
あれ?オクスィピトと一緒にいるのってダメなことだったっけ。
「俺とのお茶会よりも、オクスィピトと一緒にいる方が楽しかった?」
楽しいと言ってはいけない空気だ。
どうしたもんか。
「姫様、姫様はオクスィピト様とユヌカス様のどちらを選ばれるのですか?」
ガーディアが唐突に口を開いた。
流れ的に意味がわからない。
どうした、ガーディア。
「こうして何日かご一緒させていただいて思ったのです。姫様にはオクスィピト様の方がお似合いです。姫様を大切にしてくださってますから」
横でリズも頷いた。
え〜と、なぜか恋人選ぶことになってない?
なんでそうなった?電気の話しようぜ、みんな。
うん、でも空気読む。
「私にはオクスィピトとユヌカスの二択しかないのかしら」
別に他の人でもよくない?
まだ若いし。10歳だし。
「それは難しいですよ、姫様。第一王子様と第二王子様の間に入って、姫様を取り合うような勇気のある方はいないでしょうし」
「クブダール様はオススメできません」
だって。リズにまで言われた。
まあでも、それは激しく同意する。
お母さんってすごいの引き当てたよな〜。
じゃなくって、
「第一王子って?」
誰?
「僕だよ。知らなかったの?」
風間君がにやにや見てくる。
マジか〜。風間君が王子様。
オウジサマ。
ひ〜、だ、だめだ。笑える〜。頑張れ、腹筋!
私が肩を震わせてると風間君が眉間にシワを作った。
「もう、お前は帰れ。後は僕とユヌカスで話しておくから」
しっしっと犬を追い払うようにされた。
失礼な!
うん、でも部屋でおもいっきり笑いたいから帰る。
「ガーディア、お言葉に甘えて帰りましょう」
ガーディアとリズを引き連れて神殿に向かう。
今日の帰り道は電気がついていて明るいぞ、わ〜い。
帰り去る間際に、ガーディアがカイトウさんのお尻部分を回し蹴りした。
カイトウさんがお尻を抱え込んで唸っている。
「さあ、姫様行きましょう」
ガーディアがすっきりした顔になって先頭を歩きだした。
まあ、なんだ、うん。
ガーディアが安定し過ぎてるよね、うん。




