35話 体質改善
ユヌカスが不思議な飲み物を口にしている。
部屋に帰ると、もう日常の光景になっているユヌカスが部屋にいた。
ユヌカスとクブダールは自分の部屋だと勘違いしてるんじゃないかと思うことがあるよ。
部屋に入れば出てくるお茶セット。ドリンクとお菓子のベストマッチセットだ。
お姉さん達のセンスはいいから毎日楽しみだ〜、じゃなくて!
勝手に部屋をあさって、足りないものを補充するとかありえないし!
お茶にユヌカスが入れているそのビン、見覚えあるよ!
私が毎日魔力を通しては、キラキラさせて楽しんでるものだもん。
「ユヌカス、それお砂糖じゃないんだけど」
「あ、やっぱり?入れても入れても甘くならないな、とは思ってた」
と言いながらまた入れる。
「でも入れた方がおいしいんだよな。最近のお気に入りだ」
どうしよう。
それ、魔石を削った粉なんだけど。
道理で毎日足しているのに、なかなか増えないな〜と思ってたよ。
「姫様、ユヌカス様が口にしているものは安全なもので?」
低い声色の人がなんか殺気を向けてくるんだけど、私悪くなくない?
「カイトウさん、魔石って食べちゃっても大丈夫なものですか?」
「魔石、ですか」
カイトウさんからアホっぽい声が出た。
さすがに想定外だったらしい。
「あれ、工場で削られた魔石のカスなんです。私悪くないですよね?」
恐る恐るカイトウさんを見ると、ものすっごい笑顔を向けられた。コワイ。
「姫様はここにユヌカス様が入り浸り、手にする可能性があるにもかかわらず、紛らわしいものを置いたわけですね」
非難されてる!私カイトウさんに非難されてるよ、理不尽!
「ユヌカスのせいで、私怒られてるんだけど!」
カイトウさんに抗議したところで、右から左なのはわかっている。
カイトウさんのユヌカス愛は半端ないのだ。
だから、私の胸に受けたカイトウさんからの打撃はユヌカスに返しておこう。
「ユヌカス、この部屋もう出禁」
表情が固まったユヌカスがカップを持ったままカイトウさんをロックオン。
しばらく見つめ合う2人。
麗しいわあ。金髪の美形2人が見つめ合ってるの、眼福♡
私が学校から帰ってからの服を着替え終わって、お出かけ準備万端になったところでカイトウさんが折れた。
「姫様、私の言葉が足らず不快な思いをさせて申し訳ありません。ユヌカス様が部屋に通うのをお許しください」
もこすご〜く、本当は言いたくないのだろう苦味潰した表情だ。
「カイトウさんはユヌカスのこと好きすぎですよ」
「姫様は優しすぎです。姫様が望むのなら、この部屋にはお入れしませんからご安心ください」
迫力笑顔を浮かべてユヌカス出禁を決めたらしいガーディアがカイトウさんの足を踏み抜いた。
悶絶しているイケメン。
仕方ないなあ、と思っていたら私にもおんなじのいたっぽい。
朝はお父さんと練習しなきゃで忙しいし、はやく実技を全部終わらせて『モノクリツ』で研修したいな〜。
今は自己流で製作してるからね。
部屋を出ようとしたら、ユヌカスに捕まった。
「最近、神殿にも学校にもいなくて何してるの?」
「図書館だよ」
調べ物しながら、作品作りだよ。
「一緒に行く」
カップをおいて立ち上がった。
ユヌカスって脳筋っぽいんだけど、役に立つかなあ。
「この部屋の出禁を解除されるのと、図書館に一緒に行くの、どっちがいい?」
じゃまだからついてきてほしくないな〜、が伝わったのかユヌカスが椅子に座りなおした。
「この部屋の出禁は困る、から今日は我慢する」
って。じゃあ行ってこよ。
コノ部屋二入レナイト、一日一回会エナクナッチャウカラナ




