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24話 ご対面

私は今、猛烈に焦っている。

どうしてこうなったのか。


水路が順調に循環するようになり、水はキレイになった。けれど、水路自体の汚れはなかなか落ちないため、毎日少しずつ、お出かけしながらお掃除をしている。

もちろん町の人たちもだ。そうした努力の甲斐もあって、元の街並みに戻りつつある。


それで余裕が出て来た私は、泉は大丈夫だったのかなと急に思い立ったのだ。

だから普段あの2人を気を付けて撒いてから泉に行っていることを、すっかり忘れてしまっていた。


で、当然こうなるわな。

私の後をつけてきたクブダールとお母さんが、とうとうご対面してしまった。

「まあ、今日はお友達を連れてきたのね」

お母さんはクブダールに気づいていないみたい。


「私の友達に雰囲気が似ていて、はじめてって感じがしないわね」

クブダールが小さいからか、お母さんは疑問に思ってなさそうだ。できれば名乗らずにいてほしい。

お母さんもまさか昔の彼氏様が、魔力のほぼ枯渇により縮んでいるとは思うまい。


「ラメルがいつもこっそりどこに行ってるかと思えば、神殿にこんな場所があったんだな」

クブダールも気づいてない。よかったあ、今日は早めに帰る、うん!


「実は、町の水場が汚れてしまって生活に支障か出たから、ここは大丈夫かなと思って」

大丈夫ならいいんだよ。うん、帰ろうかな。

「そりゃ、ここは大丈夫よ~。私が管理しているのよ」

お母さんが穏やかにほほ笑む。


私は笑みが引きつる。

「なんだか、今日のラメルちゃんは変ね」

友達を連れてきていると思ったお母さんは、こっちの世界の名前で呼ぶ機転はきくらしい。

「お友達を紹介してほしいわ」


って、どううううする?

実は私、自分の立場を理解できてないのよ。

クブダールって私のなにかってことが。


「クブダールだ」

って、私が悩んでる間にあっさり名乗りやがった!

「ク、クブダール、君? へ、へえ雰囲気も似ていて名前も一緒だなんて」

嫌だわ。

最後の一言は小さくてクブダールには届かなかったらしい。

「貴女はクブダールという人物を知っているのか?」

俺の記憶では貴女を知らないのだが、と首をかしげた。


そう言えばお母さんのこの姿は、本当の姿ではないって言ってたもんね。

これは案外いい感じかもしれない。

お母さんがクブダールに気がつけば、名乗るか名乗らないかはお母さんが決めればいいんだもん。

なんか、肩の荷がおりた。


いやさ、私のこの世界の両親はバーグパパとアンフルママじゃん?

要するに、この身体の両親だ。


で、魂の両親は日本の両親だと思うんだよね。私の意識はそこからずっと引き継いでいるのだから。

そうするとクブダールは何だろうって。

私は日本のお父さんのこと、ちゃんと覚えてるんだもん。

間違いなく、お母さんとお父さんはラブラブだった。

 

でも、クブダールとシルヴィアの間にも子どもがいたのも本当みたいだし。ってことはお母さんとクブダールの間に子供がいたってことでしょう?

あれ? 私、シルヴィアの子孫とは言われたけど、クブダールの子孫とは言われてなくない?

な~んだ。他人かもじゃん。


クブダールは泉の奥をじっくりと観察して納得したのか「帰る」と行ってしまった。


「ラ〜メルちゃ〜ん? これはどういうことかしら」

クブダールがいなくなったら、お母さんがにじり寄ってきた。だから私も聞いちゃう。今が絶好のチャンスだと思うのだ。


「お母さん、クブダールって元カレなの?」

もうここはズバッとな。

「クブダールと別れてお父さんと結婚したの?」

お母さん、変な顔になった。

「ラメルはクブダールの顔を見て何も思わなかった?」

「日本人っぽい髪の色で和む〜って思ったよ。けど、あの子むっちゃ怖いんだもん」

もう和むことはない。


「クブダールが大きくなったらどんな風に成長すると思う?」

大きくなったら?

「うう〜む。アレ?お父さんに似てるかも」

顔の感じもしゃべり方も似てる、気がする。

「お母さん、クブダールのことが好きだったってこと?

あんなにお父さんとラブラブだったのに?」

お父さんが似てたから結婚したのかな。


「ラメル、お母さんの能力について話したの覚えてる?」

お母さんの能力?なんだっけか。

「私、お母さんが自分の身体を何個も作って保存してることしか聞いたことないと思うんだけど」

少なくとも、本体の他に2体あるんだよね。

「だから、そういうことなの」

? わけわからん。

「どういうこと?」


「その、ね。お父さんも作っちゃったの」

はあああああ?!

「お父さん、作っちゃったの?」

「そう」

お母さんが恋する乙女だ。

私が寂しい思いをしないように、そしていつかお父さんに会った時に戸惑わないように、クブダール人形を作ったらしい。


「え、じゃあラブラブだったのは、お母さんの1人芝居?」

なにそれ、むっちゃ恥ずかしいんですけど。

そりゃ、ケンカもしないわ。

「クブダールのこと好きなんだ」

あんな演技しちゃうくらい……ぶほぉっ!

「え、え、待って。じゃあなんで今名乗らなかったの?」


「そりゃ、だってラメルちゃん。クブダールが怖いからよ。アイドルとかも外から見ていたらキャーキャー言えるけど、現実みたら幻滅したりするじゃない?」

ああ、うん。それはわかる。

クブダール、イケメンだもんね。

けどめっちゃ人格破綻系だもんね。


お父さんはこの後も、お母さんに名乗ってもらえなさそうです。

クブダールがお父さんとか違和感あるわあ。

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