23話 sideクブダール
俺はクブダール。
リリタース等とこの星の崩壊をギリギリで止め、人々が再び活動し始めたところで捕まった。
逃がしたシルヴィアが無事かもわからず、気が腐っていたからそれも油断につながったんだろう。
魔力の量が寿命を左右することに気づいた人間の、歪んだ不死に対する思いが1度この星を崩壊へと導いた。
ホォギバの断罪を逃れ、その記憶を持ったまま、まだ生きている者がいるとは思わなかった。
罪を犯した種族が魔力の回路を封じられ、2度とあの不幸を繰り返さないようにと全てを終えたはずだったのに。
シルヴィアの面影を濃く残して現れたラメル。
時間の経過から考えれば、自分の子や孫の世代ではないことくらいわかっている。
けれどもあまりに似た気配に、シルヴィアを感じずにはいられない。
そして、他種族と交わっても子を残せない彼らが子を残したという事実。
狭い交配を繰り返し、ホォギバは彼らが緩やかに滅びの道を歩むよう罰を定めたはずだ。
ならば、ラメルという存在はなんだ?
なぜ、許しを与えたのか?
考えても答えの出ない問いを浮かべながら嘲笑する。
そうではない。
答えが必要なわけではなく、同じ過ちを犯さないことが大切なのだ。
ラメルはシルヴィアとは違う。それはわかっている。
けれど失いたくない者ということに違いはない。
ならば、自分のやることは決まっているではないか。
ラメルが魔力を持っていることなんかすぐにバレる。
その時に、力の弱い彼女に全ての負荷がかからないように。
だが、この国に充分な施しなどしてはやらない。
自分自身に力が欲しい。
金があるなら遠慮なく得よう。
人の世に干渉すると決まった時点で、制約を受けて使える能力は減るのだから。
「クブダール、ひとまずはこのくらいでいいのではないか」
使いがってのよさそうなユヌカスだ。
国家の権力をある程度持ち、こちらの都合のいいように動かせられる。
「ちゃんと振り込んでおけよ」
魔力を、新しく設置された魔方陣に流し終わると神殿に帰還する。
ひさびさに帰ってきて驚いた。
なんでこんなに人が集まっているのか。
10カーネショップってなんだ?
は? 孤児達を家族にしたい?
お前の家族は俺だろうが。
1カーネで仕事をさせる?
俺に言えばなんでも都合つけてやるのに。
ああ、もう閉じ込めておきたい。
少なくとも、気安く誰も彼もが近づくような存在であってはダメだ。
俺は新たな神殿主として教会に君臨することにした。
ラメル?
ラメルは大巫女だ。
巫女ならば結婚なんぞしなくてもいいからな。




