22話 再生工場
いよいよ魔石電池の大量生産をする時がきた。キラキラ魔石がたくさんできたからね。
板に魔方陣を描いていく。
「この絵の上にキラキラ魔石を貼り付けてほしいのです」
見本を見せてくっつける。
ピンセットも作ってみた、モノクリツのおじさんが。
すると、魔方陣に仮置きのつもりだった魔石がピタリとくっついた。接着剤いらずだ。
「その周りには色合いを考えて、カラー石を置いてほしいのです」
ふむ、こっちはくっつかない。接着剤がいるらしい。
できたものは一旦全て私が預かり、ディニテに一括で手渡すことになる。
販売方法をディニテにお任せすることにしたからだ。
大きな金額をやりとりするのは貴族に決まっている。
貴族ではなくても、やり手の商人とかだろう。頭の回転が緩やかな私では太刀打ちなどできない。
そしたら商品の取り分の半分が私、1割がディニテ、1割が教会、2割が国に、残りの1割がかかわった従業員全員に平等に分けられることになった。
なんで国に? と思わなくはないけど、教会って国の施設なのかもしれないし、その辺りはディニテを信用している。
飾りのない魔方陣を描いただけの板は、5万カーネと平民の給料の3カ月分くらいの値段だ。
そして魔石がつくキラキラバージョンは、50万カーネと一気に跳ね上がる。
魔石って貴重なんだね、本当に。
だからキラキラバージョンは初回分の魔力として私の魔力を込めることにしたの。
だって、5割ももらっていいのかなって。結構な金額だよ。心が痛むじゃないか。私にとっては元手がほぼタダなんだもの。
けれど1つ売れれば、みんなに1500カーネもあげられるのだ、ムフ。
まあ、そんなに数は売れないだろうから、次回からは受注生産になるんだけどね。
「これが売れたら、隣の部屋に簡易ベッドを入れられますから、頑張ってくださいね」
貯まったお金で従業員のお部屋を整えてあげたい。
今はまだ、部屋の隅で布をかけて寝ている彼らに、家と思える環境を作ってあげたい。
でもまあ、この国が1年中暖かい気候でよかったよね。
「他に必要な物はないかしら」
板に描き描きしながらおしゃべりタイムだ。
「私はお金を貯めたら服を買いたいのです。いつかドライモメントの素材で作った服を着るのが夢です」
1人の子が目を輝かせると、他の子も賛同する。
「ドライモメントは水から上がってすぐに乾く高級布ですもんね。普段から身につけてらっしゃるのは貴族の人か、兵士しか知りません」
私の服はドライモメントらしい。道理で泳いだ後、陸地に上がっても服がぐっしょりと重いってことがないはずだ。
しかしまるで、宝くじが当たったら何に使いたい? というノリの女子トークになってきたな。
最近では持ち込んだ物を1度私が全部回収し、再生したものを10カーネで販売している。
完全に物質ごとに分けられているからか、利用者が増えてきているんだって。
「おおラメル嬢、金属玉は何か入荷したかい」
私をラメル嬢と呼ぶのはモノクリツのおじさんだ。
「今日はこれだけですよ」
一斗缶のような箱にいっぱい詰まったものが7つ分だ。中に入っている金属は、金属によって大きさが違う。1玉10カーネはかわらないけど。
「今日は少ねーな」
小さな金属の玉を、町の工場の人がまとめて買いに来ると計算が大変だ。みんなで数えることになる。
「10個ずつ分けてみましょうね」
まだこの子達は、100を超える物を計算するのは難しいらしいのだ。
簡単な算数の勉強をした方がいいかもしれないなと思っている。
「時間がかかってしまいそうなんですけど」
おじさんを見上げると、ニカッと笑われた。
「種類ごとに分かれていて、この後の仕事がしやすいから仕方ねえ。また後でくるからよ」
会計が出るまで水浴びしていてくれるらしい。
「おおそうだった」
その上廃材として、壊れた使用済み金属の含まれた家具などが置かれた。
この工場、売れたそばから仕入れができてしまう。しかも無料で。
コストパフォーマンス良すぎじゃない?
金額が安いからいいと思うんだけど、ぼったくり感があるのは私だけかな。
まあ完全に再生工場化していて、神様のお願いを聞けた達成感があるから、私は満足なんだけど。
なんか、前世の時には考えられなかったくらいお金持ちになれそうだ。
1カ月あたり2000円のお小遣いでも漫画とか買って結構楽しめたのに、いったいいくらお小遣いとして使ってよいものか。ムフ。
経済を回そうと思ったら、使うことも考えないといけないんだもんね。
ムフフ。
ラメルの姪っ子であるシーラがお掃除の時に着ていた便利服はドウシタンタ国産だったのですね。
(。ゝ∀・)b




