20話 キラキラ
なんとか廃材置き場に案内してもらうことに成功した。
けれど想像していたのとだいぶ違う。
もっと雑多に捨ててあるかと思いきや、それぞれの種類ごとに綺麗に分けてあるんだもの。
「お客様、何か必要な物がございますか?」
私と同じくらいの小さな女の子が、私をみつけてやってきた。
廃材を預かり仕分けをしたり、欲しい物を探して次の利用者に渡したりするのが仕事らしい。
その際にチップのような感覚で1カーネを渡すことが、彼女たちの生活費になるんだそうだ。
「金属やクズ魔石があれば、と思ったのですけど」
「金属やクズ魔石は町の工場で買い取ってくれますから、あまり数はないのですよ」
案内された場所には、解体してバラバラにすることが難しい大きな棚の壊れた物などが置いてあった。
「これを全部わたくしの部屋に運んで欲しいわ」
部屋付きお姉さんにお願いする。
「全部ですか?」
お姉さんと女の子がびっくり顔になった。
あ、でもここで作業した方が楽かも?
廃材が集まってくるんだし。
この後どうしようか、と考えていたら他にも小さな子たちが集まってきた。
たくさんいたんだね。
「姫様、彼等は住む家がない孤児達です。神殿は夜になると施錠され安全ですから、こうしてお手伝いをすることで、神殿の片隅に身を置くことを見過ごされているのです」
この国が割と裕福にみえていたから、孤児がいる、ということに驚いた。
「神殿預かりの子、ということですか」
かなりの劣化版だけど、神殿は孤児院のようなこともしてるってことかな。
今、頭に閃いた。
この子達を従業員として雇えないかな。
小さい子過ぎて、倫理的にどうだろうか。ブラック? ブラック企業っぽい?
私の常識、こっちの世界でどんな感じになるのかな。
「わたくしのお手伝いをする従業員として、働くことのできる子はいるかしら。もちろんお給料を支払いますよ」
子ども達がぽか〜んとしている。
「姫様、お給料というのはなんでしょうか」
「働いてくれたことに対して対価をお金で払おうかと思っているのですけど」
あれ? お姉さん達の生活はどうやって成り立たせているのかな。
疑問が顔に出ていたらしい。
「私共は神殿から下げ渡された物で生活をしています。食事も服もですよ。神殿に所属することを決めたことで、生活を保証していただけるのです」
結婚や休みなどに自由がなくなるけれど、申請すれば通ることもあるとか。1人で生きていく自信のない女の子が残ることが多いらしい。
「私もそのような理由で神殿に所属していますから」
って。
そして、まだ小さくてお手伝いのできない子達は、神殿に所属するのか独り立ちするのかを決めることができない。
そのため神殿で身分を保証してもらえず、自分で食事を用意しなければならなくなるのだ。こうしてお小遣い稼ぎをしないといけないのはそのためなんだって。
私の仕事を手伝うことで、部屋付きのお姉さん達と同じように扱われると理解した子ども達が、従業員に立候補してくれた。
私、立派でクリーンな社長さんを目指して頑張ります!
まずは、さっき作った魔力電池の板をクズ魔石で飾りたい。
ディニテに1つキラキラのついていないノーマルバージョンが売れているから、それを初期経費にしてモノクリツのおじさんに削り台を作ってもらっている。
スワ◯スフキーみたいなキラキラした魔石を作るため、私が考えた。大昔の、足で踏み踏みして動かすタイプのミシンをイメージした研磨機だ。
足で踏み踏みして、サメーラの皮を付けたローラーが回るところで魔石を削る。
ダイヤみたいに硬くないため、洗礼前後の男の子でもできる仕事になった。
そして削られたキラキラ魔石を使って、女の子が板の上に飾りつけていきたいのだけど、まだまだキラキラ魔石がたくさんできないから、その作業までいけない。
それに手で魔石を削るのはなかなか危険だよね。
ってことでキラキラ魔石ができるまでの間、集まってきた廃材の中から厚い布を探して手袋を作ることにした。
手袋1双を10カーネで売る。うち2カーネを作った人に、残りの8カーネを教会の取り分とする。
ちょっと教会が暴利かとも思うけど、そのうち考えよう。
計算が楽な方がいいのだ。
手袋を3双作ると、露店の焼鳥(魚)が1串食べられる、とわかって子ども達以外にお姉さん達も作りはじめた。
順調、順調。
みんなが仕事に取りかかったところで、私も私しか出来ないことをやる。
この棚をピッと分解して解体。あのイスをピッと分解して解体。こっちのベッドも解体。
ふ〜、疲れた疲れた。
あ、あれ? みんなの手が止まってるよ?
たくさん作りたいんじゃなかったのかな。
まあ、手袋って細かいところをしっかり縫わないといけないから、根をつめると疲れちゃうもんね。




