17話 呪い
念願の泉にやってきた。
あれから黒いのとウザいのが纏わりついていて、お出かけするスキがないのだ。
窮屈極まりない。
癒しが欲しい、切実に。もうこれは、お母さんに会うしかないのだ。
あ、発見!
お母さんか確認しなくては!
「この間はありがとうございました。海っていう人に心当たりはありませんか?」
ってな。
質問がド直球な気がするけど、これで頭オカシイ人判定されたら泣ける。
もう2度と泉に来られない。
「ふふ、わかるわよ海。私の子だもの」
「お母さん? 本当にお母さん?」
うおお、よかったあ。変な汗が出たわ。
「ほら」
言って見せられたのはお母さんの左手首、桔梗の模様のようなアザ。日本時代のお母さんにもあったものだ。
「本当だ〜」
「海にもあるかしら?」
どうだろ? グブタールはあるって言ってたけど、おんなじのかな?
「あ、あった、あった。この模様はやっぱりなくならないのね。どこにいても見つけるんだって、呪いかけられちゃったのよね」
ん?
「まさか子どもにも遺伝するとか思わなかったわ」
グブタールの言ってた模様って呪いなの?
ま、まあ、それも気になるが、それよりも気になっていることがある。
「お母さんって人魚だったんだね」
「え、これ?」
お母さんが魚の下の部分を脱ぎだした。
な、なんですと~!
ホットパンツDE足有りお母さんになりました。
「なんで人魚になってたの!」
「え、ほら~。私、こっちじゃ一応神様っぽい扱いらしいし、滅多に地上に現れない神秘的な人魚神とかってかっこいいじゃない」
……そうか?
そもそも地球のお母さんも、人魚のお母さんも、ただの入れ物っていう感覚らしい。
本当のお母さんってなんだろ。
「他の姿になっている時は、この姿は寝ている状態だから神秘的なくらいがちょうどいいのよね」
すごい人の子どもだったんだね、私。
「ところで海はこっちの生活に慣れたかしら」
魚ズボンを履き直しながら、お母さんが聞いてくる。
また履くんだね、別にいいけど。
「地球に戻りたかったら戻してあげるわよ」
おおう、なんていう究極な選択をサラッとぶち込んでくるのか。
「その場合、こっちの生活はどうなるの?」
「そうねえ。海の身体は寝た状態になってしまうから、私の横で寝せておこうかしら」
もちろん私も一緒に帰るわよ、とお母さん。
……その場合、私を探しにきて見つけたユヌカスと父様が発狂すると思われます。
先日の光景が頭をよぎる。
「私、戻らなくてもいいかな」
うん、そういえば、神様がなんかやってほしいって言ってたもんね。
「私、神様からリサイクル能力を貰ってこの国を綺麗にしている最中だからいいや」
「リサイクル能力? ってことは海も自分の身体を作れるようになるわね」
「作る能力なんてないよ? 分解してるの」
お母さんがかわいそうな子を見る目でみつめてくる。
「海、リサイクルって再利用ってことでしょう? 作れるんじゃないかしら」
なんですと!
それは全く思いつかなかったよ。
さっそく作ってみる!
帰り際、忘れてたことを聞いてみた。
「そういえばシルヴィアって人のこと知ってる? 私、子孫だって言われたの」
「そりゃあそうでしょうね。私のことだもん」
ん? なんだかものすごい情報を聞いた気がする。
い、いや。深くは考えまい。うん。




