15話 ギャップ萌え〜?
何やら少年、手を動かしてまじまじと見てる。
も、もしかして、黒い絵が消えて怒ってたり……してないよね?
「えっと〜、クブダール君?」
恐る恐る声をかけると、少年がこっちを見た。
そうだよね! 悪いことをしたら潔く、だよね!
「もおおおおし訳ございません! 身体のあちこちに描いてあった黒い絵を間違えて消してしまいました! 」
布団に頭をぐりぐりしてのドゲーザである。
許してたも!
……し〜ん。
あ、あれ? 無反応?
ちらっと少年を見る。
自分の身体をくるくる見ている少年の身体が小刻みに震え始めた。
「ふっ、フハハッハハッ!」
ど、どうした少年!
いきなりの大爆笑が止まらない。
「ハハハ、間違えて消しちゃった? 俺がずっと消したくて消せなかったアレを? お前が?」
おお、めっちゃ想像と違うんですけど。
しゃべり方がめっちゃ想像と違うんですけど。
ギャップ萌〜……しねえな!
「へえ、この国の人間にしちゃあ変わった髪色してんだな」
「そ、そうですか? 母様に似たのかな。母様ナンテコッタの人なので」
ジリジリ寄ってくる少年に後ずさる私。
「ドウシタンタ人とナンテコッタ人の間に生まれたのか?」
ふむ、と眉間にシワをよせる。
「あり得ないだろ」
言うとさらに近づいてくる。
「どうして逃げてんの? アレを消し去ってくれたお礼をしないと、だろ?」
お礼? お礼ってありがとうってことだよね?
そんな風に背中に黒いオーラ背負ってすることじゃないよね?
怒ってんじゃん!
そろっと向きを変えてベッドから降りようとしたら、ガシッと捕まえられた。
「……これ、なんだ?」
「へ? な、何かありますか?」
「見覚えのある模様がある」
模様? 模様なんてあったかなあ。
日本の時にはお花に見えるアザがあったけど、こっちの身体にも何かあるのかなあ。
母様も父様もなんにも言ってなかったよね。
呑気に考えてたら、肩甲骨あたりを噛み付かれた!
ぎゃああああ!
「やっぱりお前、シルヴィアの子孫か」
口についた血液を舐めながら、確かめるように聞いてくる。
知らんわい!
シルヴィアって誰?
マジ痛いし!
「そうか。子孫がいるってことは、アイツ無事に生むことができたんだな」
クブダールが急に優しい顔になってナデナデしてきた。
いや、その前に噛んだことを謝れよ。
今日の朝に戻れるならば、あの時の私に言ってやりたい。
拾うな危険!
『危険物には触らずに、係員までお知らせくださ~い』
頭の中で、只今アナウンスが流れております。




