13話 拾い物
父様が向こうにお出かけしている間、神殿での生活が始まった。
父様が帰ってきたらお家に戻るけどね。
よく考えたらさ、洗礼したとはいえ7才の子どもを1人で家に残して行く父様ってちょっとズレてるよね。
それともこっちの世界では普通なのかも?
早く目が覚めてお散歩してたら、カギのかかった部屋をみつけちゃった。
なんか気になる。それに、ちょっとへんな臭いもするんだよ。
カギ分解!
お、開いた〜。
黒い物体が部屋の隅に転がってる。
なんだろ?
近寄ってみたら、人っぽい。生きてるよね?
えい、ツンツン。
指でつついてみたらちょっと身じろぎした。生きているっぽい。
ふむ、お風呂にでも入れてみる? なんか黒いし、臭うし。
でも洗礼済んでるのかなあ、小さいよね。お湯はダメかも。
私でも抱っこして運べるぐらい小さな子だけど、手を引っ張りながら水の浮力を利用してプカプカ水路から部屋まで運ぶことにした。
部屋のお風呂をすご〜くぬるめのお湯にしてアワギリ石鹸で汚れを落としてみたけど、黒い汚れがなかなか落ちない。恐る恐る分解魔法を試しながらもう1回アワアワしてみる。
汚れの分解は壁とかでやったことはあるけど、生き物でやったことないんだよね。
最初のうちは力加減がわからなくて壁とかちょこっと欠けてしまったし。
頭に浮かぶ変な模様が、一体どんな物質を指しているのかわからないんだもん。
適当に全部に魔力流すと、全部分解されちゃうからね。
む~、お湯をかけて泡を落としたけど、まだ黒い線が残ってる。
う〜ん、もしかしたら汚れじゃなかったかも?
こんなに洗っても落ちないし、残ってる線をつなげてみれば絵みたいに見えなくもない。
タトゥみたいな感じだったかもしれない。
ところどころ消えてしまった線のせいで、もう柄には見えないけどね。
け、消しちゃう? 一層の事消しちゃう?
きれいさっぱりなかったら、気づかれないかも!
おお、いいかもしれない。
気合いを入れてタトゥ消しをする。
アワアワ、ゴシゴシ、魔力をピ! アワアワ、ゴシゴシ、魔力をピ!
と、どうでしょう。黒髪の男の子が現れた、ですよ!
厳密にはすごく濃い紺って感じだけど、こっちの世界に渡ってから初めての黒髪さんで舞い上がるわ!
目、開けないかな?
目も黒いと親近感湧くんだけどな〜。
身体を布で拭き拭きしてくるむと、ベッドまで運ぶことにした。
日本にいた時の感覚で持ち上げたら、持ち上がらなかったよ。
この子も小さいけど、私も小さいんだった。
お、おっも〜い。
ヨタヨタ歩いて、ベッドまできたけど放り投げるみたいになっちゃった。
わわっ、危ない! 急いで壁と少年の間に割り込む。
ゴチっ。ぐお!
壁に頭を打ち付けて痛いけど、ガマンする。
私の方がお姉ちゃんだし!
しかし、朝からがんばったせいか何やら疲れたでござる。
少年の濡れた髪を水分分解しながらナデナデしていたけど、ふわあああ。
ぐう。
目の色楽しみだなあ、ムフ。




