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つかの間の静けさ

 教祖高山が引き連れてきた二人の神の使いの少女と、10台の警備ロボ。

 少女の一人は、服部とあかねが倒した。

 もう一人の少女はひなた父とひなたが対峙しているところに、あかねも加わった。

 そして、俺はひなたたちの決着がつく前に、警備ロボと戦う事になり、2台を葬った。


 回転動作の隙さえつけば、ちょろい。そんな思いを抱き始めた頃には、警備ロボが転回をほぼ終えていた。

 やばい!

 このままでは突撃を食らうか、レーザーを見舞われる。


 一か八かで、一番近い警備ロボの上に飛び乗った。

 俺が飛び乗った警備ロボは当然、俺に攻撃することができないが、それだけでなく俺を見失い新たなターゲットを求め始めたらしく、その場で方向転換を始めた。

 近くにいる警備ロボは、俺の場所を認識しつつも、レーザーの照射角の範囲外と判断しているらしく、照準を俺の方向に固定したまま後退を始め、俺をその照射角に収めようとしている。


 奴らが一定の距離を取った瞬間に、俺に向けてレーザーを照射してくるのは確実だ。

 ここもすぐに危険な場所になる。

 足元の警備ロボにあかねソードを突き立てて、一体をまず破壊すると、飛び降りて、近くで俺を狙う警備ロボたちのレーザーの照射角の範囲から逃れた。

 警備ロボたちは、俺をレーザーの照射範囲に捉えようとして、また足踏みのような動作で回転を始めた。


 その無様な動作をしている警備ロボの向こうでは、ひなた父たちの戦いに決着がついていた。

 誰が倒したのかは分からないが、少女は真っ二つに斬られ上半身は地面に転がり、下半身はまだ血を噴出しながらも倒れずに立っていた。

 その横を駆けて、ひなた父とあかねが駆け寄ってくる。


 回転と言う弱点があるとは言え、数が多いだけに殲滅は容易ではない。そう思っていただけに、この援軍は心強い。

 俺を狙おうとしていた警備ロボの背後をひなた父が襲うと、あかねも襲った。

 自分たちの背後を狙う新たな敵だと言うのに、警備ロボはその撮像範囲内に捉えている俺だけを狙っている。と言うか、背後の敵には気づかないらしい。

 全く、この警備ロボは俺の父親が言ったように、ビルの廊下とかの警備だけに特化しているらしい。しかも、連携プレーと言う事も出来無さそうだ。


 俺も負けてなんかいられない。

 警備ロボを襲うため、あかねソードを向けた時だった。

 背後から羽交い絞めにされ、俺は身動きを封じられてしまった。


「さあ、これでお前は終わりだ」


 声は高山だった。


「やつらの武器はレーザーだぞ。

 俺だけじゃなく、お前も死ぬことになるぞ」


 そう言いながらも、力で脱出を図ろうと、力いっぱい体をよじってみる。


「それがどうした」


 高山の声に怯えも何もない。一緒にくたばる覚悟だ。

 こいつは人間じゃないんだ。きっと3Dコピー。

 マジやばい。

 近くの警備ロボが転回をし終えようとしている時だった。


 バン!


 一発の銃声が響いた。

 俺の後頭部から頬にかけて、温かく鉄臭い液体が吹きかかった。

 離れたビルの窓からライフルを手にした矢野が、右手の親指を立ててにやりとしていた。

 矢野のまたまたグッジョブだが、俺は血まみれになってしまった。

 しかし、そんな事を気にしている余裕はない。


 慌てて移動を開始し、俺に狙いを定めようとしていた警備ロボにあかねソードを突き立てた。

 ほぼ同時にとひなた父とあかねが別の二体の警備ロボを破壊したが、そいつらが最後の警備ロボだった。

 これで高山が引き連れてきた敵は、高山自身も含め、全て倒した。



 俺たちの空間に静けさが戻って来た。

 今回の勝利の立役者の一人、矢野がライフルを手にしたまま、俺たちのところにやって来た。


「とりあえず、終わったみたいだね」

「ありがとう。

 これも矢野さんのおかげだ。

 俺の危機を救ってくれたんだから」


 マジの気持ちだ。


「けが人の手当てを」


 ひなたの父親の声だ。

 確かにそうだった。多くの者たちがあの蜘蛛の糸の力で、ビルの上層階から落とされて怪我をしていたし、服部もだ。


「服部!」


 植栽に倒れ込んでいた服部のところに駆けよった。


「大丈夫か?」

「骨が折れてるみたい。

 かわし切れなかったよ、あいつの攻撃」

「ありがとうな。

 服部が俺を突き飛ばしてくれていなかったら、俺は」

「そうよ。

 水野はきっと死んでたんだからねっ!」


 ちょっといつものツンツン口調だ。まだ十分な元気があるらしい。

 それがうれしくて、俺の表情が緩んだ。


「な、な、何がおかしいのよ!」

「ごめん、そんなつもりじゃないんだけど、服部が思った以上に元気そうでよかったよ」

「服部さん、お兄ちゃんを守ってくれてありがとう」


 背後から、あかねの声がした。


「でも、きっと私が動かなかったら、あなたが助けたんでしょ?」

「さあ?

 服部さんが自分の命をかけて、お兄ちゃんを守ってくれた事は感謝してるの。

 でも、お兄ちゃんは渡さないよ!」

「いや、あかね、元々服部は俺を必要としてなんかいないだろ」

「だったら、なんで、命をかけてまで守ろうとするわけがあるのよっ!」

「えっ?」

「たとえ、水野が葉山の事が好きで、私の事をなんとも思っていなくたって、私は水野が好きなのっ!

 だから、水野を守ったんじゃない!」

「そう言う事。

 お兄ちゃんは鈍いんだから」

「えっ?

 そうなの?」

「服部さんも、素直じゃないんだから」

「いい!

 ちゃんと、この戦い、勝ちなさいよっ!

 容姿に騙されてるんじゃないよ!」

「どう言う意味なんだ?」

「戦いはまだ終わっていないって事」

「教祖の高山も、偽物 凛も倒したはずなのに?」


 服部もあかねも頷いている。俺の知らない事を二人は知っているらしい。


「どう言うことなんだ?」


 そう俺が口にした時だった。


「来るぞ!」


 ひなたの父親が突然叫んだ。

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