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急襲! 鬼潰会本部

 あかねが語った話はやけに具体的だが、そんな事になっていたら手術して入院以外ありえない。

 それどころか、最悪の場合、死だってあり得る。

 だが、俺の知っているあかねは病気で入院した事があるだけだし、あかね本人も病気以外で入院した記憶は無いと言っている。


 では、あかねの脳裏に浮かんだこのイメージは何なんだ?

 明確な答えを持っていない俺がそう考えた始めた時、あかねの心配事の本質に気づいた。


 あかねソード。

 父親から渡されたのは、あかねが退院した日だった。

 もしかして、病気と言うのは書き換えられた記憶であって、本当は男に襲われて大怪我をした?

 そして、その事に気づき、あかねが不安になっている?


「分かった。分かったよ。あかねが気にしている事」


 あかねが顔を横に向けて、俺を見つめた。


「もし、そうだったとしても、あかねを傷つけないようにと、お父さんが思っての事だったんじゃないかな?」

「そ、そ、そうなのかな」

「ああ、きっとそうさ。

 だから、その事は気にするな。

 本当は怪我だったのかも知れないし、それは夢かなんかであって、やっぱ病気だったのかも知れない。

 でも、全てはお父さんはお前の事を思っての事だ。

 過去に何があったって、今のあかねはあかねだろ。

 俺はあかねが好きだし、お前を守る。

 どんなあかねだって」

「たとえ、私が悪魔みたいでも?」

「ああ。小悪魔でも、天使でも。

 でもな、笑顔のあかねの方がお前には似合っているぞ」



 あかねの肩を抱きしめていた腕の力を強めて、言った。

 あかねが微笑んだ。

 あかねの笑顔。

 なんだか久しぶりに見た気がしてしまう。


 小悪魔の笑顔だって、天使の笑顔だって、何だっていい。

 あかねが微笑んでくれるなら。




 とりあえず、元気を取り戻したあかねを連れて、俺たちはコロニーの中で、あの写真を見せて父親や凛の事を知っていないかたずねてみたが、凛や父親は見た事が無いと言う事だった。

 そして、このコロニーは予想通り支配者がいないばかりか有力な勢力もいないため、ある意味無秩序な無法地帯状態であると言う事だった。所詮、法と言う名の力であろうと、暴力と言う力であろうと、支配層と呼ばれる者たちが何かの力で押さえつけなければ、人間社会は秩序を維持できない危ういものらしい。

 だとしたら、治安の確立が急務である。無法地帯に素早く治安を確立できるとしたら、軍だろう。

 そう感じた俺は軍に進駐してもらう事を大久保に進言し、大久保はその通り働いてくれ、数日ほどで軍が進駐してきた。


 治安が確立されれば、このコロニーに俺たちが居座る理由もなく、再び爆心地を目指すことにした俺たちに、なぜだか進駐してきた軍の副官の高垣と言う50前半っぽい男もついて行くと言ってきた。


 なんで?

 と言うのもあるが、軍の幹部。

 あかねが「使えるものはつかわないと」と言うので、役に立つこともあるはずなので、一緒に行動する事にしたのだが、一人でいる高垣はあまり使えなかった。コロニーの外を行く俺たちに襲い掛かって来るあの生き物たち。高垣も一応銃器は持っているらしいが、数も分からないほどいるあの生き物たち相手に撃ちまくっていたら、弾がすぐに無くなってしまうので、全く銃器を構えようともしない。


 という訳で、ほとんど戦闘力0。あかねに「使えない奴」と言われかねない状態だ。使えない高垣は当てにせず、あの生き物たちを俺とあかねの二人だけで処分しながら進むうちに、一つのコロニーにたどり着いた。

 そのコロニーに特に目的があった訳じゃない。お腹も空いてきたので、何か食べ物でも的な思いで足を踏み入れたコロニー。

 活発な商いと言うものは感じられないが、確実な統治者がいるらしく、治安が保たれている感がある。


「高垣さん、ここって、教会支配下でしょうか?」


 軍として情報を持っているのではと思い聞いてみた。せめて、こんな事くらいは役に立ってもらいたい。


「ここは違うはずだ」

「そうですか」


 そう俺が言い終えた時、なずなが近くにある掲示板らしき物の前で言った。


「でも、教会の影響が強いんじゃないのかな?」


 なんで、そう思うの? と言う思いで目を向けると、なずなは掲示板に貼られている一枚の紙を指さしていた。近づいていくと、それは教会からのお知らせとして、「レーザー兄妹は教会の敵。見かけたら、教会支部まで」と記され、俺たちと大久保の写真が見事に印刷された貼り紙だった。3億○リーの賞金首のWanted気分だ。


「俺たち教会の公式に敵になったって訳か?」

「お兄ちゃん、あれだけの事したんだから、当然だと思うんだけど。

 元々味方じゃなかったんだし。

 まあ、いいんじゃないのかな?」


 あかねは俺よりおとこらしい? 小悪魔はともかく、ワルなら俺よりも男らしくなきゃ。と、納得。いや、納得しちゃならんだろう。


 とにかく辺りに注意を払いながら、コロニーの中を進んで行く。暴力や荒んだ雰囲気は見受けられないが、行き交う人たちはどこかおどおどした感じがする。このコロニーは教会の支配下じゃないと高垣は言ったが、教会の影響力は大きく、教会の敵に認定されてしまった俺たちを見て、戸惑っているのだとしたら、教会にチクりに行く者たちがいるかも知れないなんて思っていると、予想通り教会側からのお迎えがやって来た。


「お前ら、レーザー兄妹だな。

 我ら教会は、お前たちを敵と認定した」


「我ら教会」と名乗ったのだから、予想通り教会関係者がやって来たのだろうが、俺の予想と全く違ったのは、その風体だ。一人はアロハのようなシャツを着て、髪を金色に染めた若者で、鼻に耳にと顔中ピアスだらけ。もう一人は、派手なスーツに真っ黒なサングラス。教会関係者と聞いていなければ、危ない闇社会の下っ端とその兄貴分と思わずにいられない風体である。


「本当に教会の人?」

「ここは元々は鬼潰会が支配するコロニーだったんだ」


 あかねの質問に、高垣が答えた。

 鬼潰会。闇社会の大物だ。とすれば、目の前の二人の男の風体も納得だ。

 さて、どうしたものか? と、思い始めた矢先、あかねが二人に言った。


「だから?」


 闇社会の大物の配下を相手にしても強気だ。もしかすると、あかねは闇の勢力も凌駕するほどの悪なのかも知れない!! かわいい子がそんな一面を持っているなんて、ぞくぞくしてしまう。俺って変?


「大人しくしていれば、殺しやしないよ。

 そのまま教会本部に引き渡す。

 抵抗すれば、死んでもらうだけさ」


 ピアス男が言い終えた時、ピアス男の顔の前に、あかねのあかねソードの切っ先が向けられていた。


「ひっ!」


 そんな声を上げて、ピアス男は尻餅をついた。


「こいつ!」


 もう一人の派手スーツ男が懐に手を突っ込んだ。


「動くな!」


 高垣が先にピストルを向けて、懐に手を突っ込んだスーツ男を恫喝したので、スーツ男は懐に手を入れたまま、動きを止めた。その素早さ、さすがプロだ。

 尻餅をついたピアス男に容赦なく、あかねはあかねソードの切っ先を向け続けて、にんまりとした笑みを浮かべている。やっぱり、悪だ。妹が悪に染まっちまった。

 でも、ちょっとそんな妹にぞくぞくしてしまう。って、やっぱ俺って変?


「こいつらが教会の教えに心酔しているとは思えない。

 ちょっと、教会の話を聞きにいきませんか?」

「そうさせてもらいましょうか」


 高垣が同意した。教会の情報を聞き出すためとは言え、かつての闇社会の大物の所に行くなんて、俺的には拒否したいが、そんな流れではなさげで、俺たちはピアス男とスーツ男の二人を道案内に、鬼潰会の本拠地に向かう事になった。


 教会ある所に灯りあり。

 鬼潰会の本部改め、教会支部の正門には監視カメラが付いていて、動作している事を示す赤いLEDが点灯している。俺たちがあかねソードで二人の男を脅している事は、中にいる者たちにもう見つかっているはずで、向こうから迎え撃ちに出て来ると言う可能性もある。


「どうしたものかな?」


 そう呟いた時、あかねのあかねソードが大きく弧を描きながら振り上げられた。

 ドシャッ。

 そんな音を立てて、監視カメラが地上に落下した。

 宣戦布告だ。あかねがいきなり対決を宣言しちゃいました。


「あ、あ、あかね。突然何をするんだよ」

「だって、穏便な話し合いなんてないんじゃないかな?

 だったら、私たちも戦いますよって、示しておいた方がよくないかな?」

「お前、乱暴と無茶はいけないって言っておいただろう」

「あ。そうだった。てへっ」


 自分の頭をこつんと叩きながら、ちろりと舌を出した。

 小悪魔のかわいさ復活だ! 


「この二人はとりあえず、ここで監視しておこう。

 大久保さん、この銃をお渡しするので、なずなさんとこの二人をここで監視しておいてくれないか」


 高垣が言った。俺とあかねのほのぼの? いや、小悪魔ムードとは関係なく、高垣たちはマジな雰囲気で、高垣から差し出された銃を大久保が頷きながら受け取っていた。

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