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パニックラプソディ  作者: 葉月迷迷
12/13

美奈子再び

クリーニング屋を出てから一同は良太のアパートに戻った。

 高級なタクシーから良太と田村君子のみが外に出ると、田村君子は大きく伸びをして空を見上げた。

 やたらと星が見える夜だった。

「あああ、今日は仕事したなあ~」

 ものすごく晴れ晴れとした様子で言う田村君子にタクシーの中の阿部と石本は苦笑いしながら溜息をついた。

「じゃあオイラ達はこのままこのタクシーで家に帰るから、きみっちょも気をつけて帰りなよ~」

「きみっちょは落ち着けばやれる人だから明日も頑張ってね」

 二人のささやかなエールが田村君子を満面の笑みにした。

 月の光に照らされて膨らんだ田村君子の頬は幼子のように見え、良太には可愛らしく見えた。

 タクシーが去った。

 残された二人はそこでようやく一日の疲れが一気に出たかのように大きく溜息をついた。

 二人は歩きながら社用車の止めてある空き地へと歩いた。

「まあ、良かったじゃん。信じられないくらいにいろいろあったけど結果オーライでさ」

「そうですね。良太さんにはこの度は本当にお世話になりました。何度お礼を言っても言い足りないくらいです」

「いや、いいよ、別に俺なんてなんにもしてないし」

「はい、なんにもしてませんが、でもね…」

「そこは否定しないんだ?」

 良太が苦笑いする。

「すみません、でもね、こんな不器用でどうしようもないワタクシにここまで付き合ってくれて、親身になってくれて…犠牲になってくれて…その…」

 そう言うと田村君子は泣き始めた。

 いきなりのことに良太は驚いた。

 良太が無言でハンカチを差し出した。

 田村君子が無言で受け取り、思いっきり鼻をかむ。

「涙拭くんじゃないのかよ!」

「ごめんなさい」

 そう言うとハンカチを良太に返そうとしたため、

「いらねーよ、ばっちいな!」

 田村君子はそれでも良太にハンカチを返却し、自分のポケットからハンカチを取り出して涙を拭いた。

「持ってんのかよ!」

「良太さん…こんな…空気も読めない、あわてんぼうで、失敗ばかりな、こんなワタクシにこんなに関わってくれてありがとう…」

「いや、だからいいっ…」

 次の瞬間、良太は一瞬何が起こったのかわからなかった。

 田村君子が良太の胸に抱きついてきたのである。

「はいっ…?」

 裏返った声を出す良太の胸の中で田村君子は堰を切ったかのように泣きじゃくり始めた。

 良太は震える手で、田村君子の背中に手を回すべきか戸惑ったが、田村君子の汗の匂いと香水のほのかな香りを感じるや、次の瞬間には自然に背中に手を回していた。

自分でも情けないほど心臓がバクバクと音を立てている。

 体中が熱くなる。

 彼女のこの行為は一体何を意味するのか?

 恋愛の始まりを意味するのか?

 それとも単に男女の友情の始まりを意味するのか?

 はたまた子供がついつい泣き出してしまったのを大人が受け止めているだけのようなものに過ぎないのか?

 良太には答えが出なかった。

 しかし田村君子を抱きしめている自分が確実に彼女を異性として強烈に意識しはじめたことは確かであり、胸の鼓動が止まらず、体中が熱くなるのを感じていた。

 どのくらい抱き合っていたのかは定かではないが、人が歩いてくる音が聞こえた辺りで二人は自然に体を離した。

 田村君子が社用車に乗ろうとした時、

「あ、そういえばワタクシ、お酒飲んだんだったね…」

「そうだな、さすがに運転はまずいか…」

「はい、さすがにまずいです。ワタクシの運転がますますヤバくなるのは当然として、それ以前に飲酒運転は社会的に非常にまずいですので代行で帰ることにします」

 田村君子は携帯で代行に電話し、十五分後には代行がやってきた。

 車に乗り込んでいく時、田村君子は大きな声で言った。

「良太さん、本当に本当にありがとうございました!また明日からワタクシ一生懸命働いて、絶対に絶対に良太さんにも激レアヨーグルトをとっていただきますので何とぞよろしくお願いいたします!」

 そういい無邪気に微笑む田村君子に、

「やめてくれえ!とっとと帰って寝ろ!じゃあな」

 と苦笑いして良太は応えた。

 そして二台の車は夜の町へと消えていった。

 田村君子が去り、辺りが一気に静かになり、良太はアパートまでのわずかな道を歩いていた。

 月と星に照らされた用水路の水が揺らめいている。

 田村君子という女との突然の出会いは良太にとって衝撃的だった。

 良太は何もかもどうでもよくなっていた自分が恥ずかしく感じていた。

 自分は果たしてあいつのようにがむしゃらに何かに向かってぶつかっていたのだろうか?

 自分は果たしてあいつのように叩かれても罵られてもその都度立ち上がり、何かに向かって全力で走っていたのだろうか?

 現実逃避そのものが趣味になっていて、現実と向き合うことイコールくだらないという根拠のない言い訳に自己陶酔していたのではないだろうか?

 良太は自室に入り、万年床に横たわった。

 さて、これから俺はどう生きるべきかな…。

 そんなことを三十分程考えているうちに眠気が襲ってきた。

 その時、携帯の着信音が鳴った。

 携帯には「美奈子」の名前が表示されていた。

「はあ…?」

 良太は顔をしかめた。

 一瞬電話に出るのをためらったが、気になるのでとりあえず電話に出てみた。

「りょうクン~。起きてた?」

「ああ」

「今夜のパーティでは不快な思いばかりさせてごめんね!」

「………」

「アタシあれから考えたの。つークンに許嫁がいるなんて初めて知って…そしたらね、アタシ…なんか…その…なんて言うんだろう…つークンにとってアタシって結婚するまでの猶予期間の、遊び相手の一人に過ぎないのかなあって思って…実際、あの許嫁の翔子ってコにさっき言われたの。『つークンの恋人何号さんだっけ?心配しないで、翔子は結婚するまでの間はつークンのことをとやかく言わないし。だって結婚してから浮気とかされたくないし、翔子だってしたくないから、だから今はお互い遊びまくっているの。だからあんたもせいぜい今のうち楽しんでね。つークンお金持ちだから今のうちにたくさん貢いでもらえばいいわよ。まあ社長夫人は翔子がなるんだけどね。そこはごめんねえ』…なんて言ってた…」

 相変わらず一方的にしゃべる美奈子に、冷めた声で良太が聞く。

「…んで、何が言いたいの?」

「も~う、結論を急がないでよお~これだから男の人っていやなのよお。それでね、なんかすごく虚しくなっちゃったのよ。これだとまるでアタシが単なる性処理便器みたいじゃないの~。ベッドのお相手だけして、いずれはポイッって捨てられるんでしょ?そんなの絶対に嫌よ!それにアタシにだってプライドがあるわよ。そう考えたらね…なんかね…」

「何だよ」

「冷めちゃったみたいな?」

「はあ?」

「やっぱりね、アタシはね、つークンの言うとおりかもって思った。アタシってつークンそのもののことが好きってよりもお金や権力を持っているつークンが好きだったのかもしれない。だからね、アタシ、結局りょうクンが一番好きだったんだなあって…」

 良太はその時点で電話を切った。

 ふざけるな、調子良すぎるにも程があるだろ、ここまで来るともはや笑えてくる。

 人のことポイッって捨てたのはまさにお前だろ!

 いきなり捨てられるってどんなに切ないことかを思い知ればいいと良太は思った。

 すると再度電話がかかってきた。

 良太は一応電話に出た。

「お前、自分がどんだけ都合のいいことを言ってるか知ってるのか?」

「ごめんなさい…調子のいいこと言っているのはわかっている。でもね、りょうクンならこんなアタシでも受け入れてくれる気がして…アタシ人一倍寂しがり屋なのよ…アタシ一人じゃ生きていけないの。でも偽りの愛はいらないの」

「おめえが一番偽りの愛だらけじゃねえか!じゃあな!」

 良太は再び携帯電話を切り、それを壁にぶん投げようとして思いとどまった。

 ふと昔聴いたロックミュージックが頭をよぎった。

 良太はテレビの横にあるエレキギターを手に取り、万年床にあぐらをかいて座り、コードを適当に鳴らしてみた。

 チューニングがかなりずれていたので直し始めた。

 ようやく直り、開放弦を鳴らした後、試しに苦手なギターソロを弾いてみる。

「もういっぺんやれるかな…」


 気づいたら翌朝の九時だった。

 ギターを抱いたまま寝ていたようだ。

 頭をかきながら携帯を見る。

 メールが入っていた。美奈子からだった。

 深夜二時半のメールだった。

 たまたま気づかないで寝ていたが、この女は人の迷惑を一切考えない自己中心的な女だと改めて良太は思った。

『ごめんなさい。どうか許してください。つークンとは別れます。もう一度付き合ってください、お願いします』

 良太はメールを無視し、放置した。

 顔を洗い、歯を磨き、身支度を整えた。

 今日は月曜日、2限目の英語からである。

 良太は余裕を持って家を出た。


「いやあそれにしても昨日は濃い一日だったなあ!あのあと良太はきみっちょとどうなったんだ?ヤったのか?」

 ニヤニヤ笑いながら言う阿部に良太は呆れて呟く。

「んなわけねーだろ、別になんにもねえし、そもそもそういう関係じゃないし」

「でも抱き合ったとこまで行けたのは僕から言わせれば随分な発展だぞ!」

 唐突に石本が言った。

「な!なんでお前、俺たちが抱き合ったことを知っているんだ!まさかまたお前ら影からこっそり見ていたのか!」

 思わず叫ぶ良太に二人は声を合わせて言った。

「えっ?本当に抱き合ったのか?」

「えっ?い、いや!」

 石本の冗談を間に受けて思わず暴露してしまった良太は体中が熱くなるのを感じた。

「ちっくしょう!なんでオメエだけモテるんだよお!」

「君は本当に引っかかりやすいな。そうかついに君にも二人目の彼女が…」

「い、いやだからまだそうと決まったわけじゃ…」

 あたふたする良太を二人が冷めた目で見つめる。

「やっぱオメエはオイラ達と違ってリア充体質の人間なんだな…あーあ」

「僕はもっと君と語りたかったよ」

 二人はまるでもう自分たちの仲間ではないというような口調でつぶやく。

「おいおい、なんだよそれ。別に俺は…」

 そういうと良太の携帯が鳴った。

 すかさず二人が良太の携帯を見る。

『田村君子』

「ほうら来た!頑張れ頑張れ!」

「何を頑張るっつんだよ!」

 阿部の冷やかしを無視して電話に出る。

「良太さああああん!ありがとう!ありがとう!本当にありがとう!マスターキーがみつかったおかげで何事もなくいつもの業務ができています!」

 携帯電話からはみ出るくらいでかい声で興奮しながらしゃべる田村君子だったが、良太はその無邪気な声が妙に愛おしく思えた。

「そ、そうか良かったな」

「あ、ところで…ワタクシ、昨夜、もしかして…良太さんに、その…だ、抱きついたりしてないですよね…?」

「い、いや、思いっきり抱きつきましたけど…」

「うそおおおおおおお!」

 さっきの喜びの報告が一気に不合格通知を受け取ったかのようなショッキングな声へと変わり、田村君子は動揺しながら言った。

「あ、あ、あれは…て、てっきりワタクシが夢で見たものと思っていたのに…現実だったなんて…、あ、悪夢だわ!」

 良太は「悪夢」という予想外の言葉にショックと怒りを覚えた。

「な、なんだよ悪夢って!それどういうことだよ!」

「ワ、ワタクシ、ま、まだその…キ、キスもしたことないのに、男性と抱き合うなんて…」

「いや、一般的な順番としては合っているだろう?」

「そ、そうなんですか?ワタクシ、そういうのよくわからなくて…でも、でも、そういうのは結婚してからじゃないとっ!もおおお!いやんいやんいやんいやーん!」

 いきなり電話が切れた。

「……………」

 なんなんだこの女は…。

 携帯からはみ出て聞こえた声は当然阿部も石本も聞き漏らしてはいなかった。

「…なんだかメンドくせえオナゴだなあ」

「僕は交際したいとは思わないな。まっ良太、頑張りなよ」

「お前らなあ…」

 良太はあの抱き合った夜のことを思い出していた。

 あの時の二人は確かに何かでつながった気がした。

 新たな恋の予感を感じずにはいられなかった。

 そしてそれは田村君子自身も同様だと思っていた。

 それがよりによって『悪夢』という言葉で片付けられてしまうとは…。

 僅かにでもドキドキしていた自分が最高に恥ずかしく感じた。

 自分のことを何がで殴ってやりたい気持ちになってきた。

 するとそこへ高飛車なハイヒールの音とともにバブルの生き残りのような女が現れた。

「美奈子…」

 美奈子は赤いミニスカートに紫のキャミソールで腕を組んで現れた。

 アクション映画のボンドガールみたいだ。

「りょうクン…」

 いつものテンションがなく、美奈子にしてはかなり深刻そうな顔をしている。


 海岸には誰もいなかった。

 悪天候ではないがいつになく波が荒々しく海岸に押し寄せている。

 海鳥が何匹も鳴きながら飛び回っている。

 ゴミひとつない海岸、この辺のボランティアや自治会がいかにきれい好きかがわかる。

「りょうクン…アタシのことワガママでどうしようもない女だと思っているでしょう?」

「当たり前だろ」

「りょうクン、アタシが元いじめっ子って知って性格の悪い女だって思ったでしょう?」

「当然だ」

「りょうクン、アタシのこと嫌いになった…?」

「普通嫌いになるだろ、あんだけのことをさせられたら。俺のプライドはズタズタだぜ」

「そっか…そうだよね…」

「何が言いたいんだ?」

「言いたいことは、昨日も電話で言ったとおり…」

 良太も美奈子もそこからしばらく無言になった。

 飛行機が音を立てて空を飛んでいく。

「りょうクン、アタシねっ!その…」

 その時良太の携帯が鳴った。

『田村君子』

 良太は一瞬胸が熱く感じ、電話に出ようと思った。

 しかし『最悪』という言葉が頭をよぎり、電話に出るのをやめた。

 美奈子は話を続けた。

「りょうクン、アタシどうにかしてた!アタシね!りょうクンが思うほど尻の軽い女じゃないよ!そりゃ、確かにつークンともエッチしたけど、でもね、なんか違うの!許嫁がいるって初めて知ってからなおさら虚しくなって…、りょうクンはお金もないし、ルックスだって別に特別カッコいいわけじゃないし、スポーツも勉強も別にできるわけじゃないのに、でもね、アタシそんなありのままのりょうクンが好きなんだって気づいたの!りょうクンが望むなら、アタシ、こんなエロい格好もやめていいし、もう隠れて合コンもでない。隠れてキャバクラや風俗のアルバイトもしないし…」

「そんなことしてたのかよ!」

 その時、良太のメールの着信音が鳴った。

『田村君子』

 良太はメールを見てみた。

『良太さん、この度、激レアヨーグルトパート2が…』

 良太は携帯をポケットに戻した。

「アタシ、りょうクンと出会って変わったんだよ!初めて一人の男の人を愛そうって思ったんだよ!つークンに一時惹かれたのはまだ未熟なアタシが残っていただけなの!つークンのことを好きだという気持ちなんて、今考えてみたら全然なかった!ただ、つークンと一緒だと、自分がお姫様か女王様になれた気分になっていて、アタシそれに酔っていた。アタシそれを恋と勘違いしていたんだ」

 良太は先ほどの田村君子のメールが単なる営業のメールだったことを思い出し、しょせん自分は営業のターゲットにすぎないのだなという思いがじわじわと湧いてきた。

 考えてみれば田村君子のことを良太はまだまだ全然知らなかった。

 たまたま営業に来ただけの女のために自分はどれだけつくしたのだろう。

 なんであのありえないほどしつこい営業女のために街を行き来し、怖いオニーサンに絡まれ、土下座をし、服を選び、わけのわからないパーティに参加した上、鍵のありかにいちいち付き合ったりしていたのだろう。

 自分はどれだけ暇人だったのだろう。

 考えてみればあの時の自分は美奈子にフラれ、その空白を何かで埋めたかったのかもしれない。

 そこにたまたま現れた女、それが田村君子だったというだけに過ぎないのだ。

 つまり田村君子は美奈子にフラレた苦しみを紛らわそうとして関わっただけにすぎないのだ。

 そして当の田村君子は良太のことを別に恋愛対象になど思っていないようだ。

抱きしめあったあとの感想→『最悪』。

自分に近寄ってくる目的→『激レアヨーグルト1そして2』

 そう考えると良太は、美奈子とやり直すことも悪いことではないかもしれないと思い始めた。

 その時また着信音が鳴った。

『田村君子』

 また営業攻めかよ…。

 良太は電話に出なかった。

 着信音が止まったあと、良太は先ほどのメールを一応読んでやることにした。

 もう一度美奈子とやり直すきっかけのためにも、田村君子がいかに自分のことを単なる営業対象としてしか考えてないかを確認したかったのである。

『良太さん、この度、激レアヨーグルトパート2が出たんだけど、ワタクシがパート1の方が美味しいって言っただけで異動させられることになって…。それも通勤時間だけで二時間もかかる山奥の工場の倉庫らしいの。仕事内容もあやふやで、正直、これってパワハラかいじめじゃないかって思うの。ワタクシやめたほうがいいのかな?涙がとまりません。正直もう消えてなくなりたいです。異動で二時間もかかる山奥に通勤っていう時点で引越しもしないといけないし、そうすると良太さんとも会えなくなってしまう。ワタクシもうヨーグルトなんてどうでもいいです。親戚のコネで入らせてもらった会社ですが、もう限界です。何よりも良太さんに会えなくなるのがとても切ないです。今も会いたいです。貴方に会いたい。会っていっぱい話がしたいです』

 そのメールを読んで良太は胸の高鳴りを抑えることができなかった。

 田村君子の容姿が脳裏をよぎる。

 抱きしめた時のぬくもりが脳裏をよぎる。

 満面の笑が脳裏をよぎる。

 顔をクシャクシャにしながら子供の様に泣く姿が脳裏をよぎる。

 良太は携帯をポケットにしまった。

「りょうクン?」

「美奈子、ごめん、もうお前とはつきあえない」

「え?」

「俺、好きな人がいるんだ」

 美奈子はその場で凍りついたかのように固まった。

 長い髪だけが風になびいていた。

「もしかしてきもこ?」

「その言い方はやめろ」

「あんなションベン臭くて融通のきかない女の何がいいの?」

「少なくとも香水臭くて尻の軽い女よりはマシだ」

 美奈子が歯ぎしりをしながら良太を睨みつけた。

「あと、俺の好きな人が誰であれ、少なくとももうお前と付き合うことはない。俺はつークンの代わりにはなれない」



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