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ウイスキー・ボンボン

作者: 東條 瑛梨

「まだ時間あるわね…」


私はバイクを走らせた。

バイトに向かうときに通るいつもの道ではなく、通いなれた細道に入る。

小さな贈り物を持って。


__________________



傷つくのが怖い。

人を信じられない。

裏切られるのが恐ろしくてしょうがない。

いろいろなことを知る度に、背負うものが増えていく。


毎日が苦しかった。


彼の言葉は私を救うと同時に、苦しめていった。


「前向きになりなよ」

「俺にいつまでもおんぶにだっこじゃだめだって」

「大丈夫だよ」




「俺を信じて」


__________________



心から信頼したい、そう思っても、近づいて傷つくのが何よりも怖い。

私はその恐怖に押しつぶされそうだった。


私はそう、ヤマアラシのようだ。


__________________



2月。

もうすぐバレンタイン。

お店に入ればバレンタイン特設コーナーに目が行く。


きらびやかなお菓子たち。

それらは、今の私には眩しく感じた。


その中の一つを取る。

彼の好きそうなウイスキー・ボンボン。


「これが最後の贈り物かもしれないな。」

気づくと、心に思ってたことが声に出ていた。


__________________


バイトは7時から。

今から彼の家に行っても、彼はまだラボにいるはず。

彼がいたとしても、顔を合わせる気はなかった。

会ってしまったら、私はまたその胸に顔をうずめてしまいそうだった。


メッセージカードを入れ、袋をドアノブにかけて、その場を去った。


__________________



翌朝、携帯を見ると、彼からメールが入っていた。

「チョコありがとう、早速食べています。」


自分の心を覆っていた何かが、溶けていく。

それを知らないふりはできなかった。


__________________



傷つきたくないのに、私はいつまでもあなたのそばを離れられない。

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