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軍の美少女エースパイロットを慰安係にするのは無理がありすぎる!

作者: 悠崎(あさ)
掲載日:2025/12/03

初めまして、悠崎あさです。今までpixivで投稿していましたがなろうは初投稿です。

勢いのまま書いたお話ですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。

誤字脱字など気づいたことがあれば気軽に教えてください。

どうぞよろしくお願いします。


 遠い未来、人類は地球の狭い檻から解き放たれ、星々の海へとその生活圏を広げていた。


 パラダイムシフト――そう呼ばれるほどの技術革新がもたらしたのは、恒星間航行を可能にするハイパードライブ、人工重力発生装置、そして人型兵器「オルタバース・ユニット」、通称ALUの誕生だった。


 これらの技術は、人類を宇宙の果てまで駆り立て、新たな国々を興させた。ティランツァ自治連邦はその代表格で、数世紀前に成立した巨大な連邦国家は、銀河の広大な領域を支配下に置き、資源と領土を貪欲に求め続けていた。


 しかし、人類の愚かさは変わらなかった。星の海は平和の楽園ではなく、争いの新たな舞台となった。ヴァレンシア自由共和国はその中で、自由と民主主義を掲げて抵抗する小さな共和国だった。

 共和国の軍隊は、陸軍、海軍、空軍、そして宇宙軍からなり、特に宇宙軍はALUを主力兵器として、鋼の巨人が宇宙空間を闊歩する姿で敵を震え上がらせていた。

 ALUは人間の姿を模した巨大な機械で、パイロットが神経接続して操る。戦場では、ビーム兵器を振り回し、ミサイルを雨のように降らせ、敵機を粉砕する。だが、そんな英雄的な戦いの裏側で、人間らしい醜い問題が蠢いていた。


 ヴァレンシア自由共和国宇宙機甲師団作戦本部は、共和国の首都惑星ヴァレンシアの軌道上に浮かぶ巨大な宇宙ステーションに位置していた。ステーションは銀色の装甲に覆われ、ドッキングポートが無数に並び、ALUの格納庫がその腹部を占めていた。内部は無機質な廊下と部屋が連なり、常に低重力と人工空気の匂いが漂う。


 今日、その一室で極秘会議が開かれていた。部屋は照明を落とされ、壁に投影されるホロスクリーンが唯一の光源だった。空気は張り詰め、出席者はアベラール中将以下五名の将校と、中将の秘書官であるブルクハウセン少尉。皆、軍服を着込み、厳しい表情を浮かべていたが、誰もが予期せぬ方向に話が転がることを知る由もなかった。



 アベラール中将は、灰色の髪を短く刈り込んだ壮年の男で、戦場で数々の勲章を獲得したベテランだった。彼の目は常に冷静で、部下を信頼するが、時には厳しい決断を下す。

 彼の隣に座るレステッリ中佐は、機甲大隊長として知られ、卓越した指揮能力で知られる。無駄な損失を出さない彼は、兵士たちから「鉄壁の父」と慕われていた。

 トゥーレソン大佐は野心家で、瞳に鋭い光を宿し、ホーキンズ少佐は実務派の男。

 グレンデス少佐は寡黙で、観察力に優れる。

 そして、アベラール中将の秘書官であるブルクハウセン少尉。士官学校を優秀な成績で卒業したエリート士官である。




「最近、我らが宇宙軍内にて、風紀の低下が懸念されている。ブルクハウセン少尉、説明を」


 名前を呼ばれた中将秘書官である男性将校――ブルクハウセン少尉が、各自の端末と室内のホロスクリーンに資料を映し出す。


「先日……女性整備士が男性パイロットに性行為を強要されそうになり、彼女が持っていた工具でパイロットの頭部と股間を殴打し、頭部は全治一か月の負傷、股間は……まあ、生殖能力が失われた、ということでお察しいただければと思います」


 高官の一人がヒュッと息を吞むが、ブルクハウセンは気にせず続ける。


「他にも、女性士官や職員からセクハラの報告が増えています。陸軍、海軍、空軍、宇宙軍の中で、我らが宇宙軍がダントツでセクシャルハラスメント系の被害報告が多いです」


 レステッリ中佐が重い口を開いた。「宇宙軍は他よりも閉鎖環境での過酷な生活が続くからな……。だが、これは言い訳にならん。部下の士気を保つのが我々の仕事だ」

 彼の声には、部下を思う父親のような温かさと、軍人としての厳しさが混ざっていた。


「なら一つ、提案がある」


 口を開いたのはトゥーレソン大佐。僅かに野心のこもった瞳と声音で言葉を続ける。


「宇宙軍内で人気のあるパイロット――シエラ・ロックハート少尉を宇宙軍の慰安係にする……というのはいかがだろうか?」


 ――ひと呼吸。ワンテンポ置いて、


「なに言ってんだおめえ」

「大佐は馬鹿ですか?」

「今の発言録音してるか? ブルクハウセン少尉」

「頭にちんぽ詰まってんのか?」

「トゥーレソンの股間も潰しておけ」

「極東皇国のHENTAIアダルトコミックでも読みすぎたか貴兄は」


 トゥーレソン大佐は見事なまでにフルボッコされた。


「なぜそこでロックハート少尉をわざわざ慰安係にしようなんて下品で下劣な発想が出てくるんだ貴様は!」

 レステッリ中佐がデスクを叩きつける。アベラール中将はやってらんねえと言わんばかりに頭を抱えている。


「い、いや……ほら……彼女かわいいし……その……胸もお尻も大きいし……彼女とデキるのであれば、男性陣のモチベーション向上を図れるかと……」


「聞くに堪えん! 少尉! こいつを拘束しろ!」


 アベラール中将の命を受けたブルクハウセンがトゥーレソンを後ろ手で縛り上げ、ついでに口に猿轡を噛ませて完全に拘束する。ちなみにブルクハウセン少尉はぱっと見、線の細い美男子ともいうべきルックスであるが、士官学校時代は軍隊式格闘術で全校一位の成績を叩き出した猛者である。陰でイケメンゴリラと呼ばれていたとかなんとか。


「まさかトゥーレソン大佐ともあろう方が頭ちんぽ野郎だったなんて……」


 ブルクハウセンは呟き、少し乱れた自身の軍服を直した。


「ならばそこの頭ちんぽ野郎の為に、ロックハート少尉を慰安係にした際のデメリットを教えてやれ、ブルクハウセン少尉」


「言わなくてもわかんだろそれぐらいのこと……」


 ホーキンズ少佐が呟く。ちなみにトゥーレソン大佐は縛られたまま床に転がされている。


「ではちんぽ野郎トゥーレソン大佐の為に……」


 ブルクハウセン少尉は気を取り直し、


「まずですね、ロックハート少尉の人気を舐めすぎです。彼女の通り名をご存じですか? 〈ヴァレンシアの救世主〉〈ヴァレンシアの青い悪魔〉〈ペイルライダー〉〈戦姫〉〈ヴァレンシアのデウス・エクス・マキナ〉……。彼女はもはや、この国の人間兵器と言っても差し支えない存在です。彼女が敵機撃墜するたびにわが軍の兵士のやる気はうなぎ上りで戦果を挙げる有様。整備士や後方支援スタッフに感謝の気持ちを述べれば男女問わず昇天。街を歩けば老若男女は彼女を現代のヴァルキュリアと崇め奉り、ファンコミュニティは活況を呈し、ポスターやチェキ、ブロマイドに写真集と売れまくっている。この国のそんじょそこらのアイドルよりよっぽど人気ですよ」


「私の娘もロックハート少尉の大ファンでね……。よく彼女の武勇伝を聞かせるよう強請ってくるよ……」

「ウチも妻や息子が推し活しててね……。彼女を慰安係にでもしてみろ。暴動が起きてトゥーレソンのケツ穴が掘られる未来しか見えん」

「肉便器になるのはロックハート少尉ではなく貴兄だぞわかって言ってんのか?」

「ロックハート少尉が慰安係になるくらいなら俺が尻穴の一つや二つ差し出してやるぞ。あとトゥーレソン貴様の尻穴もだ」

「貴様は我らがエースであるロックハート少尉を娼婦かなにかと見間違えているのか???!!! そんな考え!!! 修正してやるぞ!!!」


 トゥーレソン大佐の顔が青ざめる。ちなみにレステッリ中佐は部下であるパイロット達をわが子のように大切に思っており、シエラももれなく大切な娘扱いである。レステッリ中佐は今はかろうじて理性を保っているが、もし保てていなかったら今頃トゥーレソンのケツ穴に拳銃を突っ込んでいたところである。


「つーか普通に考えてロックハート少尉ぐらいの人材使い潰してみろ。替えが効かんぞ冗談抜きで」

「彼女一人でそこらのパイロット百人分ぐらいの働きだからな。戦力低下著しいなんてレベルじゃねーぞ考えたくもねえ!!!」

「彼女並みの強さを持つパイロットが今後出てくるかどうかすら怪しいですよ最早」


「私としては」


 ブルクハウセン少尉は新たな資料を提示する。


「慰安係という方向性は悪くないと思うので……いっそのこと、手に負えない問題児を慰安係に仕立てるというのは如何でしょうか」


 あれっ? 話の流れ変わったな? とトゥーレソンも含め皆目を丸くした。


 資料に提示されているのは、宇宙軍女性士官であるキャサリン・シェリンガムである。宇宙軍中佐であるモーガン・シェリンガムの愛娘である、が……。


「キャサリン・シェリンガム少尉? シェリンガム中佐の娘の?」

「ええ、あのシェリンガム中佐の。ですが、彼女の評判はロックハート少尉とは真逆で、おそらく宇宙軍どころか全軍の中でもトップクラスに最低値を叩き出しています」

「まあ中佐も中佐だしな」

「なんなら宇宙軍のセクハラ被害の三割ぐらいはシェリンガム中佐からのセクハラ被害だからな」


「キャサリン・シェリンガムの悪評はすさまじいですからね。仕事をしないなんて序の口。指摘すれば口答えして親の権力を盾に逃げる。恋人のいる男性にちょっかいを出して交際トラブルを何件も起こす。そして経費の私的流用疑惑。そしてこれらを告発しようとした男性士官に虚偽の罪を吹っ掛けて退職に追い込む。ちなみにこれシェリンガム中佐も一枚噛んでいるらしいですね」


「よくもまあこんな奴が士官学校を入学・卒業できたな……」


「噂ではありますが、男性教官に色仕掛けしたり買収したり弱みを握ったり家名をちらつかせたり父親におねだりしてして成績改ざんしていた疑惑ありますからね。なんで戦争経済学自分三位であいつが二位なんだよおかしいだろうが!!! クソが!!!」


「少尉同期だったのかよ」

「少尉より成績よかったとか不正確定じゃねえか」


 ブルクハウセン少尉は怒りに震えた拳で壁をぶん殴りたくなるのを堪えながら資料を次々に提示し、話を斜め上の方向に進める。


「ついでにシェリンガム中佐の不正やらなんやら証拠は押さえてあるんで、そこらへん全部告発してシェリンガム一家全員を慰安係にしたほうが後腐れないですって絶対」


「一家全員?!」

「中佐も?!」

「中佐もです!!!」


 ブルクハウセン少尉がバァンッ!!!!! と勢いよく壁を叩きつけた。ついにキレたなこいつ……。と、もはや蚊帳の外になりつつあった中将が同情した。相変わらず簀巻きになっているトゥーレソンも同情した。


「聞けばティランツァ自治連邦の大規模軍事侵攻が数年以内に行われる可能性が高いとの報告が上がっているではありませんか! ならば! 早急!! 速やかに!!! 我らがヴァレンシア自由共和国にこびりつく膿という膿を一掃し! 絶好調のロックハート少尉を擁した状態で! 万全の備えでティランツァを迎え撃つ! 一石二鳥ではありませんか!!!!!」


「愛国心故ですーみたいな言い方しているけど私怨も何割かあるよね少尉???」


 もはや熱弁止まらぬブルクハウセン少尉にほとんど黙っていたグレンデス少佐が口を挟む。


「そもそもだ少尉。効果的にシェリンガム一家を追い込むだけの厄ネタがあるのか?」

「無論ありますとも!!!!!」

「あるのか……」


「夫人はチャリティガラの募金の不正利用に違法風俗で未成年男娼との買春! キャサリンはさっき言った通り! キャサリンの姉で外交官やってるクリスティーナはダブルスパイ容疑にティランツァの諜報員のハニトラに引っかかってる容疑!! 中佐はセクハラと不倫とキャサリンやクリスティーナのアホ姉妹のやらかしもみ消しとティランツァ政府との密通容疑!!!!!」


「うーん死罪待ったなしだな」

「おいおいおい死ぬわアイツ」

「一家全員で満遍なくやべえことしてんな?!」

「いいところが全くねえな」

「でしょう!!!??」


 怒りが最高潮になったブルクハウセン少尉は持っていたタブレット端末を勢いよく床に叩きつけた。ちなみにタブレットはシグマテック・エレクトロ社製の企業用モデルであり、インド象に踏まれても壊れないことを売りにしているので、床に叩きつけられた程度では壊れないタフな剛性ボディであった。ゼーハーと息を荒げた少尉は端末を拾い上げたが、端末はいたって元気であった。


「……いかがされるか?アベラール中将」

「話をこちらにぶん投げてくるなグレンデス少佐よ……」

「ひとまず関係各所に話を通して、軍規改定の面から攻めてみるか……」

「通るかよこんな話」

「しゃーねーだろトゥーレソンの頭ちんぽ野郎が言い出しちまったから慰安係の方向になったんだろ」

「もがが?!(えっ?! 俺のせい??!!)」

「ていうか娘姉妹はともかくシェリンガム中佐と夫人は若くないだろ。需要あんのか?」

「ありますとも!!!」

「あんのかよ」

「さっきからなんなんだよブルクハウセン少尉の謎の自信は」

「実は以前こっそり宇宙軍内部の性癖調査のアンケートを取ったんですけど」

「なにやってんだ少尉ァ!!!」

「『エロい身体だけが取り柄の高慢ちきなクソ女をわからせたい』が驚異の100%、『なんでもいいから高慢ウエメセ熟女ぶち犯したい』が67%、『この際いっそのこと見た目はロマンスグレー系でまあ悪かねえクソじじいを屈辱的な目にあわせたい』が58%という素晴らしい結果になりました。他にも『シェリンガム一家を全員並べて輪姦したい』といった意見もありましたよ」


「我が軍の性癖終わってんな」

「『じじいを屈辱的な目にあわせたい』って選択肢何!?」

「極東皇国のHENTAIアダルトコミックの輸入止めろよ」

「つーかアンケートの選択肢とかどうなってんだよ」

「ちなみにこのアンケート男女どちらにも回答してもらっていますからね」

「我が軍の女は強かであるな。良いことだ」

「そういう問題か?」


「と! も! か! く!」


 気が狂いそうになる話を聞き続けていたアベラール中将が話を強引にまとめる。


「慰安係以前にシェリンガム一家の不正を告発! そこから軍規改定に話を持っていき重罪人を慰安係にする刑罰を与える方向で調整する! ブルクハウセン少尉は引き続き証拠をまとめろ! グレンデス少佐は内閣府に話を通してくれ! ホーキンズ少佐は軍内部の監視を強化するよう各署と調整! 他は追って指示を下す! もうやだ疲れた今日はこれでお開きだ!」


 部屋の明かりがともされ、ようやくトゥーレソン大佐の拘束も解かれる。ブルクハウセン少尉やアベラール中将はともかく、他の将校も涼しい顔をしながらも汗だくになっており、全員ぐったりと疲れ果てていた。


「ところでトゥーレソン大佐」

「なななななんだねブルクハウセン少尉?!」

「まさか〈爆乳艦長〉エスピノ中佐や〈上乳黒タイツ〉ボンネフェルト少佐を慰安係に推薦……とか考えてなかったですよね?」

「そっ! そんなわけっ!!!」

「貴兄は女に恨みでもあるのか」

「ていうかなんだその不名誉な二つ名は」


 こうしてようやくクソみてえな会議は終わり、その後無事にシェリンガム一家は裁判所に問答無用で来てもらうことになり刑務所にぶち込まれる楽しみが待っていたわけで。


 数か月後、宇宙機甲師団所属の艦に無事慰安係が“四人”配属され……宇宙機甲師団所属のパイロットは男女問わずシエラ・ロックハートの活躍に煽られる形で負けじと戦果を挙げ、任務のストレスは慰安係に"すっきり"させてもらうことで常に万全のコンデションを保てるようになった。

 そして、現実になってしまったティランツァ自治連邦の軍事侵攻に臆することなく応戦し、国土と国民を守り抜き、ティランツァ自治連邦にキャン言わせ、ヴァレンシア自由共和国の歴史に輝かしい記録を一つ、残したのだった。


 だが、その裏には、この狂気の会議があったことは、誰にも知られず、歴史の影に葬り去られたのであった。

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― 新着の感想 ―
『予期せぬ方向に話が転がる』って最初に書いちゃってるから、それじゃあ予想の範疇を超えることはないよ、と思ったんですけど。差し出すものが美少女エースパイロットから二転三転、私怨も交えて最終的には自分の穴…
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