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闇の覇者  作者: 快良
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逃走するための道が見えてきた。

だが…。実際問題、アイツから逃げられるのだろうか?


「わかった。俺は…更なる境地へと至るよ。」

『案外決断は早かったな。一応、覚悟を聞いておこうか。』

…覚悟。俺の、覚悟。それは…。

「もっと強くなる。それで…。お前を打ち負かす。」

『…はは、面白いこというな。いいだろう。俺の身体の一部…どこがいい?』

「…髪とかでもいいのか?」

『まあ髪が一番楽だろうな、俺もお前も。おっと、その前に一度魂から離れなきゃな。…よし、これでいい。』

なんだかとても軽くなった気がする…。


「やっほ〜♪見つけちゃった♪」

コイツが…多分さっき話してたラスキーシュって奴だ…!

「ラス…か。コイツは渡さねぇ。丁度コイツから離れたとこだ、ここで1回やっとくか?」

「やるのはいいけどここだと家が…。」

「せっかくだから先攻は譲ってあげるよ」

あぁ…鬼がこんなところで暴れたら…。

「じゃあお言葉に甘えてッ…!」

その瞬間、辺りに衝撃波が生まれた。そして、魂にコイツが居ないとただの人間の俺は吹き飛ばされた。

「おわっ…!?痛っ…!」

「おらっ!」

グリードが殴りかかると、ラスキーシュはスッと身を引き、避けた。

「グリードはいつもワンパターンなんだよっ…!」

「がッ…!?」

グリードは綺麗なカウンターをくらい、口から血が吹き出る。

「はは…お前とやるとやはり命が何個あっても足らないな。っと…!」

ラスはどこからか先に刃のついた鞭を取り出し振るう。その鞭は幾度も宙を舞った。

「はぁ、なかなか当たらないね。」

その間にも鞭は振られ続ける。

…その刹那、グリードの腹に鞭が当たった。

「ぐ…が…」

腹に手を当て蹲る。俺は逃げなければいけないと悟った。だが、なぜだか身体が動かせない。

「身体動かないでしょ?それ、俺がやったんだ〜♪さっきグリードとやってたのはあくまで時間稼ぎ♪」

そん、な…。意識が段々と薄れていく。

その曖昧な視界の中で、アイツがこっちに手を伸ばしている気がした。


「ここ、は…。」

「ここは俺の家だよ♪ようこそ我が家へ」

そう手を差し伸べるが、俺は手足が拘束されているため見ることしかできない。

「あ〜あ、グリードに拾われたんだもんねぇ。酷いこと沢山されたでしょ?でも大丈夫、俺は優しいから♪」

口ではそう言うものの笑みは歪んでいるし声もどこか狂ったような声で怖い。

「そんな怯えんなよッ…!」

「がはっ…!?」

突然腹を蹴られた。内蔵が抉られるような痛み。さっきまでニコニコしていたと思ったら急に声色も変えて俺を睨む。どうやらグリード以上に自分の思い通りに行かないと苛つくようだ。ダメージを受けている俺の髪を掴み、目を合わさせる。

「俺の言うことは素直に聞いた方がいいよ♪…さっきみたいに蹴られたくなかったら。」

「わかっ…た…。」

「…良い子。良い子は嫌いじゃないよ♪」

今は素直に従うしかない、本能がそう語りかけてくる。下手したら…コイツはグリードよりヤバイ奴かもしれない。

「君はまだ覚醒をやってないんだよね?」

覚醒…?この前グリードが言ってたやつか、それともそれ以上の何かか。

「覚醒ってなんだ…?」

「はは、グリードは覚醒も教えてなかったのか。その様子だと融合もしていないみたいだししょうがない。可哀想に。じゃあ俺が身体で教えてあげようか?」

コイツは危ない。本能が告げる。

だが柱に括り付けられているだけのただの人間がオリジナルの鬼から逃げられるわけもない。ジリジリと近付いて来て、もう覚悟を決めるしかないのかと目を瞑った時、建物が燃えだした。

「な、何これ。俺やってないんだけど!?クッソ…。グリード…!」

「ッ…!?」

空から何か降ってくる。あれは…グリードだ。

「残念ながら、簡単に手放す俺じゃないんでな…!」

グリードは俺を抱えて建物から出た。直接こうやって触られるのは初めてだったが、どこか安心感があった。

「ちょっと待ってくれるかなぁ…!」

まさに鬼の形相…というか鬼だけど、明らかに怒っているのは目に見えてわかった。

それより、俺が苛ついてるのはグリードの方だ。

「なんでお前はこんな俺に執着するんだ!弄びたいだけなら他の人間でもいいだろ!!」

聞こえるのは何かを堪えるような声だけで、俺のその問いに答えを返してはこなかった。

鬼の跳躍力は凄まじいもので、ジャンプで建物を出てから優に一分は超えているのに地面からはまだ遠い。地面の方になにやら見慣れた人影が見える。

「あれは…先生!?」

こんなところにいたらこいつらの戦いに巻き込まれやしないか。

「おい、降ろせって!」

少しジタバタしたが一向に離す気配はなかった。

先生が一瞬こっちを見たような気がした。

「ッ…!?」

痛い。この痛みはどこから。

肩だ。肩に、グリードが噛み付いていた。

血が吹き出る。力が抜ける。…なにしろ今の俺はただの人間だ、硬化の力も持たない、コイツに抱えられたままでなにもできない。

「なんっ、で…!」

コイツは、今まで直接俺に危害を加えることはしなかったのに。

…なら。

俺も、グリードの肩を噛み返した。

力が漲ってくる。これが恐らくグリードの言ってた更なる高み。

「がぁっ…!?」

身体が熱い。身体のコントロールが効かない。

コイツはコイツで俺に噛まれたせいで手が緩んだ。

…落ちる。


「目が覚めましたか?」

ん…先生?

「俺は…何で…?あぁ、そうか。アイツは…?」

「急に空から人が落ちてきて…何かと思いましたよ。帝人くん、何があったんですか?」

…なにか、前々から違和感があったが、今ので確信に至った。

「なぜ…俺はこんなに様変わりしたというのに、俺が俺だとわかったんです。おかしいですね。」

「嫌だなぁ、わかりますよ。我が生徒ですから。」

もしこれが先生なのだとしたら、先生には何かあるはずだ。

「…そうか。先生は過去研究者でもあったそうだ。ならば、この現象について知っていてもおかしくはない。…そうでしょう。」

もしそうでないのなら、違う奴が化けてるとしか…。

「…はぁ。仕方ない、鬼に目をつけられた人間ですから、教えるべきだったのは私の方だ。

…驚かずに聞いてください、これは…かつて祖父に聞いたことです。」


「おじいちゃん、話って何?」

おじいちゃんに話があるといって呼び出された。

「あぁ…。一輝、来てくれたか。」

おじいちゃんはいつも周りに花でも漂っているのかというほど柔らかな雰囲気の人なのに、何故か今は真剣な表情をしていた。

「儂は研究者だった…という話をしたことがあったな。」

そう、おじいちゃんは若い時、鬼などこの世界にいるのかもわからないものを研究していた。

「一輝にも研究者の適性がある。いつか一輝も儂みたいに成るかもしれんから…その時に役立つ知識とその話をな。」

おじいちゃんが話してくれたのは、現役だった時の話だった。

「この世界のどこか…或いはまた違う世界のどこかに…鬼というのは居る。鬼だけじゃないかもしれない。妖、悪魔、神…。きっと、どこかにいる。

儂は…会ったことがあるんじゃ。鬼に。」

おじいちゃんの話は半分冗談程度にしか聞いてなかったけど、少し、興味が湧いた。

「鬼は…どんなだったの?」

「見た目はとても恐ろしかったよ。片方にだけついたでかいツノ、隆々した筋肉、でかい図体。怖さに拍車をかける細い目。お前のような歳の子供がみたら泣いちまうだろうな。だが、それと同時に人間のようでもあった。時に怒り、時に好奇心に負け…。

儂が研究の果てに得たものは…。人間と鬼は融合することができるということだ。」

「融合!?!?どういうこと!?」

「あぁ。儂も困惑した。少数だが…。能力持ちというものがいるだろう。」

…能力持ち。突然変異の類とされている、鬼や妖怪などの能力の一部をその身に宿して生まれてくる者達のこと。

「能力持ちは力の一部だけだが…。直接融合すれば殆どの力が、それも非常に強いものを受け継げる上に、後付けでも能力を持つことができる。」

そんなの強すぎる。それに、融合した場合、その鬼はどうなるんだ。

「どうやるの?」

「…。簡単だ。人間が鬼の一部を食せばよい。

肉だろうが髪だろうが爪だろうがなんでもいい。」

…食べる?鬼を?

「それ、鬼はどうなるの?」

「あぁ…。鬼はな、その人間が死に、魂が消えるまで魂で結ばれる。魂で結ばれると、片方のダメージがもう片方も感じるようになってるみたいで…。」

要は、相対的に体力の多い鬼の方が生き残る設定だ。

「これは…その会った鬼と研究して分かったことだ。」

「そんな研究に付き合ってくれた鬼がいたの?」

「あぁ…名前は…。」


「名前は…なんて言いましたっけ…。祖父が死ぬ前の話なので、如何せん記憶が曖昧で…。」

研究に付き合うほどの鬼。グリードに聞いたらわかるかもしれない。そういえば、アイツは今何をしているんだ?

「ありがとうございました。身体の方はもう大丈夫ですから、もう行きま…ッ…!?」

「どうしました!?」

なん、だ…?これ…。腹が痛い…!この痛みは…。さっきの…。

「さっき、ダメージが共有されるって…。なら…。」

アイツがダメージを受けてるということじゃ…?

視覚的にではないが…。アイツの位置がわかる。

これが魂を結ぶことの利点か。

…これ、俺がグリードを殺したらどうなるんだろうか。力がなくなるのは予想がつくが…。だが、ダメージが共有されるのなら、俺の方が先に…。

じゃあ、やっぱり人間は鬼より弱いんだ…。世界の仕様にすら負けている…。

「クッソ…!」


「はっ…」

またやったのか。二度と同じ過ちは繰り返さないと、あれほど。

最初はたしかにこの腕の中にいたはずなのに。

それにここはどこだ…?拘束され、力が出せない。ただの拘束なら簡単に破れるが…鬼ですら破れない拘束をできるのはアイツしかいない。

「ねぇ…グリード。」

…ラスの声だ。

「人間は鬼を喰べるとより精度の高い鬼の力を手に入れられる。…なら、鬼が鬼を喰べたらどうなると思う?」

「おい…まさか…。」

「その通り!君の肉を、心臓を食べたらどうなると思う?」

まさか…コイツは、最初から…。

「最初から…目当ては俺の方だったってのか?」

「いいや?最初に帝人くんを狙ったのは本当だ。でも鬼と融合したらどうなるかとかの結果はもう出てるでしょ。結果が出てるものに興味は無いよ。俺が興味を示すのはまだ誰も試した事のないものなんだよ、わかる?」

「…!じゃあ、もう帝人は俺と融合を…?」

コイツの好奇心は恐ろしい。興味のあることなら自分の身が脅かされることも平気でする。

「おい、というかなんでお前がそれを知ってるんだ…!」

コイツが知り得る訳がない。それは…その実験を手伝ったのは…他でもないこの俺だって言うのに。

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