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闇の覇者  作者: 快良
31/33

組織

いい感じの洞穴みっけ。って...。

「まあ、行き着く先は同じだよなあ。」

グリードもここにたどり着いたようだった。

「じゃあ、愛王さん呼んでくるから、ここで待っててくれ。」

「はいよー。」

グリードにそう告げて、俺は最初の浜辺へと向かった。

呼びに行くのもそうだが、疲れている人間とでも難なく進めるルートを探しておかなくては。

「こっちは...ひたすら森だな。」

木々が生い茂っている。疲れている状態の人間を通すには向かない。かといってさっきの湖の方を通すわけにもいかない。この島は、中心に大きな...岩?があり、その周りに木々が生えている感じだ。さっきの湖が西側にあったから東に来てみたが...。これでは空を飛ぶぐらいしか...。

まあいいか、いざとなったら木をなぎ倒せばいい。できるだけ自然破壊はしたくないがな。

そうこう考えてるうちに、浜辺についた。

「愛王さーん?」

愛王さんを呼ぶが、返事はない。代わりに...。

「とんだ出迎えだな。」

ひふ、みぃ...計十人もの男たちが俺を一点に見つめる。さっきの洞穴にいるであろうグリードに語りかける。

(なんか変な格好した奴らが十人いる。これぐらいなら問題ないが...肝心の愛王さんの姿が見当たらない。恐らく攫われただろう。一応コイツらを尋問するが...期待はしないでくれ。)

(わかった。俺は近辺の海を見てそれらしき人影がないか探してこよう。)

作戦開始、だ。

「ひとつ聞いていいか?」

返事はない。

「お前らは何者だ?」

やはり、返事はない。

ま、そんなことだろうと思ったが。

「じゃ、行くぞ。」

俺はナイフを創り、懐に潜り込む。

「そこ」

脇腹を掻っ切る。相手は、血を流しながらもこっちによってくる。というか、コイツらは能力持ちなのか?また人間の組織か?そんな疑問を持つと、答えはすぐ返ってきた。

「なるほど。」

一人一人の能力は桃香ぐらいといったところか。さっき切った男の脇腹の傷はもう塞がっている。剣で戦うのは分が悪い。

一度身を引き、全体を見渡す。

終焉(フィナーレ)

容赦なく、確実に。ただ一人を除いて、確実に殺る。

「お前は情報を吐いたら生かしておいてやる。ッ...!?」

言葉を吐いたも束の間、男が眼前に迫っていた。相手の拳を慌てて受け止める。

「っぶねぇ...。」

まあ、今の一撃くらったぐらいでどうこうなるわけでもないが...。無駄な消耗は避けたい。

灼熱(ファイア)

これはもらった。男は今の灼熱を避けれなかっただろう。

「...焼きすぎた。」

加減は難しいな。しかも焼いてしまったから死体からの情報も期待できない。...それにしても、奴らは何がしたいのか。言ってしまえば攫ったのはちょっと強いだけのただのおっさんだぞ。

しかし、どうしたものか。早く帰りたいところだが...。そうこうしていると、見覚えのある人影がこちらへやってきた。

「愛王さんは見つかったか?」

「いいや、いない。少なくとも空と海上にはな。」

あまり考えたくはない仮説が脳裏に浮かび上がる。

「となると...。」

「...あぁ。海底になにかある可能性は高い。といっても、今の俺達じゃどうしようもない。...帝人だけになったから、すぐ帰れるが...。どうする?」

ここでまだ探れば出てくる可能性も高い。なにせ、あんな湖が近くにあるのだ。とても偶然とは思えない。だが...。これ以上素人が出張ってどうにかなるかと言われたら、そこまでだ。

「あぁ。ひとまず帰ろう。愛王さんが案内してくれたここがこうだということは、桃香達も危ういかもしれない。」

「...わかった。ひとまず帰るとしよう。」

グリードはそういって来た方向とは真反対の、森の方へ歩いていく。...まさか。

「あぁ。そのまさかだ。異界を通って陸へ戻る。」

なるほど、空を飛ぶ力も大した泳ぐ能力も持たないグリードがどうしてこんなところまで...と思ったが...。異界を経由してここに出ていたとは。

「...じゃあ、ここにこの湖があることは知っていたのか?」

「なんとなく祠の他に地上と繋がる場所があるというのは知っていたが...具体的な座標はついこの間知った。」

まあ、流石は異界育ちというかなんというか。

「ここからも異界に入れるんだな。どうやって?」

「まあ、見てろ。」

そういうと、湖の近くにしゃがみ、指先をちょんと水につける。すると、水の波紋が徐々に徐々に大きくなり、そこからさっきの龍が出てくる。

「おぉ、さっきぶりだな小僧よ。グリードもな」

「あぁ。異界に行かせてくれ。」

「承知した。さあ、我の背中に乗るが良い。」

促されるまま龍に乗る。なんだか...鱗がぬめぬめしていて気持ち悪い。さっきのワニみたいな...あ。無駄にしてしまった...。申し訳ない...。

そして龍は動きだし、湖の中へ飛び込んでいく。

濡れ...ない?そう思ってふと顔をあげると、そこはもう異界だった。ここはまたなんとも...。

「竜宮城みたいな...。」

水の中にある。でも、呼吸はできる。変な感覚だ。もしかして、人魚とかいるんじゃないか?

「おぉ、グリード様。」

...魚人だった。並びを変えただけでこんなにも別の生き物になってしまうんだから、恐ろしい。

「今は構ってる暇はない。すまないな。」

グリードは結構名も通ってるようで、あちこちで「グリード様グリード様」と声が聞こえる。異界の世界でも恋愛とかはあるのか...?でも、たしか地上と異界の繋がりが絶たれたのは地上にいった妖怪が人間と恋に落ち、挙句に子供まで作ったから...という話だったな。とすると、妖怪の間でもそのような行為は...?

「お前が思ってるようなのはないぞ。」

そういえば、平気で心を読んでくるんだったな。

「基本的に妖怪に性別はない。中には雌固定の種もいるがな。雪女や人魚がその例だ。反対に雄固定の種もいる。魚人や一つ目小僧...。まあ、伝承に細かな設定がある場合だけだ。その点、鬼には特別、性別といった区分はない。ましてや、俺はただの赤鬼だ。他の...酒呑童子や茨木童子までなると性別まで出てくるが...それは名までついている場合だ。」

なるほど...。たしかに人魚などは伝承に性別が絡められている。それでいうと口裂け女などもそうなるのか。そう考えるとたしかに鬼は色んな鬼がいるな。

「そもそも生まれ方が特殊だからな。故に人間のようなリスクの伴う器官をもつ理由がない。」

まあ...それはそうだな。

久しぶりにグリードと一対一でそんな他愛もない話を話しながら、気付けば祠の手前まで来ていた。

「じゃ、帰るとするか。」

視界が一瞬白に包まれ、視界が戻るともう見慣れた場所だった。

「じゃあ、俺はもう行くが。グリードは...どうする?」

「俺は家でお前らの帰りを待ってるとしようかね。じゃあ。」

そうして、グリードと別れた。何も起きてないといいんだがな。



「どうなっているの!?」

たしか...愛王さんの娘さん...清華さんだっけ。やけに取り乱した様子で私達の元に駆け寄ってくる。

「あの男達は....何者なの!?」

「さあ。わしにもわからん。」

なにかペンダントみたいな...組織のわかりやすいアクセサリーがあればいいんだけど,..。そう思って、男の人の身体を見渡す。

「...?」

これは...なんだろう。指輪...。お兄ちゃんがつけてるような、能力を高める類のものか、それとも...?

私がその指輪に触れると、まばゆい光を発する。

「な、なに!?」

「その光ッ...!?」

私が驚いて距離を取ると、ゆうちゃんが前に出る。

「その光は...なぜ...こんなところで...。貰っておこうかの。」

「なんなんですの...!?」

清華さんは取り乱しながらそう問う。すると、ゆうちゃんはやけに暗い表情で答えた。

「これは...随分と前に使われた...魔術の産物じゃ。」



たしか...愛王さんの家はこっちだったと思うんだが...。あったあった。あの屋敷...って。なんだ、この騒ぎは。あの...屋根の上で暴れているのは...。

「...亡霊王?」

すると、亡霊王はこちらに気付いたようで、こっちに向かってくる。

「帝人の坊主。なぜだかわからんが..よくわからん連中に襲われた。」

「....!!」

勘は正しかった。こちらでなにも起きていないとも限らない、と。まあ、亡霊王もクロノスもいるのだからそうそう桃香が危険に晒されることはないと思うが。

「...俺らも恐らく同じ組織の襲撃を受けた。桃香は?」

「クロノスと一緒に中にいるんじゃないか。」

「...わかった。桃香を助けてくれてありがとう。」

桃香...!!万が一もあり得ないにせよ、気持ちが逸る。

「桃香ッ...!!いるか!?」

「お兄ちゃんっ?」

俺が入り口の扉を勢い良く開いて桃香の名前を叫ぶと、横の部屋から桃香がひょこっと顔をだした。

「よかった。無事で。」

そして...俺は事の顛末を聞いた。

「...とっくに途絶えたはずの過去の秘術、『魔術』...か。」

たしかに...よく考えてみれば、過去の人間が吸血鬼を封印できたのは...よくわからない。『悪ヲ結ブ光』...とか言ったか。すると...愛王はなにか魔術に関することを知っている...?

「...つまり、連中の目的はその魔術を復活させる事...とみて良いわけだな?」

「まあ、目的についてはまだわからないことの方が多い。じゃが...あれが魔術だというのは、確証を持てる。」

魔術、か。たしか、人類の歴史でいえば魂力ができたのはごく最近の話だったな。だが...。

「だが、そんな魔術という存在がなぜ教科書に載っていないんだ?」

普通、そんなものがあれば少しぐらい載ってそうなものだが...。

「あぁ...実は、魔術が扱える者は今の能力者より少なかった。それに...教科書に載せられる程褒められた技術でもない。あれは...あれは、人間が生み出したこの世にあってはならない人間のエゴじゃ。忘れ去られて当然の...忌むべき技術。」

人間とは、自然の危機となり得る。自分達が楽な生活を送りたいからと数多の物を犠牲にする。それになんの疑問も持たない...。世の中は弱肉強食、とはよく言ったものだが...。それにしたって度がすぎていると思うものは多々ある。そのような技術だったのだろう。なにより...人間好きのクロノスがそんな顔をするのだから。

「まあ、それはよい。ところで、愛王のやつも一緒だったじゃろう?あやつはどうした?」

クロノスのその問いで、愛王に話さなければいけないことを思い出した。

「....愛王。落ち着いて聞いてくれ。」

「な、何よ?」

「あの人は...奴らに攫われた。」

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