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闇の覇者  作者: 快良
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吸血鬼

「来週はとうとう原初の吸血鬼が復活する時。来週いっぱいは休校だ。帝人と黒井以外の奴らは家で身を守ることに徹するように。」

今日は金曜日。デセス・ヴェニアルが復活するのは来週のどこか。原初の吸血鬼の強さは計り知れない。クロノスがついているとはいえ...。

「そんで、帝人と黒井は放課後残ること。いいな。」


そうして放課後になり、会議室へと向かう。

「...揃いましたね。」

そこにいたのは斎藤先生だった。そうか、校長ならこういうのに顔を出さないわけにもいかないんだろう。

「では...これから、吸血鬼討伐会議を始めます。」

そういって作戦を語りだす。だが..その作戦はあまりにも無謀だった。

...要約すると、作戦はこうだ。

俺らが囮役になると。先生も生徒にこんな役回りをさせるのは本望ではないと思うが、国からの、ということなのだろう。おそらく、これが愛王ならば死なせるわけにもいかない為後ろの方でという判断に至るだろうが...。こんなただの生徒なら死なせても問題はない。むしろいい囮になる...。そういう思考だろう。どこまで汚いのか。

それでいて吸血鬼の力は未知数。封印直後で弱ってるのを願うしかないが..。

「...。」

クロノスもそれを察しているのか、いつものような空気の読めない発言をすることはなかった。なにより、周りには学校関係者だけでなく国のお偉いさんも沢山来ている。下手な事を口走れば興味を持たれるとちゃんとわかっているのだろう。

「そういえば。気になっていたのだがね。そこの開楼君だったかな?は、どうしてそんな外見なんだい?ただの能力持ちではないのかね?」

...外見だけで言えばクロノスのほうが普通の人間だ。しかも、相手は記者。下手すれば...。というか、ただの記者をこんな大事そうな会議に入れるなよ。そんな盤面でクロノスが声をあげた。

「...そういう年頃なのじゃ。」

名誉毀損で訴えたらギリ勝てるんじゃないか?そうでもないと切り抜けないというのも事実なのだが...。

「...そうか。」

深追いは良くないと思ったのか、思ったよりもスッと引き下がってくれた。

「では、作戦に異議がある者は?」

誰も異議を唱えられるはずもなく。


「すみませんでした。」

会議が終わり、お偉い人らが帰るや否や、先生が頭を下げにきた。

「...先生も国からの圧には耐えられないでしょう。無理ないです。」

「それでも。生徒を護るのが教師であり、校長の私の仕事。なのに...国からの重圧に耐え切れず、あのような役回りにさせてしまったこと...。謝らせてほしいんです。私が心配するほど帝人君たちが弱くないのもわかっていますが。ですので、改めて...。すみませんでした...!」

頭を下げながら弱音を吐き出していく。

「大丈夫です。...もしこうならずとも、別の方法で干渉するつもりでした。」

他の者もまだいるため、ナイトという直接的な単語は避ける。

「...なるほど。そういうことでしたら。」

「罪のない人間を虐殺する者は、人間でも、妖怪でも...俺が許さない。」


「しかし、困ったのう。今回は開楼帝人として討伐に参加するんじゃろ?」

帰り道、クロノスが問う。

「...そうだな。開楼帝人として、だと使える技が限られてくるからできればナイトの方が良かったが...変ないざこざを起こさず戦うには開楼帝人としてが一番楽だ。」

戦場がどうなるかはまだわからないが...。

「....!」

突如、クロノスが立ち止まった。

「どうした?」

「...帝人、時間はあるな。今、未来が見えた。異界へ行くぞ。」

クロノスは有無を言わさず祠へ向かう。

「どんな未来なんだ?」

「...殺しきれずに撤退する未来じゃ。」

...俺とクロノスがいてそれなのか。

「削りきれないのは、ただの火力不足ではない。杭がないといけぬ。」

...なるほど。妖怪は人間の畏怖などがそっくりそのまま能力に表れる。「吸血鬼は水に弱い」という伝承があれば水に弱くなるし、「再生速度が速い」という伝承があれば人々の恐怖の分だけ速くなる。そこで、吸血鬼の伝承の一つに、「心臓に杭を刺さなければ滅ぶことはない」がある。これはよく聞く話。つまり、最も人間に信じられている話。伝承通りにやらなければ完全に殺すことはできない。そして、過去で封印しかできなかったのは吸血鬼が実際に地上に存在し、人々の恐怖が最も頂点に達していたからだろう。...もし、今一度吸血鬼への恐怖心が頂点に達してしまえば、たとえ杭があったとて苦しい戦いになるのは間違いない。

「杭は異界にあるのか?」

「今の吸血鬼は異界にいる。その吸血鬼に聞けばいいじゃろう。」

なるほど。細かいことはわからないと。

「もし、吸血鬼への恐怖が高まったらどうなる?」

「...わしらだけでは手に負えぬ可能性が高い。じゃが...杭が無ければ殺すこともできない。杭を手に入れる方が優先度は高いじゃろう。」

それもそうだな。吸血鬼と戦うにあたって、必要なのは杭と流水と銀と日光。吸血鬼が日光に弱い話は有名だが...。他にも銀や流水にも弱い。たしか、水は清いものと考えられていたため流水に弱いという伝承が、銀は魔のものを吸うとされていたため銀に弱いという伝承もできたんだったか。利便性は劣るが、魂力の剣より銀の剣を使ったほうが効果は期待できるだろう。

そんなことを考えながら走っていたら祠の前に着いた。

「じゃあ、ゆくぞ。」

目の前が光で包まれた後、ほの暗い異界に移動した。淡い和風の街灯の明かりが俺達を照らし出す。

「相変わらず、薄暗いところじゃな。...協力してくれそうな吸血鬼の根城はこっちじゃ。」

原初の吸血鬼はかつて全ての吸血鬼を統べる王のような立ち位置だったと聞く。その吸血鬼の王に賛同している者であれば杭は渡さないだろうが、反対に原初の吸血鬼に好感を持たない者であれば協力してくれるかもしれない...ということだった。

とはいえ、相手は吸血鬼。気は抜けない。

「...?」

急に周囲の雰囲気がガラッと一変した。さっきまで電球色の優しい光を発していた和風の街灯は昼光色の光を放つお洒落な洋風の街灯に、石畳の道というのは変わらないが、どことなく洋風の道に感じる。

「あいつら吸血鬼は外国の噂からできておる。その伝承に則ってあいつらの居城ができた。」

クロノスの視線の先には立派な城がある。和風の王宮とは打って変わって、見上げるほどの洋風の立派な漆黒の城だ。

「貴様ら、何者だ。」

玄関で待ち構えていたのは吸血鬼。だが話に聞くほどの魂力は感じられない。

「わしは悠刻神クロノス。少し、城に用がある。」

「なるほど、クロノス様でしたか。でしたらどうぞ。」

案外すんなり行くもんだな。俺達は門をくぐり、吸血鬼の根城...ノーチェルに足を踏み入れた。

そこはあまりに暗かった。前もロクに見えないほど。

「まずは貨物庫に行かなければの。そこの吸血鬼、ちょっと良いかの?」

クロノスはこの暗闇の中で前が見えているのか?

「なんでしょうか。」

「貨物庫はどこじゃ?」

すると、その吸血鬼はついて来いとでも言うように背を向け歩き出した。

足元に気をつけなければ転んでしまいそうだ。

「ここでございます。協力者様。」

(..協力者ってどういうことだ?)

俺はクロノスに問いかける。すると、クロノスは貨物庫に入ってから口を開いた。

「...わしも外国の神じゃからな。デセス・ヴェニアルとの交流が一切ないわけではなかった。協力者とはいうが...。あいつを直接手助けしたわけではない。あくまで少し過去改変をしてやっただけじゃ。」

なるほど、一回ぐらい会ったと言ってたのはそういうことか。

「うーむ...。」

暗さにも少しずつ慣れてきた。クロノスと一緒に杭を探す。

「...これは?」

俺は一つの杭のようなものを拾った。

「おぉ、それじゃ。じゃが...それではあやつは削りきれぬ。...あやつを殺すことを想定された専用の杭でなければ...。わしが手を貸さなければこんな風になることもなかったのか..?」

なるほど、恐らく過去改変をしデセス・ヴェニアル専用の杭を世界から消し去ったのだろう。

「なら、作ればいい。」

「じゃが...あれは人間の秘術。ここからはもう得られることは..。」

俺らが地上に戻ろうという話をしていると、扉が開いた。

「クロノス様方、杭はここにはありません。何故杭を探しているのですか?」

まずい、と思った時にはもう祠の前だった。

「時を止めたのか?」

「...そうじゃ。アイツはとびきりデセスへの忠誠心が高い。こんな話をすれば敵だと認識されるじゃろう。」

そして俺らは地上へ戻った。

「じゃあ、あそこに向かうとするかの。」

「あそこってどこだ?」

「愛王家じゃ。」

なるほど、愛王家ならたしかに杭の作り方がありそうだ。だが...。

「...場所はわかってるのか?」

俺がクロノスにそう問うと、忘れてたと言わんばかりに歩みが止まる。

「...てへぺろじゃ。」

「まあ、先生なら知っているだろう。学校へ行くとするか。」

そうして俺らは祠から学校へと駆け出した。


「先生、居ますか。」

俺は校長室をノックする。普段は滅多にノックすることのない扉は、やけに音が響く。

「...帝人くんに、結さんですか。いいですよ、入ってください。」

扉を開けた先には、たくさんトロフィーなどが並ぶ豪華な部屋。

「本題に入る前に聞きたいんですが...。黒井結さん。貴方は、随分とお強いようですが...何者ですか?帝人くんのことですから、もしかして...?」

勘の鋭い人だな。俺が説明しようとするとクロノスが前へ出た。

「わしの強さが見ただけでわかるのかの?」

クロノスが強いのは時を操れる部分。それ以外も当然強いは強いが一部俺の方が勝る部分もある。そんなクロノスに対して「強い」という言葉を使うのは、わかっていないとそうそう出てこない。あるいは、見た目とのギャップという意味か。

「いえ、見た目から推定される強さではないなと思いまして..。」

後者だったみたいだ。まあ、そうだろうな。クロノスの事を知っているとも思えない。

「...そうか。わしは悠刻神クロノス。悠久の時を生きる神であり、時を操ることができる。」

「なんですかそのぶっ壊れ性能..。」

それは俺も思う。時を止めれるなんて、やろうと思えば戦いにすらせず相手を殺すことができる最強の手札だ。だがクロノスは敢えてそれをしない。クロノスは常にハンデを背負いながら戦っている。

「...教えてくれてありがとうございます。では、本題に入りましょうか。なんの用で?」

「愛王家の場所を教えてください。」

俺がそう端的に言うと、先生は驚きを隠しながら冷静に俺に理由を問う。だが、答えたのはクロノスだった。

「杭が必要なのじゃ。吸血鬼の伝承は知っておろうな?」

「え、えぇ。まあ。本当にあやふやですが...。なるほど、杭がないのですね。それで愛王家なら知っているだろうと...。わかりました。住所を送っておきますので。」

「じゃあ、行くぞ。クロノス。」

俺は先生に一つ頼みをした後、俺らは愛王家へと走り出した。

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