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闇の覇者  作者: 快良
23/33

先生の行方

そして、翌日。

俺はナイトの指輪を発動し横浜へと繰り出した。

今の時刻は夜九時前。あの男に指定された場所に向かう。

「これは...。」

紙に書かれていた廃工場に行くと、なにやら黒スーツの男がたくさんいた。これはあれだな。マフィアだとかヤクザだとか、そういう類の奴だ。

「誰だ貴様ッ...!」「いやまて、あの特徴を見ろ。あれは...。」「まさかナイト...!?」

莉がこういう奴らは俺を知ってるって言ってたのは嘘じゃないみたいだな。

周りの奴らのざわめきを無言で聞いていると、奥から誰かが歩いてくる。

「...昨日ぶりやな、ナイト。」

そう言って出てきたのは昨日の怪しげな雰囲気を纏う黒色のスーツを着こなす俺と変わらないか少し高いかぐらいの背の糸目の男だった。

「いやぁ、お噂はかねがね。ささ、こっちへ。」

まあ、罠にはめられてもこいつら相手なら大丈夫だろう、と思いソイツの後ろをついていく。

「本当に来てくれるんやなあ。罠とは思わんの?」

「その可能性もあるだろうな。だが、外にいる奴ら程度なら問題はない。」

男は表情一つ変えることなく喋り続ける。

「はは、笑えるわ。もしかしてオレにも勝ててしまうん?」

「あぁ。」

すると、突然歩みを止め、さっきまで先頭を歩いていた男は目に留まらぬ速さで俺の後ろへ移動し、淀みない手つきで俺の首を狙う。この程度で俺に敵うわけがないだろうに。

「...へえ。神速と恐れられたオレの一撃を受け止めるんか。」

「その程度で神速か。本当の神はもっと速いぞ。」

クロノスは時間が止められるから速いというのもあるが...。

「...ちょっと試しただけや。そんな本気にせんといて」

今の一撃が通らなかったことで勝てないと判断したのか、ピリついていた顔をすぐ笑顔で覆い隠した。

「さ、もうすぐでボスんとこつくで。」

そういいながら、扉を開け、俺を先に部屋へ入れる。常にこの男が後ろにいるのは落ち着かないな。

「...お前がナイトか。」

なんと、そこにいたのは俺より小さい男だった。身体に見合わない椅子に偉そうに座っていた。

「あぁ。...ここは?」

「ここはこの僕...。苦駄野(くだの)(しゅう)が統治する奇廻(きかい)組のアジトだよ。」

奇廻組、か。

「ほう...。それで用とは?」

すると、苦駄野はニヤッとした。

「まあ、本題に入る前に少し聞いてもらってもいいかな。」

そういって俺の問いに答えることを後回しにして語りだす。

「お前は、ナイトなんて活動をなぜやっているんだ?」

彼の暗い瞳が俺を睨む。

「お前らみたいな、人を不幸にする奴らが許せないからだ。」

俺がそう答えると、後ろの男が声を発した。

「お前が殺す犯罪者の奴らにも家族がいることを忘れたんか?」

「あくまで優先順位の問題だ。なんの罪もない人間と、罪を犯した人間とその周りの数人。答えは明白だろう?」

「なるほど。犠牲とかそういうのを厭わないタイプのクズなんやな。」

目こそ閉じているものの、彼の視線は依然として俺を見つめていた。

「あぁ。クズだよ。俺も人殺し。俺もお前らも変わらない。」

どんな悪いやつだろうが人間を殺していることに変わりはない。俺も、こいつらも、同じ穴の狢だ。

「...なるほど。お前の行動原理はわかった。僕らはここで能力についての研究をしているんだ。強化したり、取り除いたり。」

取り除く...?それじゃあ、まるでセーロス教じゃないか。

「そこで、お前に助力を乞いたいと思ってな。それで、噂通り、夜にシマで一番デカいとこで事件を起こしたってわけだ。本当に来てくれたようで感謝するよ。」

..なるほど、昨日のあれはわざわざ俺をおびきだすために。

「ただ..人を殺す前に来たのは驚いたな。噂だと、殺人した奴の元に現れるという話だったんだがな。」

...しくったか。人が死んでからにした方がよかったか?でもそれだとあの場でこの男を殺すハメになっていた。昨日、帰ってから考えていたのだが、伝えるだけなら口で伝えればいいのに、わざわざ紙を渡してきたことに違和感を覚えた。

そこで、紙にライトを当てたり燃やしたりすると、なんと文字が浮かびあがった。『力を貸せ』それしか書いてなかったが、あの男からのSOSサインと考えていい。

「お前、最初からあそこにいたんだろ?それで騒ぎがあったからとりあえずナイトの格好をして様子を見に行った。違うか。」

「いや、あっている。俺は昨日あそこにいた。だが、だからなんだと言うんだ?」

たまたま横浜にいたというだけで、どうなるわけでもないだろう。

「いいや?ウチのシマって言っただろ。店内の防犯カメラの映像を借り、お前の体格の男を探し、お前が歩いていったタイミングとナイトが現れたタイミングを照合すると...。コイツしかいないんだ。高校生というのは信じきれないが...どうだ?」

...やらかした。せめて少し待ってから行けば。

俺は戦闘の体制を取った。

「まあまあ、そんな警戒するな。」

苦駄野とやらは不敵な笑みを浮かべたまま言った。

「ただ、その強さの秘訣を知りたいと思っただけだ。教えてくれれば、この情報は伏せてやる。どうだ?」

強さを教える代わりに正体が隠されたままか、強さを隠し正体が破られるか。

「...教えるわけないだろ?」

「じゃあしょうがない。...殺しはするな。」

苦駄野が合図をすると、さっきの男が俺にナイフを放つ。

「俺は神にも勝る存在。神はもっと速いと言っただろう。」

「...これでもあかんか。」

俺はこいつの放ったナイフを手で受け止める。

「素手でナイフ受け止めるとか、人間業ちゃうやろ...。」

明らかに狼狽えた。今がチャンス。

「悪いけど、まだ死ぬつもりはないんや。」

俺が男に駆け寄ると、廃工場なのをいいことに天井を破壊して逃げる。ついてこいということだろう。後を追い、共にほの暗い月明かりに照らされる。

「それで...。なんの用だ?」

「オレが...奇廻組なんていうイカれたもんに入っとったんは、中から探るためや。弟が、ここの地下にいる。というか、よくオレのSOSに気付いたな。」

なるほど、弟のため...。

「わざわざ紙を渡してきたんだからなにか意図があると考えるのが普通だろ。」

あの場でこんなわかりづらいSOSを出すくらいだから、元々力は貸すつもりではあった。

「...力を貸そう。」

「おおきに。」

「じゃ、いくとするか。」

「じゃあって、作戦は?」

至極末等な疑問だ。

「どこにいるかがわからなきゃ作戦の立てようがないだろ?」

「っ...それもそうやな。オレとて、ただの幹部やからな。ガチの側近やないとその場所まではわからん。」

「じゃあ、そのまま行くしかないな。俺の合図で入ってきてくれ。」

俺はさっき逃げてきた穴から再び中へ入る。

「...戻ってきたのか。正体がバレるのを恐れたか?」

「地下のどこに人を監禁している?」

俺は素早く苦駄野の後ろに周り、首にナイフを突き立てる。

「さあ?どこだろうな。」

「...。」

あまり拷問は好きではないんだが。

少しずつ刃を押し当てていく。

「っ...!皆のもの!かかれ!」

『闇の短剣-X』

俺に襲い掛かってきた奴らに向けて数十のナイフを放つ。

「な、なんだそれッ...!本当に人間なのか?」

倒れていく仲間を見ても恐怖しか感じていない。仲間を傷つけられたことへの怒りなど、微塵も感じられない。どこまでも自分が可愛い奴だ。

「良い事教えてやるよ。俺は、半人半鬼...。半分鬼なんだよ。」

後ろから耳元で囁いてやった。

「俺に喧嘩売るのはやめといたほうがいいぞ?」

「あ、ぁ...。教える...。教えるから。殺さないでくれ...。」

これが奇廻組とかいうものの長か。所詮は子供、というわけだな。


「...案内してくれてありがとうな。」

俺は苦駄野の首を掻っ切った。

「なん、で...。殺さないって...。」

そんなこと一ミリも言ってない。無言をYESととるあたり、やはり長の器ではないな。

それに、こんな奴を生かしておいたらいつか罪のない人間を危険に晒すだろうから。

「よし、もう来ていいぞ。」

「いやぁ、恐ろしいこっちゃな。相手は子供なのにな...。流石はナイトや。」

そうでもないとナイトなんていう心ない活動はやってられないからな。

「は...先生?」

「ん?」

椅子にくくりつけられ、腕になにか点滴のようなものをつけられている男がいた。その男は、驚くべきことに、メガネをかけ、シャツにズボンという一般的な教員の見た目の...斎藤先生だった。

「先生いうたか?」

「あぁ。うちの高校の先生だ。」

「なんちゅう偶然やねん。じゃあ、弟のこと、知っとるんか?」

なんということか。この男の弟とは、斎藤先生のことだったのだ。先生に兄がいるなんて聞いたことなかったんだが...。

「あぁ。過去まで全部。」

「過去まで知っとるんか。なんで俺がこんなことをしてるかの細かいことは後でまとめて言う。そういや、名乗っとらんかったな。オレは斎藤 麗央(れお)。...これなら、外し方はわかるで。オレ、これでも医師免許持っとるからな。」

兄弟揃って公務員なのか、すごいな。椅子に近寄ると、麗央は点滴を外していく。

「ここを...こう。これでいい。あとは椅子から離すだけや。」

俺は椅子の縄をナイフで切る。

「よし、これでいい。」

「ん...。帝人、くん...。それに、兄さん...?」

よかった、丁度目を覚ましたらしい。

「あぁ...よかった。本当に...。」

兄弟の絆というのは良い物だな。

「帝人くん...。なんで兄さんと帝人くんがここに?それに私は...?」

まあたしかに、ついさっきまでなんの縁もなかったからな。そうなるのはごく自然なこと。

「覚えてないんですか?」

「あぁ...。最後に覚えてたのは...。家に帰ろうとした途中で...。男の子にあって....。」

恐らく、その男の子というのが苦駄野だろう。すると、麗央が口を開いた。

「実は...。一輝の能力の暴走の原因を調べてたんや。そこで、一番その可能性が高かったのがここ。苦駄野...。聞いたことあるやろ?」

なるほど、能力の強化とか言っていたのは...。

「あ....!苦駄野ってたしか、校長の友人...。そういえば、何回か会ったことがある。人当たりはよかった気がするんですが...。」

「そんで...。これを見い。」

そういって差し出したのはセーロス教と奇廻組の関係を示唆する資料。なるほど、先生を拾った前の校長はセーロス教の教祖。だとするなら、能力の御し方なんてものは教えていなくて、その機能を切っただけだと考えられる。それで能力の使い方を教えたとして洗脳し、セーロス教の実験に先生を利用したわけか。どこまでゴミなんだろうな。小さい頃から前校長に入れこんでいたと聞く。そんな相手が自分の暴走の原因だったなんて、信じられなくても無理はない。むしろそのほうが自然だ。

「そう...そう、ですか...。」

そうなってしまうのも無理はない。俺が教えた前校長の真実すらまだまともに受け止めきれていないだろうに、さらにそこに新しい情報だなんて。

「そして...。あいつは、苦駄野のガキは、一輝に罪を被せるつもりやった。数日後に、この組がデカくなるんに邪魔な奴らを削除して、それをお前の仕業にしようとしとった。」

なるほど、だからそれで一週間後に逮捕されるという話だったのか。すると、先生は覚悟を決めたように俺を見つめる。

「...帝人くん、あの時の答えをまだ教えていませんでしたね。私は...。校長になります。責任を取りたい。セーロス教が力を持ち、学校を襲ったのは私のせいでもある。それに、帝人くんがいなければ、私はその犯人として捕まっていたんでしょう。なおさら、帝人くんの期待に応えないわけにはいかないでしょう。」

この世界は能力の事もあり、歳など関係なく強さや仕事の出来がものを言う。所謂実力主義社会。だから例え若くとも、校長になるぐらいはできるだろう。

「そうか、一輝は....。帝人くんには、本当...感謝してもしきれん。ありがとうな。」

「いや...俺は俺のやるべきことをやっただけだ。

...でも、言葉は受け取っておこうか。」

前までだったら、そこで終わりだった。突き放して終わり。でも、今は違う。今こうして、先生を救えたと実感できたんだから。少し...ほんの少しずつだけど、自分を認められてる気がする。

「ところで、あんた、名前は?」

「あぁ。名乗ってなかったか。開楼帝人だ。」

俺が名乗ると、若干麗央の表情が強張った気がした。

「どうしたんだ?」

「...いや、なんでもない。」

変な反応だな。なんだというのか。

「では私はこれぐらいで...。」

「...そういえば。」

俺は先生を呼び止めるように話を始めた。

「莉が、『先生は僕の母の弟だ』みたいなことを言っていたんだが...。姉もいるのか?」

「あぁ、明里姉さんのことか。明里姉さんが一番上で、麗央兄さんが真ん中、そして私が末っ子です。明里姉さんとは、ほとんど話してないですね。アーロア教の教祖に惹かれるような人間です、反りがあいませんでした。私達が能力持ちなのに、自分だけ能力を持たないことをずっと気にしていた。そういう人でした。」

「ところで、莉って奴は誰なんや?話を聞くに姉さんの子供みたいやけど...。」

たしかに、知らなくても無理はないか。奇廻組で関係があるのもセーロス教。アーロアとは関係が薄いはずだ。

「あぁ。そうです。彼はアーロア教教祖の息子...。つまるところ姉さんの子供。最初はアーロア教の手駒でしたが...今は改心して教師を目指しています。それも帝人くんがやったこと。本当、すごい人ですよ...帝人くんは。」

「そうなんか...。姉さんの子供までも...。」

俺は提案をしただけでそこまで変わったのは元の莉の性格の良さだけどな。

「...改めて、助けてくれてありがとうございました。」


そして、少し話した後その場はお開きとなった。

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