失踪
「先生がいなくなった!?」
あの先生に限って、そんな。
『家のどこにもいない...。この時間ならもう帰ってていいはず。念の為電話もかけたけど...。』
どういうことだ。先生の身になにが起こっているんだ?
「もしかしたら...セーロスの奴らか?」
『可能性は捨てきれないけど...。でも、セーロスがそんなことして得があるか?』
「...ないな。」
そもそもあの先生がそう簡単に捕まるとも思えない。
「とりあえず俺は学校を見てくる。家で待機しててくれ。ただ帰りが遅いだけの可能性もまだある。」
『あぁ。わかった。帝人の方こそ、無事で。』
...とはいったものの、どうするか。ナイトで忍び込むのもなぜナイトがこんなところにーってなるし普通に入ろうとしたらまず深夜の学校なんて入れない。まずそもそも先生が学校のどこにいるかも見当がつかない。職員室にいるなら他の教員が見つけるだろうし...。他の教員もろともいない可能性はあるか。まず職員室を見てみようか。
「...。」
これは...。誰かの吐瀉物か。なにかあったのは間違いなさそうだが...。
たしか、アーロアとセーロスが協力関係にあると莉が言ってたな。地下になにかあるかもしれない。
...暗くてよく見えないな。
「なぜこんな時間に学校にいるんだい?」
声の主は校長の征 弄亞。
ここは素直に言っていい。
「莉が一輝先生がいないと言ってきたもので。確認しようと。」
「なぜこの地下に気付いた?」
学校襲撃の時に....なんて言えば自分がナイトだと言っているようなものだ。
「たまたまこの通路が開いてたもので。」
「...そうか。貴様は...ナイトらしいな。この前はよくも邪魔をしてくれた。」
ここで驚いてもナイトだと言ってるようなもの。真顔を保って知らないふりをする。
「はは、いくら知らんぷりをしようともわかるさ。斎藤先生との会話が誰にも聞かれてないとでも?」
...盗み聞きか。だがしかし、なぜ。
「亜浪のじじいも死んだことだ、後は貴様...ナイトだけなんだ。」
亜浪のじじい...。アーロア教教祖のことだろう。だが、なぜ知っている...。そうか。きっと。
「はぁ...。校長を殺すのは後にして先に先生を助けていいですか?いや...。セーロス教教祖。」
「ほう...。気付いたか。なおさら生かす訳にはいかないな。」
やっぱりか。アーロア教の時は莉の話で場所を知ってたからいいものの...。セーロスは一切情報がない。殺しても逃げられても終わり。先生を何に使うのかもわからない。
「バレてるなら言っていいだろう。亜浪のじじい...。アイツは愚兄だ。アイツは人の範囲で強くなることを目指し結局嫉妬にのまれて狂った。だが!私はそうではない!妻にも能力持ちを選び、能力を奪った!...いい事を教えてやろう。能力持ちは魂を能力で支えられている。それを取ったら...。そいつは死ぬ!そして...。私はより良い能力を手に入れる為にこんな学校を作ったのだ...!」
...怒りがこみあげてくる。
「...本当に、それだけのために?」
「あぁ!能力を取られて死ぬとも知らずに私に挨拶をし...。あははは!!滑稽で笑えてくるよなあ!!」
コイツは...殺さなきゃいけない。
「お望み通り...ナイトとして殺してやろう。見よ...俺の、過去最強の技を」
折角だから、兄弟仲良く同じ方法で殺してやろう。
『闇の繭』
『終焉-改』
戦いにすらしない。確実に殺す。
「...行くか。」
背を向け歩き出したその時、背中に剣が突き立てられる。ギリギリで硬化できたからいいものの...。まともにくらえば死んでいた。
「ほう...硬化か。」
『闇の魔剣』
俺は奴を切り裂いた。
「なあ...斎藤先生の過去...リッパーについて知りたくはないか。」
リッパーが...先生?
「アイツはな、能力が発現したての頃、人斬りだったんだよ。意識を能力に乗っ取られてな。それで私は奴に教えた。能力の御し方を、研究を。」
人斬り...それからくる別名がリッパーということか。
「...研究?」
「あぁ...。アイツはその研究が我がセーロス教の手助けになっているとも知らずに、それがやがて自分の首を締めることになるのも知らずに機械の設計をしてくれたんだ!あいつは天才だ。教師にしておくには惜し...ガハッ...!?」
俺はコイツの腹に剣を突き刺した。もう聞いていられない。死んでしまえ。
「私を今殺しても...似た考えを持つ奴は現れる...!その時、お前はお前でいられるか?」
「...兄弟地獄で仲良くな。」
剣を引き抜いた。...それはそうとて、先生はどこだろうか。
「ん...?」
足に何かあたった。よく目を凝らして見てみる。
「...先生!?」
床に先生が横たわっていた。息はある。もし...。もしあいつがもう既に能力を奪っていたら...?
他の先生はいないみたいだ。だが...。
「私、は...何を...?」
「よかった、先生...。気がついて。」
「...!帝人、くん...。私は...君に謝らなければいけないことが...。」
「話は後で聞きます。今は安静に。」
「あ、あぁ...。ありがとう...。」
保健室に急いで運びに行く。
「これでいいか。」
「ありがとうございます。」
俺は、大体何があったかと...。リッパーの話を細かく聞いた。
文化祭当日、職員室。
「俺はセーロス教の、いや、協力してるからあわせてアーロスか?まあどうでもいいや、亜浪莉って奴はいるか?」
あれは...。この前学校を襲ってきた奴。なぜ莉さんを...?
「ここにはいませんよ」
「あ〜あ、リッパーの戯言なんざ聞きたくねえわ。」
「ひとつ、聞いていいか。なぜお前はリッパーの名を知っている。」
「っはは、笑えてくるぜ。なあ...覚えてねえのか。お前が記憶の彼方に追いやった俺の...幼馴染の存在をよ。」
幼馴染...?そんなの、私には...。リッパーは覚えてる。...昔、能力が発現してすぐ。あの頃は、能力を一度使うと、意識がなくなって殺戮を...。それが人生で唯一の汚点。でもそんな私に能力の御し方を教えてくれたのが今の校長先生。校長先生が能力科学を私に教えてくれて...。私の記憶に欠損なんて...。
「あと記憶の彼方にやったのは亜浪もだっけか。お前の能力を熱心に研究して。結局嫉妬にのまれて今みたいな集団を作った...。覚えてねえのか?俺のことも。」
「お前なんて私は知らない!幼馴染がいた記憶もない!」
「本当になにも覚えてないか。そうだよな、幼馴染を自分で殺せば記憶を閉ざしたくもなるよなぁ!?」
私、が...。幼馴染を...?いや、だが私に友達は...。友、達...??
「あ、ぁ...。」
「思い出して来たか?模擬戦しようぜって言って...。そのまま俺は殺されたんだ!今の俺は亡霊。俺がセーロス教にいるのは肉体を手に入れててめえをぶっ殺すためだ。」
「あぁ、ああ...。思い、出した...。だが、それでも殺したときの鮮明な記憶はない。そもそも意識がなかったんだ。あぁ、悪い悪かった...。私はっ、俺はっ...!!」
死体の感触しか覚えてない。生暖かい、あの感覚が。蘇ってきた途端に、こみあげてくる。
「うーわ、吐いた。あと、ひとつ言うと...お前が尊敬するコウチョー先生はさ...。ウチのボスだよ」
セーロス教...の....?あぁ、ああ...。
「じゃ、莉は貰ってくわ。」
私がついていながら、守れなかった。帝人くん...。
能力とは、時に恐ろしいもの。人の人生を簡単に壊してしまう。
「私は...かつて幼馴染を殺した...!人を殺す奴に、手の汚れたやつに...。教職なんてできない!」
「本当にそうか?自分が莉に何を言ったか覚えてないのか!」
いつもは尊敬する人には敬語で話すんだが、今はタメの方がより刺さると思った。
「私は...なにを言ったんですか...?」
「...莉が本当に先生になりたいと言った時...手の汚れた者でも、教師になれると言った。そうだろう?」
「...。ひとつ...聞いていいですか。知ってたらで構いません。校長先生は....。私に、能力の使い方と能力科学を教えてくれた校長先生は...。良い人ですか...?」
「あの人は...。セーロス教の教祖だった。先生のことを、馬鹿だと。」
「嘘、だ。そんな、そんな...。校長先生が...。じゃあ、校長先生は...?」
「先生を馬鹿にするような発言がなかなかにきまして...。殺しました。この手で。」
「う、ぁ....。そん、な...。」
...後悔はしない。あのままでは、先生も俺も危なかったから。俺は最初嘘をつこうとしていた。でもやっぱり、つけない。隠し事をしたままで、向き合えるわけがないから。




