表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

偉大なる溶鉱炉

 やっとの思いで山道を下りきり、見慣れたリーアの村が視界に入ってきた。


「……あー、疲れた……」


 思わず声が漏れる。足が重い。帰ってきた安心感と全身の疲労が、どっと押し寄せてきた。


「けっこうハードでしたね……。ご飯、ご用意しますね。ウェルナーさんもいかがですか?」


 テレジアがいつも通りにっこりと微笑む。


「お? マジ? ラッキー!」


 満面の笑みで返すウェルナー。


(……コイツ、大丈夫か?)


 まだ陽も沈みきっていないというのに、村の広場ではイーヴァルディがきょろきょろと落ち着きなく視線を泳がせていた。


「ところで儂のための炉はどこじゃ?」


「ん? ああ、まだないよ?」


 俺が何気なくそう答えた瞬間、イーヴァルディはがくんと膝をついた。


「……だまされた……」


「いや、これから作r──」


「これから作る!? 何か月かかると思ってるんじゃ!!」


 顔を真っ赤にして叫ぶイーヴァルディ。怒りというより、もはや絶望に近い。


「イー爺、アルスはすごいんだぜ? この井戸も一瞬で建てたんだ!」


 ウェルナーがなぜか誇らしげに言う。お前が作ったわけじゃないだろ。


「……信じられるか! ならば、目の前で見せてみろ!」


「わかったわかった。そんなに怒ると血圧上がるよ、イー爺さん」


 俺は苦笑しつつ、スキル画面を開いた。


 項目から「建設」を選び、「溶鉱炉」の設計図を表示する。


――

 【建設:溶鉱炉】

 資材:石材 ×30 鉄板 ×3

――


「イー爺、鉄板と石ってある?」


「鉄板はアイテムボックスで持ってきておる。石材は……その辺の岩を砕けばよかろう。このあたりの石は品質がいい」


「じゃあ、用意してもらえる?」


「任せよ」


 イーヴァルディはずしりと重そうな玄翁を背から下ろすと、近くに転がっていた岩へと歩いていき――


 ドゴォン!!


 軽く振り下ろしただけに見えたのに、岩はあっという間に砕け散り、規格の揃った石材に変わっていた。


「すげぇな、イー爺!」


 ウェルナーのテンションがやたら高い。ほんと、調子に乗りすぎだって。


「じゃあ、これで作れるな……」


 資材のチェックを済ませ、俺は「建設」をタップする。


 すると――


 地面から光の粒子が浮かび上がり、空中で渦を巻くように集まっていく。


 やがて閃光とともに、何メートルもある高炉がその姿を現した。


「「「なんじゃこりゃ!!!」」」


 全員が絶叫した。


 それはどう見ても、現代の鉄工所にあるような本格的な溶鉱炉。レンガと鋼の重厚な構造で、装飾は最小限だが、無骨で美しい。


 これさえあれば、鉄も鋼も自由自在に加工できるだろう。


「おぉ……これは……これは素晴らしい……!」


 イーヴァルディがうっとりとした目で炉に駆け寄る。


 溶鉱炉の縁をなぞり、素材を確認し、煙突の角度を見て、嬉しそうに何度もうなずいていた。


「……見事じゃ。儂が欲しかったのはまさにこういう炉だ……!」


 その顔は、まるで子どものようだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ