第3話 魔法使いオスカー
レイブンは、今、ギルドの相談室で、Sランク魔法使いオスカーとの面談に臨んでいる。
「初めまして、レイブンさん。オスカー・ブライトウッドです。ギルドマスターから話は聞いてます。僕も魔王軍討伐に参加しますよ」
「レイブン・バレンティアだよ。よろしく。パーティーが正式に結成されたら俺がリーダーになる予定だよ。今までどんなクエストをこなしてきたんだ?」
「僕は遠出が割と多いです。国境越えて周辺国まで行くこともありますよ。一応、魔族支配地域にも入ったことはあります。地理は明るいので任せてください」
「それは、頼りがいがあるね。剣士と組んだことはあるか?」
「ありますよ! レイブンさんとならいいチームワークになる予感がします」
「オスカーはどんな戦い方ができるんだ?」
「火属性の魔法が得意で、長距離攻撃ができます。剣士との相性はいいんじゃないかな?」
オスカーは遠方のクエストをこなしてきた理由を説明する。
「遠い地域の高額案件はいいですね。報酬は高いし、旅ができる! 僕は知らない土地を旅したり未知の相手に対して力試しをするのが好きなんです」
「オスカーはなぜ、魔王軍相手なんて重い任務に挑戦しようとするの?」
「それは、自分の実力を試したいし、対魔王軍という未知の領域への挑戦と冒険にわくわくするからですよ!」
この魔法使い、なんという好奇心だ!こんな楽観性は俺にはない。パーティーを活気づけるタイプだ。実力があるなら一緒に戦いたい。
「レイブンさん、僕は戦いばかりやっているようで平和主義者なんですよ。平穏な生活を脅かす存在が恐いんです。元々は、故郷の村をモンスターから守りたくて魔法の道に入ったんで。上を目指して戦っているうちに冒険者へと進みました。人間を脅かす悪意の象徴である魔王軍は許してはいけない」
「今までにオスカーは、どんな戦いをしてきたのかな?」
「Sランクモンスターなら何匹も狩りましたよ、ドラゴン系が多かったです。国境越えて来るのいるじゃないですか? 国境をまたいで依頼がくるのは高額ですし、敵も強い。大分、鍛えられました。魔族との戦闘経験はありませんけど」
確かに強そうだ。実績はある。レイブンは実戦での連携面が気になる。
「パーティー内では、どんな役割なんだ?」
「剣士や戦士を後方から支援してます。場合によっては前線にも出れますよ! 自分で言いますけど、僕、魔力も火力も高いんで! 頼ってください!」
レイブンは心強い反面、若干の不安を覚えた。
(ただの目立ちたがりじゃないよな……)
「具体的に、どんな火属性の魔法が使えるのか教えてくれ。」
「はい、ヘルフレイム・インフェルノという攻撃魔法が僕の得意技です。広範囲を火炎の地獄のように焼きます。残り火効果もあり、食らった相手は火を消してもしばらくダメージを受け続けます」
「強烈だね!そんな魔法は初めて聞いたよ! チームワークの面でどんなことに気をつけてる?」
「前線に無理をさせないことですね。まずは周囲を警戒しつつ、サポート的に攻撃する。前線の許容範囲を見極めていつ出しゃばれるかを伺っています」
「なるほど。オスカーありがとう!これからよろしくな!」
「レイブンさん、よろしくお願いします!」
オスカーは魔族に怯む様子も見せず、終始明るく元気に応じた。パーティーのムードメーカーになりそうだ。一見、戦闘力とは関係ない性格面もチームワークを機能させる上で大事な要素になる。
「オスカー!俺たちはとてつもなく大きな挑戦に出る! 成功すればいいけど、リスクはあまりにでかい。分かってるよな? それに、今までのクエストとは重みが違う。王国の平和がかかってる」
「レイブンさん、分かってますよ!でもね、さすがに僕らが組めば魔王は倒せるでしょ!レイブンさんの状態異常プラス僕の絶大な火力援護ですからね!自信を持ちましょう!」
実力、自信ともに強力な仲間が加わった。