倒したか?
首元を狙った剣だったが、アンドリューサルクスが身をよじって躱そうとしたので、逸れて肩の辺りを傷付けた、それでも深く肉を切り裂いて、初めてアンドリューサルクスにダメージを負わせることになった。
ダメージを受けたアンドリューサルクスは、怒りの表情を浮かべ、マッテオに噛みつこうとした、大きく開かれた口が目の前まで迫ってきた時…
「フレイムカノン!」
マッテオは大きく開かれた口に向かって魔術を放った、口腔内を焼かれアンドリューサルクスは思わず顔を背けた、その隙に剣で喉を斬ろうとしたが、さっきより気力を集中できてなかったので、深手にならなかった。
「くそっ!」
反撃を警戒してすぐに距離を空けた、ミュラーとクリューガーもアンドリューサルクスを取り囲むように駆け寄ってきた、ハンナは弓を引き絞りいつでも矢を放てるように狙っている、互いに牽制しあって膠着状態になり、なかなか次の一手が出せない、しばらく取り囲んだ3人とアンドリューサルクスの睨み合っていると突然“バシュッ”と音が響いた、その音と同時に何かがアンドリューサルクスの側面に当たり「ギャン!」と悲鳴が上がった、音のした方向を見るとグスタフが立っていた、脇に筒を抱えている、その筒を地面に立てて先端から玉を込めて再び脇に抱えた。
「ベティ!」
「あいよ!」
よく見るとグスタフの後ろにはベティがいて何やらゴソゴソしている、するとまた“バシュッ”と音がして先程込めた玉が発射され、今度はアンドリューサルクスをかすめて遠くへ飛んで行ってしまった、玉の飛んでいった方を4人と1頭がじっと見つめて固まっている…
(大…砲…?と言うより戦国時代の大筒みたいな感じか?精度はあまり良くないな…)
そんな事を考えながら、グスタフの方に目を向けると彼らは再度玉を込めていた。
「こらー!お前達ボーっとしてないで、そのモンスターに攻撃しないか!」
グスタフに言われ、はっ!と3人は構え直すそれに反応してアンドリューサルクスも唸り始める、ミュラーがまた束縛のスキルを使い動きを封じた。
「マッテオ!もう1度、力を溜めて攻撃できるか!?」
「行けます!また時間稼ぎお願いします!」
「了解だ!」
「ミュラー、俺も力を溜めるぞ!」
クリューガーもミュラーに呼びかけた、何か強力な攻撃を持っているらしい。
「あれか!いいな、マッテオと合わせたら、こいつを倒せるかもしれない!」
どうやらミュラーはどんな技なのか知っているみたいだ、マッテオは再び気力を高める事に集中する、クリューガーも集中している、1度束縛を受けているからか、アンドリューサルクスは力いっぱい暴れて最初より早く束縛を解いてしまった、まだ十分に気力は高まっていないが仕方なく攻撃を仕掛けようとした時。
「動くな!じっとしていろ!」
その叫び声と同時にまた大筒から玉が発射された!この玉はマッテオが付けた肩の傷の辺りを捕らえた。
深手に強烈な一発が入った事で、アンドリューサルクスは「ギャン!」と叫んでよろめいた、痛みに耐えているのか、少し動きが止まった、時間にして10秒程だったが、マッテオとクリューガーが力を高めきるのに十分な時間だった。
マッテオはさっきと同じ様に、瞬歩で一気に間合いを詰めて、渾身の一太刀をアンドリューサルクスに叩き込んだ、今度は狙い通り首元を深く斬りつけた、しかし太く筋肉が盛り上がった首はマッテオの剣を途中で止めた。
「くっ!剣が抜けない」
アンドリューサルクスは体を振るわせてマッテオを振り放した、相当な痛みにふらふらしているが、まだ眼光は鋭く油断できない状況だ、剣を失ったマッテオは盾を構えて警戒している、その横を何かが駆け抜けた、それはクリューガーだった、さっきまでとは比べものにならない素早さでアンドリューサルクスに近づいて、顎を蹴り上げた、それでも倒れない相手に今度は拳で激しく連撃を繰り出す、最後に大きく息を吸って渾身の拳を眉間に突き刺した、この一撃で、アンドリューサルクスは白目を剥いてやっと倒れた。
「やりましたね、クリューガーさん!」
マッテオが近づいて、クリューガーの背中をバシバシ叩いた。
「はぁ、はぁ…おぉ、やったな、君が事前に大ダメージを、与えていたおかげだよ…」
クリューガーは相当体力を消耗したみたいだ。
「最後の連撃は、凄かったですね、身体強化のスキルとかですか?」
「ああ、あれは君も使っている闘気術だよ」
「闘気術…気功術と、似てますね」
「君達は気功術と呼ぶのか、獣人の間では闘気術と呼んでいる、俺が見た感じ同じ技だと思うよ、ただ君の方がずっと繊細なコントロールをしているな」
「獣人の人達は気が使えるんですか!」
「そうだ、ヒューマンが闘気をコントロールしてるのを見たのは君が初めてだ、どこで習った?」
「昔、東の大陸から来た冒険者がいて…」
など話していると、ふと2人の周りが少し暗くなった。
「後ろ!」
その叫び声で後ろを向くと、アンドリューサルクスが立ち上がっていた、マッテオとクリューガーは驚きで固まってしまった、アンドリューサルクスは前脚を振り上げ、2人を踏み潰すつもりらしい。
「ワルプールライトニング!」
轟音と共に激しく雷光が辺りを照らして、アンドリューサルクスに稲妻が落ちる、食い込んだままの剣が避雷針の用になり、体内にまで雷が伝わる。
雷が収まると、アンドリューサルクスから煙が上がり再び倒れた、マッテオは槍を取り出し慎重に近づいて鼓動を確認した、すると今度こそ絶命したみたいだ。




