魔導陣の使い方
グスタフの家に向かう途中魔導兵器を仕掛けた箇所をいくつか回り、仕留めた獲物を確認する、今日の収穫は猪と鹿とさっき焼いたダイヤウルフ数匹だった。
「すみません、放置されてるとあまり良くないと思って、ダイヤウルフは焼いてしまいました」
「まぁ構わん、さてどうやって持って帰るか」
既に猪を両肩に担いでいるグスタフは、仕留めた鹿を見て思案している。
「良かったら僕達のアイテムボックスに入れていきましょうか?」
ノアがそう提案すると、グスタフは少し驚いた様子でこちらを見て答えた。
「ありがたいな、その若さでアイテムボックスのスキルが使えるのか、優秀なんだな」
「そんな事ないですよ」
照れながら答えるノアを見てカールも少し驚いている。
「いやしかし、先程倒した数十匹のダイヤウルフとホワイトウルフも既に格納しているではないか、まだ入るのかね?」
「ええ、マッテオと分けてますしまだ入りますよ」
「こっちの若いのもアイテムボックス持ちか!しかもお前達、今ホワイトウルフを倒したと言ったか?あの群れを倒したのか?」
「知っているのか?そうだ、私と彼らで倒した」
「お前には聞いとらん、どうせお前は周りのダイヤウルフを数匹倒しただけだろ」
「ぐっ…そ、その通りだが、我々で群れを倒してのだ」
グスタフに言い当てられ、カールは言葉に詰まってしまった、ノアはまた口喧嘩が始まるのかと、少しウンザリしながら鹿を収納した、獲物の回収も終わりグスタフの家へ向かった、向かう途中も口喧嘩はずっと続いていて、しばらく歩くとグスタフの家に着いたが、入口ではなく別の方へ案内された。
「すまんが、まず獲物を保管庫へ持ってきてくれ」
保管庫と言うかただの小屋に案内されて、中に入ると魔導陣の刻まれた棚が、ズラリと並んでいた。
外観はただの小屋だったので魔導陣で冷凍庫の様に冷やしているのかと思ったが、そうではないみたいだ不思議に思ったので俺は聞いてみた。
「この魔導陣はどんな効果があるんですか?」
「それは時間の流れを遅くする魔導陣だな、触れた物の時の流れを大体1/10くらいにする」
「へぇ〜そんな事もできるんですか、すごいですね」
確かに冷やすより、流れる時間を遅くした方が解凍の手間が省けていいけど、魔導陣でそんな事も出来るのかと感心した。
収納していた獲物を棚に置いたら、今度こそ家に招き入れてくれ、ベティを紹介してくれた。
「こいつが俺の嫁さん、ベティだ」
「はじめましてベティです、グスタフから聞きましたけど、ホワイトウルフの群れを討伐してくれたらしいですね、助かりましたありがとうございます」
「久しぶりじゃないかねベティ!なぁに私と彼らにとっては大した事ではなかったよ、ベティが困っていたなら、討伐できて本当によかった」
「カールさんもお変わり無いようで何よりです」
ベティに会ってからカールはずっとニコニコしている、グスタフはそれが気に入らないのか少しイラついているみたいだ、3人の関係が気になったのでマッテオは聞いてみた。
「お三方は、昔からの知り合いなんですか?」
この質問にはベティが答えてくれた。
「ええ、以前は同じ民間の研究所にいたのよ、途中からはカールさんはギルドで働き始めて、私達は国立研究所に所属したの、カールさんは今やギルドマスターですもんね、すごいわ」
「ありがとうベティ、今からでも私とやり直さないか」
「それは大丈夫よ、お二人は冒険者かしら?」
即答の上に話題を変えられている辺り、相手にされてないな…少し落ち込み気味のカールを他所に、マッテオとノアは顔を見合わせアイコンタクトで、この人達なら話しても大丈夫だろうと思い、自分達の目的を話すことにした。
「我々はベルツ王国の近衛師団の者です、今、我が国はゴーム王の治める国からの侵攻を受けてまして、小規模な戦闘の折、相手方が魔導陣を用いて戦っている事に気づいたんですが、我々では解析は難しく有識者を探しにドワーフの国々を回ってます」
「なんと、そういう事だったのかね!」
「黙っていてすみません、ドワーフの多い国内という事もあって、口外してなかったものでして」
話を聞いたグスタフが話し始めた。
「まぁ黙っていたのは正しい判断だと思うぞ、しかしゴーム王も強引にいったな、今度はベルツに攻め込んだのかよ、いくら領土が増えたからといって、まだ自分の国も安定してないはずだろうに、時期尚早にもほどがあるな」
カールも話に入ってくる。
「戦には勢いも大事だからね、周りの国の多くを手に入れたのだから、多少強引でも勢い任せに行って少しでも領土を削り取れればいいと考えたのだろうね」
「それで、魔導陣の解析をしてどうしたいの?同じように戦で使いたいの?」
「……正直に言うとそういう考えは勿論あります、ただゴーム王国の様に他国を侵略するような考えは、我らの国王にはないです。
それより、人々の暮らしに役立つ魔導陣などもあるかもしれないと考えてますね」
「そう、まぁそうよね、軍事に利用できないかと考えるのが普通よね」
ベティは少し複雑な表情を見せた、そんなベティの反応と違ってカールは、ゴーム王国の魔導陣について興味を持ったようだった。
「それで、ゴーム王国の使っていた魔導陣と言うのはどんな物なのかね?」
「はい、おそらくですけど兵士を転移させる魔導陣ではないかと推測してます、我が国内で数件、突然兵士が現れ攻め込んできたという話が有りましたので」
「そのうち1件は俺達の目の前で起こったので、戦闘後に国境付近を調べて、この目で魔導陣を発見してます」
転移の魔導陣と聞いてベティも少し興味を持ったようだ。
「なるほど、確かに状況を聞くと兵士を転移させた様に思えるわね…けど転移の魔導陣なんてかなり高度な代物だわ、カールさんはどう構築すれば使える物になるか見当はつく?」
「いや、さっぱりだね、そんな物が実現可能なのか全く見当も付かないよ」
そのやり取り聞いて、マッテオもノアも意外だという反応をした、それを見ていたグスタフが説明してくれた。
「いいかお前達、魔導陣ってのはな、魔術を再現してるものなんだ、転移の魔術はあるとは聞くが、実際使ってる奴なんて見た事ない、だから何をどうすれば陣を構築できるのか、見当がつかないんだよ」
「あ〜」と俺達2人は、腑に落ちた感じで声を上げた。
「まぁ解析するにも、実物を見ない事にはどうしようもできないわ、その魔導陣は現場に残っているの?」
「いえ、またゴーム王国の兵が侵攻してきたら不味いので消してしまいました」
「うーん、では解析は難しいね」
「そう…ですか、しかし我が国としては魔導陣は研究したいと考えてます、どなたか僕達と一緒に来てくれませんか?もしくは来てくれそうな人を紹介してほしいのですが、心当たりはありませんか?」
この提案を聞いてカールが答えた。
「君達がこの私を誘いたい事は十分伝わった、しかし残念ながら私はギルドマスターだ、ついて行くことはできない」
「はい、カールさんは大丈夫です」
「そうだろう、この私ほどの…えっ?」
グスタフは笑いを堪えている。
「ベティさんはどうですか?」
マッテオは直球で質問を投げかけてみた。
「うーん、そうね…突然の事だからすぐには答えられないわね、私1人の事じゃないし」
ベティはグスタフの方を向いてそう答えた、グスタフはその視線に気づいて口を開く。
「まぁ紹介するにしても今すぐには答えられない、とりあえず今日は休んで明日、町に戻ってじっくり考えな」
そう言われて、これ以上この話はしないまま一晩休ませてもらう事になった。




