森であったドワーフは?
来月から転職して新天地!
現れたドワーフは少し離れたところから、こちらに話しかけてきた。
「何だお前達は?俺の獲物を横取りするつもりか?」
「あなたの獲物?この猪の事ですか?」
「そうだ、盗むつもりなら容赦せんぞ」
そう言って、ドワーフは斧を構える。
「待って下さい、そんなつもりはないです、歩いていたらこの猪を見つけただけで、少し離れたところに似たような形で死んでいたダイヤウルフを見かけたから、興味本位でちょっと調べてたんですよ」
マッテオは慌てて宥める。
「何?ダイヤウルフもかかったのか珍しいな」
ドワーフとそんなやり取りをしていると、カールが声をかけてきた。
「どうしたのかね?」
「カールさん、その猪はこちらの方の獲物みたいです」
「カール?」
カールの名前を聞いたドワーフは、顔を顰めながら聞き返してきた。
「ん?おぬしは…もしかしてグスタフか?」
グスタフと呼ばれたドワーフは近づいてきて、顰め面のままカールの方に話しかけた。
「何故お前が、こんなところにいる?」
「それはこちらの台詞だ、国立研究所を追い出された噂は聞いておるぞ、この猪はお前さんの獲物らしいが、こんなところで何をしている?」
「やかましいわ、追い出されたんじゃなくて、俺から出ていったんだ、あんな下だらん場所は!」
「よくいう、しかし下だらん場所という事だけは認めよう」
「お前に認めてもらわんでもいいわ!」
いきなり言い合いが始まって、マッテオもノアも呆気に取られてしまった、ノアが会話の隙をついてカールに質問をする。
「カールさん、こちらの方を紹介してもらってもいいですか?」
「ん?あぁこいつか、こいつはグスタフと言ってな元々国立研究所の研究者だよ、ヘマをして研究所をクビになった男だ」
「だから違うって言ってんだろ、俺はヘマなんかしてねーんだよ、俺とソリに合わない馬鹿上司と言い争いになったから、頭来て辞めたんだ」
また言い争いが始まりそうですなので、すかさず質問を入れる。
「研究と言うとやはり、魔導陣の研究ですか?」
「それもあるけど、俺は魔導兵器の方が専門だな」
「魔導兵器?」
マッテオもノアも聞いた事のない単語に、思わず聞き返した。
「ああ、そこの猪を射抜いた槍は、魔導兵器を仕掛けて飛ばしたんだ」
「へぇ〜罠みたいな物ですかね?どんな物か聞いてもいいですか?」
「何だ兄ちゃん達、魔導兵器に興味津々か?」
グスタフはちょっと嬉しそうに、説明してくれた。
「兵器はここの茂みに隠してある」
茂みを掻き分けると、小さな砲台のような物が置いてあった。
「元々この猪が倒れている辺りには、魔導陣を仕掛けてあったんだ、それを獲物が踏んだ瞬間にこの砲台から、槍が飛びたす様に、この砲台にも地面の魔導陣と連動させた魔導陣を中に組み込んである、つまり魔導陣を組み込んだ兵器が魔導兵器って事だ」
「ふん、こんな1回こっきりの兵器使えんだろ」
カールが気に入らない様子で悪態をついた。
「馬鹿かお前は、獲物を獲り過ぎないようにワザと一発だけにしてあるんだよ」
「と言う事は、何発も撃てるようにも出来ると?」
俺が聞いてみると、自信満々にグスタフは答えた。
「もちろんだ、兵器と魔導陣を少しイジれば可能だ、難しい事じゃない」
「そんな魔導陣すら、お前さんには描けんだろ」
カールがまたも、馬鹿にしたように悪態を見せる。
「描けるわ!馬鹿にするな…だが、一応俺じゃなくて、魔導陣はベティに任せている」
「何?ベティもここにいるのか?」
「当たり前だろ、俺とベティはパートナーなんだから」
「ベティさんと言うのは、お名前からするとグスタフさんの奥様ですか?」
「違う!」
何故か、カールが強く否定する。
「そうだ、俺の嫁さんだ」
「違う!私は認めん!」
「お前に認めてもらう必要はない!」
話がなかなか進まない…カールにウンザリしながら2人は質問を続ける。
「ベティさんは魔導陣に精通された方なんですね」
「そうなのだよ、彼女を魔術ギルドに誘ったのだが、こいつに唆され、国立研究所なぞに行ってしまったのだよ、本当なら私と共に魔術ギルドを盛り上げてくれる筈だったのに」
何故かまた、カールが勝手に答える。
「そんな話、全然無かっただろ、自分に都合よく記憶を捏造するな!本当に馬鹿だなお前は」
そんなカールを、グスタフも馬鹿にした。
「やかましい!お前が彼女の本心を、汲み取れなかっただけではないかね」
「相変わらず、お前とは話にならんな、もういいからとっとと立ち去れ」
「待て、ベティに会わせろ、久しぶりに話がしたい」
「なんで俺がそんな願いを聞かなきゃならん、いいから帰れ」
その魔導陣に精通している、ベティと言うと人にも会ってみたいが、カールがいると話がややこしくなりそうだ、けどこの人をまた探すのも一苦労しろうだと思いマッテオとノアも、是非会ってみたいとお願いしてみた。
「何?お前さん達も会ってみたいのか?…」
グスタフは少し考えてから、答えてくれた。
「まぁ、もうすぐ日も暮れるし仕方ないな…家に来るか?」
「ありがとうございます!」
ぶっきらぼうな話し方とは裏腹にグスタフはマッテオ達を気遣ってくれた、こうして3人はグスタフの家にお邪魔することになった。