ホワイトウルフ討伐
もう5月も終わりか
強引にカールが討伐に加わって、ホワイトウルフの生息する森までやってきた。
ホワイトウルフ
Bランクモンスター
体長5〜6m
ダイヤウルフの群れのリーダーが進化した姿で、ブラックウルフとは違う進化形態
闇の魔術を使って攻撃してくる
「さぁそろそろホワイトウルフが現れてもおかしくないエリアに到着したな」
「カールさん困りますよ、俺達はAランクモンスターを討伐するつもりは無いですからね」
「何を言っているのだね、アークウィザードの私と戦闘慣れした君たちがいれば問題ないだろう」
「そんな話をしている訳じゃないんですけど…それにいくら何でも、3人だけじゃAランク相手に厳しいと思いますよ」
「はは、大丈夫、大丈夫私はアークウィザードなんだよ」
会話が成立しない…と少し呆れ気味に歩いていると、複数のモンスターの気配を感知した。
「モンスターの群を感知しました、こっちから回りましょう」
「ほう…君は探知スキルを持っているのかね、これは便利だな、いつもモンスターを探すのに苦労していたんだよ〜」
「カールさん早く移動して下さい、それと静かにして」
ノアも少しイライラしてきているみたいだ、ちょっと口調が荒くなっている。
少し高い丘の上から、感知したモンスターの方を見てみると、30匹くらいのダイヤウルフの群れと、一際大きい白い狼のモンスターがいた。
「いたな、まず俺が弓で狙うぞ」
「何を言っている、魔術が使えるのだから魔術を使えばいいでわないか、魔術こそ至高!最高の御業でわないかね!」
「ちょっ、うるさい」
案の定、モンスターに気づかれダイヤウルフたちが一斉に吠え始め、散開しながら俺達を囲んできた。
「あーもう!」
「ダイヤウルフ如き問題ない!」
カールは杖を構えてダイヤウルフ達を迎え撃つ
「シャイン!」
カールが呪文を唱えると、放射状に光線が伸びていきダイヤウルフ達を貫いていった。
もちろん全部を倒せた訳では無いので、後からどんどんダイヤウルフが迫ってくるが、カールは慌てる様子もなく落ち着いて魔術を撃っていった。
「ホーリーレイ!」
今度は一筋の光線が、数匹纏めて貫く、別の方向からもダイヤウルフが飛び出してきた。
「ほれ、もう一丁、ホーリーレイ!」
また光線がダイヤウルフを貫くと思ったが、光線の先に黒い渦が現れ光を呑み込んでしまった。
えっ?と思った時、大きな白い狼がゆっくり歩いてこちらに近づいてくるのが見えた。
「おぉ、モンスターの分際で魔術を使うとはなかなかやりおるな、しかし私の魔術の前では稚戯に等しい!ホーリーレイ!リフレクト!」
カールが2つの魔術を同時に使った、放った光線はホワイトウルフからは逸れているが、その先に光りの障壁が現れて、光線をホワイトウルフの方へ反射させた。
これにはさすがに関心したが、それだけでホワイトウルフを倒せはしない、ダメージを受け、怒ったホワイトウルフが牙を剥いて唸り始めた。
「ウォーーーン」
遠吠えをした途端に辺りが、暗闇に包まれて視界が塞がれてしまった、すぐに側にいたノアやカールの姿も見えない。
「ノア!カールさん大丈夫か!?」
マッテオは2人に呼びかけた。
「今のところ大丈夫だ、魔術で視界を奪われたね」
「大丈夫だ私の魔術ですぐに明るくしてやろう。
シャイニングボール」
カールが何か呪文を唱えたが、特に変化はなかった。
「馬鹿な!何故魔術が出せない!?」
「さっきの光線と同じで、闇に吸い込まれたんじゃないですかね…気をつけて、ダイヤウルフ達がゆっくり近づいてきている」
「君は相手の動きが分かるのかね?」
「探知スキルがありますからね、大体の位置ぐらいは」
「それは心強い!私に敵の位置を教たまえ、魔術で薙ぎ払ってやろう」
「2人共動かないで」
マッテオは2人に動かないよう指示を出して剣を抜いた、向かってくる敵の気配を確認して、瞬歩を使い一瞬で数匹斬り伏せた、モンスター達が少したじろいで攻めあぐねているのが分かった。
チャンスだと思った俺は、威圧のスキルを使う、ダイヤウルフはこれで動きが完全に止まった。
再び瞬歩を使いダイヤウルフを数匹倒した、これで数はかなり減った、しかしここで奥で控えていた大きな気配が素早くこちらに向かってくるのが分かった。
探知スキルで分かるのは相手の位置だけで、相手の姿形や細かい動きなどは分からない、だから今、ホワイトウルフがこっちに向かってきているのは分かる、このまま噛みつくのか、爪で引っ掻いてくるのかは、マッテオには分からないので的確な防御ができない、だから大きく避けるしかない、動かないように指示した2人から離れるようにホワイトウルフを誘導した、何とか攻撃を躱してはいるが、全ては躱しきれない、何度か攻撃を受けたがある程度時間を稼ぐと視界が明るくなってきた。
「おっ!視界が開けてきたぞ」
「そうか、魔術なら効果時間切れがある、マッテオが上手く時間を稼いでくれましたね」
「そのマッテオとホワイトウルフは、どこに行ったんだ?近くにはいないね」
「多分あっちです、足跡が続いてます、行きましょう」
ノアとカールは足跡を追いかけた、少し行ったところで、今まさにマッテオに飛び掛かろうしているホワイトウルフの姿が目に入ってきた。
ホワイトウルフは、口を大きく開けて飛びかかった。
「フレイムカノン!」
開けた口に向けて炎の魔術を打ち込んだ、喉の奥まで焼かれたホワイトウルフは地面に倒れてのたうち回っている、その隙に懐へ近づいて心臓に剣を突き刺しとどめを刺した。
「あいつ…なかなかエグい事をするでわないかね…」
「え、えぇ…遠目から見るとあんな感じなのですね、初めて気づきました…」
「おっ!追いついたか、今ちょうど終わったぞ」
2人が近くまで来た事に気づいてマッテオは声を掛ける。
「内蔵を焼いて心臓を一突きか、Bランクモンスター相手に圧倒的ではないかね」
「そんな事ないですよ、元々あいつの魔術で視界を奪われて、反撃できずにここまで避けてきた訳ですし、爪はいくらか受けましたし、魔術での攻撃も食らってますよ」
「それもそうか、我々ウィザードは手も足も出なかったからな」
「そうですね、狙う相手が見えないと魔術も当てられない、我々は近づいてくるモンスターの気配も察知できませんでしたからね、助かったよありがとうマッテオ」
「皆無事でよかったよ、それよりこいつデカいしノアのアイテムボックスに収納してもらっていいかな」
「もちろん、それくらいはやるよ…カールさんBランクに、これほど手こずりました、とてもAランクは相手できません」
「うーん私は逆に、君達がいれば倒せる気がするんだがね…しかしBランクに何もできなかった私が言っても説得力がないな」
なんとか説得できそうだ、このまま町に帰って本格的にベルツ王国に来てくれる研究者を探したい、そう考えながら町へと歩いていると、さっき逃げ出したと思われるダイヤウルフが数匹槍に貫かれて息絶えていた。
「なんだこれは?誰かが仕留めて放置しているのか?」
「これこのままにしていて大丈夫ですかね?」
ノアがカールに尋ねる。
「放置されているなら、良いことはないな、この死骸を食べに別のモンスターが寄ってるくる、もしくはこのまま朽ちてくると、モンスターは瘴気を放ってこの辺りの環境に影響が出るだろう」
「ならどうしましょうか…」
「簡単だ焼いてしまえばいいのだよ、マッテオ炎の魔術で焼却しなさい」
「はい、でも勝手に処理しても大丈夫ですかね…」
「構わん!放置してる方が悪いのだよ」
ダイヤウルフの死骸を焼いてから、俺たちはまた町の方へ歩き始めた、すると今度は似たような状態の猪を見つけた。
「今度は猪…」
「やはり誰かが狩りをした跡なのか…?」
ノアとカールが猪を調べていると、何かが後ろから近づいてくるのが分かった。
「2人共、後から何かが来ます、気を付けて」
マッテオは2人に注意を促し、振り返って剣に手をかけた、すると現れたのはドワーフの男だった。