現状報告
3人は足取り重く王都へ帰った、ハインツとクラウスはまだ戻ってはなく、取り敢えずベクター、ゲイル、ラーシュの大隊長3人とオリバーに砦での出来事を話した。
「なんとそんな数の敵兵が攻めて来ていたのですか!しかも転移の魔導陣を使っての侵攻など、聞いたことがない」
ベクターは驚きのあまり声を上げた。
「それも驚きですが、陛下、ノアとマッテオだけを連れて現地に向かったのはどういう事でしょうか、我々近衛師団の事を軽んじておられるのか?」
オリバーが苦言を呈してきた、当然の事なので、アルムガルトも素直に謝り軽率な行動を反省している…沈黙が続き、話が滞ってしまったので、見かねたラーシュが話を進める。
「オリバー殿の意見もごもっともですね、その事についてはハインツ殿とクラウス殿が戻り次第改めて話しましょう、今、我々が直面している問題の話しをしませんか。
南側の防衛について、直轄領以外にも兵を派遣ししたほうが良いのではないでしょうか」
ラーシュの意見にゲイルが答える。
「南側の領土全てに兵を送るのか?それでは直轄領の防備が心もとなくなるな、ドワーフの国と広く面している領地だけに限定したほうがいいだろう」
「国王兵団だけではなく、近隣の領地から送ってもらえばいいだろう、例えばガスパール領の北にはテオバルト領がある、あそこの兵団は強力だ、南東の防備はそれでかなり固まると思うぞ」
ベクターはルイスとの戦った経験から提案を出した、各地方で協力するのはいいことだが、一応まだ今は戦争状態ではない、防衛は事態が落ち着くまで、なんて曖昧な期限で駐留する事になれば費用がどれだけかかるか分からない、その費用の負担を強いれば反発が起こるだろう、国で負担するにも莫大過ぎるので、捻出は難しい。
「しかし、陛下の話だと相手の軍には巨人族がいるそうじゃないか、それを地方の兵団だけに任せるのはなかなかに酷な話だよ、王都から上級職の兵を派遣しないと下手したら壊滅するぞ」
「どちらにしても、地方で協力してもらっても、集まる兵は50から100人くらいだろ、直轄領の砦みたいに大型の兵器がない所に、上級職1人や2人と兵士50人くらいじゃ巨人族相手にどこまでできるか疑問だ」
話し合いは中々方針が決まらず、実際現地を見に行ったハインツとクラウスの帰りを待ってから、改めて話し合いの場を設ける事で、この日は解散することになった。
3日後、ハインツとクラウスが王都に戻ってきた、案の定アルムガルトは2人から説教を受けた3時間ほどアルムガルトの部屋からは小言が聞こえていた。
次の日、前回の4人に加えて、両大臣、何人かの要職に就いている人物を集めて会議が始まって、まずはハインツが話し始める。
「えー、皆忙しいと思うが集まってくれた事に感謝する、今日は我が国の南側の防衛について、私とクラウスが実際に見てきた現地の状況と、先日、陛下自ら撃退されたと言うドワーフ軍の話を踏まえ、今後の方針を決めたいと思っています」
ハインツの挨拶が終わると、クラウスが話し始めた。
「ではまず、私から見てきた現地の事を話しましょう。
私が向かったのは南東のガスパール領で、元々ドワーフの国とは1本の道で繋がっていたので、その道に関所を設けておりましたが、ここ数ヶ月で2回ほどドワーフが関所以外の場所から1中隊程度の規模で侵攻してきたという事らしい」
「1中隊だと100人くらいか」
「ベクター殿の言う通り、それくらいの人数に加えて2回目はBランクモンスターを、数体引き連れて来たらしいく、その時の戦闘で多数の負傷者がでたので、王都へ救援要請を出したみたいです」
「Bランクモンスターを数体…ドワーフ軍には熟練のテイマーがいるという事か」
「それは分からないですね、捕まえていたモンスターを放っただけの可能性もあります、国王兵団を200人連れて行って、領内の侵攻ルートの調査をしましたが、残念ながら大した成果はなかったですね、念の為、100人の兵を残して戻ってきました」
クラウスの報告が終わり、ハインツの報告も聞いたが、同じように関所以外からの侵攻とモンスターを連れてきていたという内容だった、救援を要請しようとしていたらハインツが現地に向うと連絡が来たと言う事態だった、ハインツも現地に100人の兵士を残して戻ってきたようだ、報告を聞いたゲイルが話し始めた。
「お2人共ご苦労様でした、陛下がご対応した時とは規模がかなり違いますね、やはりこちら側の防衛能力をしっかり見られている感じがします。
それで、これからの我が国の対応を、話していきたいのですがよろしいかな?」
アルムガルトは頷いて答えた、それを見てゲイルが続けて話す。
「まずは南側の防衛の強化が最優先かと思います、これに関しては昨日も少し話し合いましたが、中々方針を決めかねておりました、先程の話からすると現地兵団に加えて3、4小隊ほどいれば対応可能かと感じたのですが、ベクター、ラーシュどうかな?」
ゲイルからの質問にベクターが答える
「そうだな、それくらいで対象可能だろう、ハインツ殿とクラウス殿が残してきた兵はそのままにして、近隣へ救援に向かえるようにしておこう」
その方針を聞き財務卿のホルストが口を挟む。
「失礼、軍部の方針は分かりましましたが、いつまで?という事が気になるのですが…国王兵団の遠征の費用に関してはやはり国庫から出さざるお得ないと思いますが、期限を決めないと国費も無限ではないので……」
「それに関しては陛下、侵攻してきたドワーフの国に対して、使者を立てて早期に侵攻を止めるよう要請しますか?」
ハインツからの問にアルムガルトは少し考えた。
「うーん、宣戦布告もなしにいきなり攻めて来るような連中に使者を送っても大丈夫だろうか…その場で拘束されかねない危険な任務になるだろう」
「それもそうですが、相手との関係をはっきりさせる為にも、使者を送ったほうがいいかと思いますが」
クラウスの考えを聞き、使者を決める事になった、斥候役の中からと意見もあったが、ハインツからマッテオとノアに任せてはどうかと意見が出た、これには近衛師団のオリバーが反応した。
「ハインツ殿、彼らはまだ正式な国王兵団ではありません、近衛兵候補です、危険な任務に就けるのは賛同しかねるな」
「オリバー殿の意見も分かるが配置が決まっておらず、実力的に申し分ない者など、彼ら以外にいないだろう」
「陛下はどう思われますか?」
オリバーから意見を求められ、アルムガルトはハインツに質問を投げかけた。
「ハインツ、オリバーの言う通り彼らは正式な兵士じゃない、実力を理由に選んだと言っているが、まだ何の任務に就いた事もないだろう、実力を理由にするには強引すぎるな、他に意図があるなら言ってみろ」
「…そうですね…彼らはこの3年で戦闘面で相当な実力を身に付けたと思っております、この任務を機に近衛兵候補から正式に近衛師団に入れてはどうかと考えての事です、少々強引だった事は認めます」
ハインツの考えを聞いて、クラウスも自分の考えを付け加える。
「正式な近衛師団に入れる事に関しては、私も同意見ですね、もちろん決めるのは彼らですが、このまま冒険者になるなど言われたり、万が一にも他国に行かれたら、大きな損失どころか脅威になります」
訓練を見てきたベクター、ゲイル、ラーシュも同意見だと言ってきた。
「では彼らに近衛師団へ入団を進めるのが先だな」
アルムガルトは、オリバーにマッテオとノアを呼びに行くように頼んだ。




