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【第18話】推しのアイドルと例のあいつ



「ただいま〜」

 仕事が終わり、俺が家に帰ったのとほぼ同時に、台所で晩御飯を作っている音葉から


「きゃあぁ!!来ないでぇ!!」


 と大きな悲鳴が聞こえる。

 俺は、何事かと思って、急いで靴を脱いで台所へと向かう。

 すると、そこには台所の端っこで小さくうずくまる音葉の姿があった。


「ど、どうした!?音葉!?」

「ゆ、ゆうくん!助けて!!!」


 そう言って、エプロン姿の音葉は俺の腕に抱きついてきた。

 エプロン姿の音葉はその大きくて柔らかいものの存在がよく分かる。さらに調理しやすいようにポニーテールにしているのが音葉の色気を引き立てている。

 俺は、そんな音葉の格好をドキドキしながら眺めていると、音葉が言う。


「ちょっと!ゆうくん、私の方は見なくていいから!ほらあっち!!」


 そう言って音葉が指差す先には、大きなゴキブリがいた。

 音葉はそいつを見ると、青ざめた様子で、俺のスーツの裾を掴む。


「ねぇゆうくん!助けてぇ!!」


 音葉は今にでも泣き出しそうな顔で俺の方を見つめる。

 俺も正直、ゴキブリが得意なわけではないが、そんな顔を見せられたら黙っていられるはずもない。


「分かった……じゃあ紙コップか何かを持って来てくれないか?」

「お、おっけー……今取ってくるね……」


 そして、音葉は俺のスーツの裾を恐る恐る手放し、紙コップを取りに行く。




「それっ!!」


 俺は音葉から貰った紙コップをゴキブリの上に被せて、ゴキブリを捕まえる。

 ゴキブリは捕まったのに気が付いたのか、紙コップの中で走り回っているのが分かる。


「よし、音葉!捕まえたよ!!」

「おぉ!!ゆうくんありがとう!!」

「じゃあ、今から外に逃すから音葉は隠れてて!」

「分かった!!」


 そう言うと、音葉は急いで寝室へと入り、ドアの隙間から俺を覗いている。


「ゆうくん!頑張って!!」


 後ろで音葉が応援してくれているのだと思うと、このゴキブリ退治だって頑張れる。

 俺はチラシを手に取って、紙コップの口に入れる。


 そのまま紙コップをひっくり返して、ゴキブリが逃げないように手でしっかりと蓋を閉めて、ベランダへと走る。

 そして、ベランダの窓を開けて紙コップをひょいと投げる。


 ベランダの窓を閉めて、その場に座ってゴキブリを眺めていると、紙コップから出るとすぐに外へ飛び立って行った。


「よし……音葉〜!終わったよ〜!」


 すると、音葉は安心しきったような表情で寝室から出てきた。


「ふぅ……良かった……ゆうくん、ありがとね!!」

 エプロン姿の音葉が近づいてきて俺に向かって微笑む。


「いえいえ……たまには男らしいこと出来て良かったよ……」

「ふふっ、いざという時はしっかりしてて、ゆうくんは本当に頼もしいよ!」

「や、やめろよ……恥ずかしい……」


 俺は音葉に誉められるのが嬉しくて、思わず音葉から目を背ける。



「もう!ゆうくんったらほんとに可愛いんだから……」


 俺たちの頬は真っ赤に染まっていた。



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