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情報源との接触と一息

 御嬢様が王子様としか結婚しない理由、王子様が結婚しない理由。この大きな二つの謎を解明出来れば話は進むというのに誰にもそれがわからない。持久戦して判明するならやらんでもないが、短い間の付き合いだが絶対ないと言っておく御嬢様に関しては。


どうやったら口を割るのか。俺には絶対に割らないだろうし何か良い手は無いか!?


「あら、暗い顔をしてどうしましたの? コート侯爵」


 不意に声が掛かり顔を上げると、そこには御嬢様を小型にしたような女性が羽団扇を仰ぎながら立っていた。


「これは失礼をミレニア姫様。今宵もご機嫌麗しゅう」

「無理しなくて結構よ。あなたのその疲れた顔、とても素敵だわ」


 ニヤリとしながら顔を近付け耳元でそういう御姫様。マジで小型御嬢様って仇名を付けた自分のセンスの凄さを呪いたくなる。なんとか王族に伝手を持ちたいと思い、社交界で旦那様から頂いたお給料などを使って差し入れや面倒事を引き受け続けやっと繋がったのがこの姫様だった。


「お褒めに与り光栄です。それで今日は何か情報を仕入れて来てくれましたか?」

「あらあなた私に指図する気?」


「いえ決してそのような……」


 年齢は十八歳で御姫様だが恋愛小説や観劇が大好き。彼女から情報の対価として要求されたのは観劇への同行とそれに対する感想だった。最初はしんどくて仕方なかったが、毎晩のように連れていかれて今では中々興味深く見る様になってしまったのが恐ろしい。


その上ミレニア姫から事有る毎にこれを解明すれば御嬢様の願いを叶えるヒントになるかも、とか言われれば必死にもなる。


「では参りますわよ! 皆様もこの人に用は無いでしょう?」


 お姫様にそう言われて用がありますなんて言う人がいるわけもない。今夜もお姫様から情報を貰うべく観劇へ連行される。ホント毎日毎日削られ続ける……執事がこれほどまで過酷とは。エレガントッ! とか言える余裕はない。ボロ雑巾状態の中身を気合を入れて踏ん張っているだけだ。正直この観劇をしている間だけが癒しの空間になって良かった。この世界の数少ない娯楽すら攻めて来るとしたらやってられない。


「今日の女優はいまいちね」

「体調でも悪かったんすかね」


 劇場に備え付けの高貴な人たちだけが入れるレストランがあり、そこに観劇の後二人で食事をしてお茶をしながら感想を言い合う。お姫様はどんなに劇が良くても俳優たちに挨拶されるのをとても嫌っている。


他の人に聞いたが前はとても喜んでいたのに最近は来るなと前もって言うらしい。やはり見る側と演じる側の境界線はしっかり保つべきだと考えているんだろう。そういう意味でプロの観劇人として尊敬する。


「あなた最近失礼な口の利き方多くない?」

「あ、失礼を。一日の終わりに良い物を見て浄化されたかったんすけどね。ちょっと残念で」


「わからないでもないけどね。話は良かったのに」

「でも良いんすか? あれ反王家みたいな話ですけど」


「良いんじゃない? うちとは関係無いし。もっとキツく締め付けてるところならまだしも、この国で縛ってるものは風俗と薬物と武装蜂起くらいだからね」


 うちの旦那様もそうだが、商人が自由にやれているのも王様がイエスと言わなければないわけで。勿論自由には責任も伴う部分は抜け目なくしっかり抑えている。外交もしっかり行い現体制を崩すのは至難の業というのが他の国の商人の見解でもあった。


不正を許さないがある程度自由にさせ、王族たちも不必要な遊興を控えている。国内の不満を少しでも減らそうと努力しているので、元の世界の偉い連中よりは万倍マシだと思っている。


「そういうところがこの国のいいところっすよね。個人的には御嬢様がとっとと嫁いでくれれば思い残すことはないんすけど」

「御嬢様が結婚したらどうするの?」


 そう尋ねられ数十秒時が止まる。どうするんだろうか……今のところそれが目標だし、それが叶えられれば帰れるだろうと思って頑張ってるだけなんだよな。


「うーん、そうなればお役御免かもしれないっすね。親父さんに頼まれて執事やってるだけだし」

「へーそうなんだ……そしたら今度は王家に仕えてみない?」


 なにかそわそわしながらミレニア姫はそう提案して来た。帰れなかったとしたら食い扶持を稼がないといけないし、王家なら給料高そうではある。だがどう考えても面倒な人ばっかだろうしそこにあの御嬢様も加わるとなると地獄としか思えない。


「いやぁ能力低いから無理っすよ!」

「そんなことないわよ! あの御嬢様抑え込んでるんだから凄いってお父様も褒めてたわよ!」


 ……王様にまでそんな話が伝わるとかマジ恥辱。御嬢様の婚期は遠のいてる気がしてならない。


「王様にお褒め頂き光栄の至りそして絶望」

「光栄に至って絶望ってなにそれ」


 ケラケラと笑うお姫様に釣られて暫く笑う。劇はいまいちだったがこうして一日の終わりを笑って終えられたなら今日はまだマシな方だ。お姫様も毎回社交界には毎回来ないので観劇はまたしばらくお預けだろう。


この日は次の社交界に来る王子様、ゴール様の情報を頂き解散となった。





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