終わりが来てそれから
電車内から外を見る、明暗差もあるのだろうがとても暗く見える。
時刻はちょうど17時を過ぎたところで多くもない少なくもないそんな電車内で揺られている。
終わりが近づいている、そんな内容を乗客たちは話している。
別に興味が出る話題でもないが他にやることも無くただ耳を傾ける。
一通のSNSがスマホに表示される。
『もう終わりも近づいてきたがなにか悔いは無いか?』
そんなものは沢山あるし毎度同じように諦めてもいる……いちいち言わないで欲しい。
チラチラと窓の外に白いものが降っているのが見えた、雪だ。
何人か傘を持っているのはそういう事だったのかと独りごちる。
もちろん私は持っていない、天気予報なんて見る必要がまずない外に出ないから。
さぁ、もうすぐ駅に着く。
1人で目的地に向かう中で妙に風が冷たく感じる、今年は季節の変わり目がわからないくらいには気温が不安定だ。
「ただいま……」
1人で暮らしていると意識しなければ出てこない、そんな言葉をかける。
「おかえり」
特に帰省する旨を伝えていなかったのに驚きも何もなく母は私を受け入れてくれる。
寒いからさっさと入れと急かしてくる母に変わらないなと、帰るまであった緊張が解れる。
居間に入ると2人分の蕎麦がすでに用意されていた、もしかしたらいつ帰ってきても良いようにずっと用意してたのかもしれない。
2人で手を合わせいただきますをする。
「もしかしていつも待っててくれてた?」
当たり前だと悪態をつかれる、連絡くらいは入れろと更につつかれる。
「ま、私もそんなもんだったしね……親子は似るもんだわな」
母にもそんな時があったらしい、元々自由な人だしそんなものかとは思う。
テレビに目を向ければ終わりを締めくくるような番組ばかりだ、興味はないが手持ち無沙汰だと目を向けてしまう。
「今日来たってことは今回は見に行くのかい?」
そうだと頷く、私はここに終わりと……そして始まりを見に来た。
良い時間なのでサクッと準備をして玄関を出る、気をつけろと言う母の言葉を背に受けて。
無事に目的地付近には着いた、だが……
「いーじゃん少しくらい、俺たちとイイ事しよーぜー?」
「さっきからあたし断ってんじゃん!」
「いいから一緒に来いよ、カマトトぶってんじゃねーよ!」
めんどくさい所に出会した……助けるべきか。
「さわんな!」
払った手がもう1人の男に当たった、これは……。
「あーあーあー!下手に出てりゃあ随分と暴れるじゃん?」
「あららら?タケちゃんオコだよ?やっちゃったね嬢ちゃん、タケちゃん女でも容赦ないからね?」
ほんとテンプレみたいなヤンキーたちで……ま、終わりも近いしこういうバカも増えるのかしらね。
「おにーさんたちちょっと待ちなさいな、ごめんねウチの連れが……でもおにーさんたちもすこーし乱暴すぎるじゃないかな?」
「「誰だお前?」」
「私はこの子の待ち合わせ相手よ、悪かったわね今回はこれで許してよ」
私は10000と数字の書かれた茶色い紙を握らせる。
「……へへっ、まぁ?そういう事なら許してやるよ、おいカズ行くぞ」
金に夜の街に消えてくヤンキーたち、早めに退散しますかね。
「あの、あたしらのためにあんなお金……お礼なんてできない!」
「お金なんて渡してないわ、ほらこれ」
ピラっとカバンから出した紙には子供銀行と書かれた1万円札もどき。
「これ……お姉さんやるわね」
JKに褒められた、少し嬉しい。
「さて、気づかれる前に移動するわよ。この後予定ある?」
「あたしは特にないけど……」
除夜の鐘が遠くで鳴っている……。
歩いて10分ほどで着いた秘密の場所、とはいえ階段を登り続けるのは結構足に来る。
「あの……ハァ……まだ着きませんか……ハァ……?」
息も絶え絶えって感じのギャルちゃん、厚着じゃなかったらかなりいやらしく見えるだろう。
さて、着いた。
「階段キッツ……お、おぉ!」
ここからはこの街の夜景と夜空が同時に見える。
「良い場所でしょ?」
「ヤバ!めっちゃ映える!!」
さっきまでのどうしたと言うくらい喜んでいる、無理矢理連れてきた感じだが良かった。
ちょうど除夜の鐘が鳴り終わったようだ。
さて新しい明日がやってくる。
「あけましておめでとう」
これから新しい世界がまた始まる。
見ていただいた読者の皆様に、新しくも素晴らしい1年が来ることを願う。