第二・カステラ登場・生まれ変わるなら最初からたのしく過ごせるキャラがいい
カステラ登場。で、どうせなら色々都合よくしてもらってと
第二・カステラ登場・生まれ変わるなら最初からたのしく過ごせるキャラがいい
(あいたた……)
アタマが痛い……と思い左手を額にあてる悠、つぎの瞬間に周りがやけに白くまぶしいということを意識する。
(あん?)
どこかわからない場所に仰向けだった悠、グッと体を起こしたらそれとなく上とか左右を見つめる。そしてここはどこなのかさっぱりわからないという結論に達し、とりあえず立ち上がり左手でアタマをシャカシャカやっていたら、不意に後ろから声が飛んできた。
「悠、こっちこっち」
ちょっと年齢が低いであろう女の子の声が耳に入る。だから反射的にふっと振り返ると、そこには白い輝きに満ちた机があり、それに向かってひとりの女の子が座っている。そんなの全然気づかなかったと思う悠だったが、クイクイっと手招きされては仕方がない。素直にその机の前に向かい、イスに座っている誰かと向き合う。
「よく来た悠、わたしはカステラという」
「カステラ?」
悠、自己紹介した少女を見て絶対ふつうじゃないよなぁって思ってしまう。紫の髪の毛に左右のお団子ヘア、そしてそんなの初めて見た! としか言いようがないレインボーな輝きに満ちたモンクローブとかカステラって名前とか、見た感じは小学2年生くらいのポッチャリ幼女にしか見えないとか、どこにふつうがあるのかな? と改めて思う。
「わたしカステラは番外死亡者を取り扱う者。ヘルという女神の妹の友だちの親せきを親に持つ娘ってところ」
「番外死亡者?」
「そう、悠は出来心でいい事をして死んだ。それはかわいそうだって事だから、蘇りとか転生とか異世界送りとかどれか選べる。日本の地獄は融通が利かないことで有名だからな、よって悠はこっちに回されてきたってわけだ。大サービスとして悠が望むように悠をリメイクしてやってもいい」
「あ……そうか、ぼくってやっぱり死んだ……」
「そう、まったく気の毒だ。だってなぁ、悠が助けた女って全然感謝していないからな。今は自宅で寝そべりながらスマホゲームに課金している真っ最中。わたしは悪くない! と思うどころか、頼んでもいないのに余計なことをして死ぬ方が悪いとかつぶやいているぞ? 悠はバカだ、いい格好するから大切な命を落とす。まぁ、そういう気の毒だからここに来たわけだが」
「そうなんですか……」
「で、悠よ、どうする?」
「どうって?」
「このままリターンしてふつうによみがえるか? とても平凡だが悠が望むならそれでもいいぞ?」
「ふつうによみがえる?」
悠はクッと腕組みをして目線の向きをカステラから外し、ちょい横に向けてぼやき始めた。
「ふつうにこのままよみがえっても正直つまらないし、別にいい事が将来に待ち受けているような気もしないし……どうせよみがえるんだったら限界突破した自分で復活したい気がする」
「限界突破とは?」
「いやほら、たとえ運動とかするでしょう? ある程度まではグイグイっと成長したり強くなったりする。でも自分にとっての天井があって、それ絶対超えられないっていうのが出てくるじゃないですか。ゲームでいえば単にうまいのではなく、そこまで出来るやつは天才か変態なのかな? と言わざるを得ない領域。そういう範囲の力とかが欲しいかなって思いました」
「よし、わかった。なら悠の体力と力はいまの1000倍にしよう。で、他には? 体力だけでいいのか?」
「そうだなぁ……ど、どうせなら自分好みの彼女とか欲しいけど、でもそれは与えてもらうモノじゃないって気もするわけで……」
「なら悠のフェロモン度を上げよう」
「フェロモン度?」
「異性ホイホイの魔法みたいなモノ。それを現在の悠より1000倍濃厚にしよう。ついでに聞くが、悠はどういう女子とか女が好みだ?」
「えっと……言ってもいいですか?」
「死んでまで恥じらって本音を言えずによみがえると、途方もない後悔をするぞ?」
「えっと、正式名称はなんだっけな、ショートレイヤーだったかな。ま、まぁショートヘアーっていうのが似合っていて、ふっくらとかムッチリでおっぱいが大きいって女の子が好みかなぁって……えへ」
「そうか、わかった。で、他には? 言えるときに言うだけ言ってもらっておかないと損するぞ?」
よし! とキブンが高ぶってきた悠、どうせなら体力だけでなく何かの強さが欲しいと言ってみた。それは武術みたいなモノかもしれないと言った後、どうせなら剣術の達人というスキルがいいと付け足す。
「剣術? 剣の戦いがいいと? 銃を撃てば一発で済むだろう」
「いやいや、飛び道具って夢がない。なんていうかこう、ファンタジスタみたいなモノになってみたいんです」
「ファンタジスタか、ならその気になれば少しは戦闘魔法が使えるようにするか?」
「あ、それいい! そういうのあこがれる」
「なら悠、見た目はどうする? なんなら顔とか体の特徴を変えてもいい。どうせなら神みたいなうつくしい美少年になるとかどうだ?」
「顔とか体の特徴を変える?」
すると悠の表情がちょっと哲学色になった。どうした? とカステラに聞かれたら、いやいやそれはダメですと言って首を横に振る。
「死んだのだから変わってもいいじゃんって思うんだけど……でもやっぱり、この体とか顔は親からもらったモノ。捨てるか? って言われたら胸が痛むんです。だから顔や表面の特徴はこのままでいいです」
「では悠、まずは体力を1000倍に引き上げる」
「はい!」
ここでカステラが初めてイスから立ち上がった。その身長とかチンチクリンな見た目はほんとうに幼女だが、今までの話やこの場のイメージを思えば、無礼な態度はとれないと悠はまっすぐ立って背筋を伸ばす。
「悠の体力1000倍!」
カステラは言いながら右手に持つスカル杖を振った。それはただの杖振りにしか見えなかったし、悠の見た目に劇的な変化があるようにも見えない。だが少しして悠はびっくりって表情になり、自分の開いた両手を見つめてドキドキな声を出す。
「え、か、体が……すごい身軽なのにどっしり安定する。なんか体内にある生命力が無限に湧き出すみたい。こんなの初めてです、いかな事もできるとしか思えないこの感じ、いきなり世界が変わったような気さえして」
ギュッと両手をにぎる悠を見ていたカステラ、つぎに悠のフェロモン1000倍! と叫んで杖を振った。でもそれに関しては見た目も内なるモノも、悠自身がまったく実感できなかった。大きなスタンドミラーを出してもらったが、そこに映る自分を見てフェロモンとはいったい……と不安げにぼやく。
「悠、フェロモンは大方の異性に効くがすべてではない。どうしても相性の合わない異性もいる。だがそれでも悠は世界一モテる男の領域に入ったぞ。そしてこれを進呈しよう、受け取れ!」
突然にカステラから何かがホイっと投げられた。焦った悠の手が反射的に受け取ると、今の悠にはちょっと重いで済むモノ、それはピカピカに輝く見事な剣。
「おぉ……」
キラキラとまぶしい剣身に見入った後、本来ならまともに振れない重い代物を水平斬りしてブン! と音を鳴らせる。そしてワクワクって顔をしながら刀を背中にかけ、とっても自信に満ちた声で言う。
「なんかすごい……胸の中に絶対的な自信があると思ったら、なんか今まで想像もできなかった余裕が湧いてきます。いかな物事にも動じないという、まるでウルトラマンにでもなったようなキブン」
言ってすぐウルトラマンは大げさかなと笑う悠の顔には、けっこうな無邪気と世の中に恐れないゆとりみたいなモノが混じっている。
「では悠、あそこにあるドアの向こうへ進んでいけばいい」
「向こうになにがあるんですか?」
「悠にピッタリな世界だ。そこでたのしく過ごせばいい。悠は今まで色々とするべき努力はしていた方だからな、それで人のために命を失ったのだから、今度はあたらしい世界で楽しく過ごすくらいの資格はある」
「わかりました……ありがとうございました」
こうして悠はカステラに一礼してから、やや離れたところに出現したドアへと向かって行く。これまでと同じではなく、新生たる悠として背中に神々しい剣を一本背負って白い輝きに包まれるドアを前にした。そして右手でドアノブをつかんでグッと回し引き開けると、まぶしい光に目がくらむと左手で視界を覆いながらも、カステラが悠にピッタリなと言った世界へと足を踏み入れる。
「息吹アシスタント」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/861687667/369533042
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