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転生したらウサギだった件  作者: へびうさ


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16/20

16.病院に連れて行かれた(3)

 それから、いよいよ本格的な健康診断が進められていった。


「それじゃ、短い耳から診ていきましょう」


 五木先生は余計な一言を言ってから、俺の耳を診察し始めた。


 耳が短くて悪かったな。

 ミニレッキスよりもネザーランドドワーフの血が濃く表れているからだろう。


 先生が耳を診察している間、俺の体にはタオルがかけられ、その上から絵留が保定している。

 そんなことしなくても、動いたりしねえよ。


「おとなしい子ですね、普段からこんな感じですか?」

「部屋で自由にさせると、やんちゃなんですよ。動いちゃいけない時を理解してるみたいです。爪を切ってる時もおとなしくしてくれますし」

「それはすごいです。やっぱり賢い子なんですね」


 おう、もっと褒めていいぞ。


「うん、耳は異常ないですね」


 そう言って先生が手を離すと、俺は頭をブルンブルンと激しく振った。


「わ、どうしたの? ビグウィグ」

「耳を触られたから、くすぐったかったんでしょうね。うさぎは耳の病気のときに頭を振ることもありますが、ビグウィグ君は問題ありません。私が飼ってるうさぎも、耳をマッサージすると頭を振りますよ」

「耳をマッサージできるんですか?」


「できますよ。こんな風に親指と人差し指で優しく揉んであげるんです」


 そう言って、先生は俺の耳を揉んでいった。「耳の付け根はかたくなってるんですが、こうやってクリックリッと」


 あ、気持ちいいな、これ。

 今まで感じたことのない感覚だ。


 一通りマッサージした後、先生は手を離した。


 ブルンブルン。ブルンブルン。


「あ、また頭を振った! 先生、私もやってみていいですか?」

「どうぞどうぞ」


 今度は絵留が、先生の真似をして耳をマッサージしていく。そして手を離す。


 ブルンブルン。


「あ、面白い!」


 面白くねえよ!

 気持ちいいけど、耳を触られることなんてほとんどないから、違和感があるんだよ。

 それだけウサギの耳というのは、デリケートな部分なんだぞ。



 耳に続いて、目、鼻とチェックしていく。

 特に異常はないようだ。


「次は口の中を見てみますね」


 そう言って、先生は俺の口に何やら器具を突っ込んだ。

 それを覗き込みながら、


「うん、歯の伸びすぎもないですね」

「そうですか、よかったあ」


 ウサギの歯が伸びすぎていないかは、飼い主が気をつけておかねばならないことだ。

 なぜなら、ウサギの歯は一生伸び続けるからだ。


 伸び続けるにもかかわらず一定の長さを保っているのは、草をよく噛んで食べることで上下の歯をこすり合わせ、削っているからだ。

 しかし、かみ合わせが悪いと削ることができず、歯が伸びすぎてしまう。

 すると、うまく食べることができなくなる。

 そうなると、病院で切ってもらわねばならない。


 歯の伸びすぎを予防するには、牧草を食べるのが効果があると言われており、それがウサギの餌に牧草が推奨される理由の一つだ。



 その後も健康診断が進められていった。

 聴診器を当てられたり、腹をさわられたりしていく。


 もちろん俺は俎板(まないた)の鯉のごとく、されるがままだ。抵抗してもいい事は何もない。

 いや、抵抗する気にならない、と言ったほうがいいな。

 先生はさすがに医者というだけのことはあり、この人に任せておけば大丈夫、と思える安心感がある。


「血液検査はどうされますか?」


 先生が聞いてきた。

 必要ねえよ。こんなに元気なんだから。

 注射なんて冗談じゃない。俺は痛いのは嫌いなのだ。


「ぜひ、お願いします」


 絵留は即答した。

 うん、予想通りだ。こいつはそんな奴だ。


 先生は棚から注射器を取り出した。


「耳から採血をしますので、動かないように保定しておいてください」

「はい」


 おい、なんでそんなところから採血するんだ!

 耳が特に敏感な場所なのは知ってるだろ!


 俺の心の声は聞き入れられることはなく(当たり前だ)、また全身にタオルをかけられ、絵留にがっちりと押さえ込まれた。


 先生の手が、俺の耳に触れた。


「ちょっとチクッとするよ」


 わかったよ、もう。とっとと済ませてくれ。


 ………………。

 …………。

 ……。


 まだか。待ってる時間がつらいんだが。


「はい、よく頑張ったね」


 え? 終わったの? チクッともしなかったんだけど。


 先生が注射器を持っているのが目に入った。中には確かに赤い血が入っている。

 気付かない間に注射針を刺され、血を取られていたようだ。

 痛みを感じなかったのは、この先生が上手かったからだろうか。

 それとも俺が鈍いからだろうか。


「よしよし、偉かったぞビグウィグ」


 突然、絵留の顔が目の前に現れた。

 悔しいが、こいつの顔を見るとホッとする。


「それでは、これで検査は終わりです。どこも異常はありません。血液検査は、結果が出るまでしばらく待っていてくださいね」

「はい、ありがとうございました」

「ビグウィグ君は本当に賢い子ですよ。自分が何をされているか、ちゃんと理解していますね」


 そりゃあ、中身は人間だからな。




 血液検査の結果も、異常はなかった。

 俺たちは再びタクシーでマンションに帰った。


 部屋に戻り、キャリーから出された俺は、すぐにケージに飛び込んだ。

 懐かしの我が家だ。


 ああ、やっぱりここは落ち着くな。

 今日は疲れた。もう寝よう。

 足を投げ出し、ゴロンと横になる。


 ……が、数分後、俺は慌てて跳び起きた。


「今日はよく頑張ったね、ご褒美だよ」


 絵留がニンジンの葉をくれたのだ!


 ごしゃもしゃぼしゃもしゃ。


「相変わらず、すごい食べっぷりだなあ。目がイッちゃってるよ」


 うん、ご褒美にこれを食わせてもらえるなら、毎日病院に行ってもいいな。

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