羊皮紙の山
「はぁあ〜……。」
テーブルの上の三つの羊皮紙の山を見ながら、レーベンは思った。
テーブルの上には、山のように積み上げられた羊皮紙が置かれ、その一枚一枚に冒険者ギルドのメンバーの戸籍情報が書かれている。
一番左の山であるこの戸籍情報は、ギルドメンバーの登録の申請用紙だ。
ギルドメンバーに登録すれば、冒険用に支給される一時的な給付金と、ダガーやバックラーといった基本的な装備品の給付が受けられるので、この登録は冒険者の死活問題だ。
真ん中の山には、引退した冒険者の年金申請書類がうずたかく積まれている。
彼らは冒険をリタイアしたので、今まで冒険に際して支払ってきた租税から、給付を受ける立場にある。
これも引退した冒険者にとっては死活問題だ。
一番右の山は、まだ整理されていない羊皮紙の束だ。
冒険者メンバーに子どもができたというので、産前産後休暇をギルドに申請するという書類やら、ダンジョン内の廃棄物を処理して欲しいという苦情やら、それまでのダンジョンのマップにはなかった隠し部屋の探索情報の発見に伴うダンジョンマップの情報改訂案件やら、未整理の書類が乗っている。
それら三つの山を見て、レーベンが思わずため息を吐かざるを得ないのも、無理はない。どう考えても、今日一日で終わる仕事ではないからだ。
「どう考えても、この仕事量に対して、人が少なすぎるわ……。」
「あら、どんだけ羊皮紙の山を抱えてんの。ジョブチェンジの書類は、もう終わったよ。」
仕事の早いエティナは、魔法でデータを分類して仕分け終えたらしく、3時間も経たないうちに自分の書類の山を終えていた。
「手伝う。」
エティナは一番右の整理されていない山を自分のデスクに持っていこうとしたので、そのときにレーベンは訊いた。
「エティナ、いったいどういう魔法を使えば、この書類の山を片付けられるんだい? 今まで攻撃魔法しか能力値を振って来なかったから、どう片付けたらいいのかわかんないよ。」
「技術とか、探索系の能力に振らないせい。場所知識の習得とか、帰還の魔法ポータルとか、ダンジョン間の移動テレポートとかを、ある程度応用すれば、これぐらいの書類の整理は朝飯前。」
「ポータルぐらいは覚えてるさ。冒険者はみんな習得するからね。」
レーベンは少し反論したが、その後に愚痴った。
「でも、この書類の量に対して、ギルドの職員の人数が僕を含めて三人っていうのは、いくらなんでも人数が少なすぎるんじゃないかい?」
「それは確かにそうかも。でも、ギルドの職員なんて冒険者に比べると魅力がないって人は多いから。安定志向の人にはけっこう美味しい仕事なんだけど。国から給料が出るし。ギルド職員をやりたがる人はなかなかいないから。」
「はいよー」と声がして、そこに三人目のギルド職員、フアンが入ってきた。
フアンの手には、またしても書類の山があった。
「やっぱり、人手が全然足りてないよ、この仕事……。」
レーベンは独りごちた。
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