<異世界の外交団>
日本の南西にあるサマール王国のカールは日本との会談ため三日月島へと向かっていた。島の出張所から新天地とされていた土地には国家があり、そこの外交官が様々な国と国交を開設することを希望していると聞いた時は驚いたものだ。あれだけ陸地の燃え盛る場所に人間がいて国を作っているなんて誰が考えただろう。しかし、どんな生物だって環境に適応して生きていくものだ、いたとしてもおかしくはないのだろう。
「フフッ」
カールはわずかに笑い声を漏らす。少なくとも島に滞在し獣人たちが仲介をしている以上、文明を知らない蛮族ではなく、ある程度文明を持った国なのだろう。そうでなければプライドの高い獣人たちが協力をするわけがないのだ。
そもそもサマール王国が日本の要請に応じたのは異界の国という興味があったということ以外何もない。ほかの国にも聞いてみたところ日本という国はほかの国にも島への訪問要請を行なっており、これはそれ以上の航海能力がないことを表している。そのためたとえ国交を開いたとしても、船で王国まで来れない国と国交を結んでも何の意味もないのだ。
「カール様!島が見えてきました!」
カールは船室から甲板に出る。今回の訪問は彼にとって社交場でのちょっとした話にでもなればいいという程度のものでしかなかった。ほかの貴族たちに囲まれ、日本について面白おかしく話す。そんなことを考えながらここに来たのだ。しかし・・・。
「あれは船か!?」
「まるで要塞だ」
最初は島の影か何かかと思っていたが、島へ近づくにつれてその正体がはっきりとしてきた。それはあまりの大きさに最初は島の近くに停泊していると思っていたのだが、実際には島の少し手前で停泊している巨大な灰色の船であった。
「これは・・・なんなのだ」
船がその横を通りすぎるとき、カールはそうつぶやく。明らかに今まで見てきたこの世界のものとは異質な存在に目を丸くする。少なくとも社交場の立ち話で話すような小さな話ではないことに気が付いたカールは身震いをする。
友好、未知の技術、発展。様々な言葉が頭の中を駆け巡る。どうにしろ自分たちの持っていない異界の技術を持っているということは確かなのだ。これを放っておく手はない。
その後、日本の外交官と接触したカールはすぐさま日本の訪問を許可した。そして技術・人材の交流を積極的に望み、外園たち外務省職員を困惑させたという。