<異世界下の日本>
日本国政府は混乱の極みにあった。外国や人工衛星などの通信が途絶し、動かない太陽、空に浮かぶ大地など今までの常識ではありえないことにどう対応していいのかわからなかったのだ。しかし現在の状況からしてここが地球だと考えるのは不可能であり、政府だけでなく民間もここが地球とは異なる世界、異世界だという結論に達していた。
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夜になるとネットやテレビではこの世界についての様々な情報があふれていた。これはそれだけ普通に生活していても地球にいるときとの違いが大きかったということでもある。
特に日本の空の景色は一変した。空に海と陸地がある以外にも、この球体の内側にあるような異世界の中央では大きな光の玉が輝いていたのだ。政府や報道では便宜、時間によって太陽と月の二つの名称で呼んでいるが、この世界の空間中央にある光の玉は一つだけであり昼間は明るく輝いて夜になると月ぐらいの光しか出さない同一のものだ。
また、衛星の使えなくなった日本では異世界の観察に天文台を活用して情報収集に当たっていた。これによりこの異世界では昼と夜が世界共通だということや、夜の月以外で星のように光っているのは火山だということなども明らかになっており、さらなる調査が続けられることになっている。
しかし、いまだに多くの問題が日本には存在している。
食料や資源の輸入が途絶え、早急に対応しなければ国民の餓死や社会インフラの崩壊といった最悪の事態が現実として起こりうる状況となったのだ。
これに対し、政府は全国規模による農地整備と農業への転職による食糧増産計画や捕鯨船による水産資源の確保、近隣の油田調査など異世界に頼らない方法と異世界の国々と接触して輸入を検討するという方法を同時進行で進めていくということを決定した。
その後この混乱は旧日本海に油田が見つかり、輸入と自給自足による食糧確保が安定するまで続くことになる。